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15時の手紙

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ささやかな昨日のできごと。
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#料理

家事分担を決め事にせずにいられたら

諍いのきっかけは、家事分担だった。 妻が仕事から帰宅すると空腹を満たそうと、いそいそと夕飯を作り出す。ぼくも手伝うことを促される。 もちろん一緒に料理をすることはやぶさかでない(むしろ一緒に料理をしたいと思っている)。しかし、日によってぼくは空腹でもなく、食事はもう少し後でよいと思っていたりする。 妻は、サーカディアン・リズムに基づき、夕食は18時か19時には摂るのが望ましいと主張する。それが「時間栄養学」に依拠した「健康」の秘訣であると説く。ぼくにはいささか教条主義的

料理を深く味わうには

初めて一人暮らしをするとき、最初に決めた家電は食器洗い機だった。 販売店で食洗機の目当てをつけ、その寸法が収まる台所を条件に賃貸物件を探した。(食洗機は水栓を分岐してホースで繋ぎ、さらに排水する場所も必要なので、必然的に流し台のまわりに設置するスペースを確保しなければならない) これは、自分の中では「完全に自炊をする」という決意表明のようなものだった。 料理をつくるところまでは意欲的に向き合えても、片付けをする気力は残されていないことを避けるため(もしくは片づけが億劫になる

雨上りの、とても静かな食堂で

金曜日、雨上りの夕暮れに妻と散歩に出た。 帰り道に公園に併設されたビストロに立ち寄り、テラス席でコースメニューをとる。気取ったお店でもなく、近隣の年配夫婦や、仕事帰りに読書に興じる女性などが、灯りを落としたまばらな座席で思い思いの時間を過ごしている。 一皿ごとに自然素材と香草とエディブルフラワーを活かしたメニューが続き、ゆっくり話しながら食べるうちにお腹も満たされた。 一皿あたりの分量としては多くないのに、ていねいに手を入れた料理を、たっぷり時間をかけて味わうことで満足感は