最期の過ごし方を多面的・反復して考えるACP
前回ANPとDNARの違いについて紹介しました。
DNARは心肺停止時に蘇生術をするか否かで、ACPは療養生活における全体的な方向性を話し合うことと紹介しました。
本記事では、ACPの前提や重要な要素などを解説いたします。
【前提】意思決定=医療の選択ではない
これから先どのように生きたいかをともに考えるプロセスです。使える福祉制度や補助制度、医療面では麻薬による疼痛管理、輸血など、本人や介護・医療サービスを施す全員を巻き込み話し合うことが重要です。
その時できることを考え、そしてそれを受け止めること。本人にとっては悔いない最期を迎えるための準備であり、家族にとっては死を迎える気持ちの準備であるともいえるでしょう。
【前提】繰り返し話し合う
本人の状態が変化した時にあわせ、繰り返し話し合うことが重要です。例えば、家族と疎遠だった患者さん。ある程度元気なうちは「死ぬときは一人でここでいい」と言っていましたが、病気が進行し気持ちも弱ってきた時、家族を大切にしなかったことを後悔しておりました。そしてご本人が最期に家族と話したいとおっしゃったため、連携しているケアマネージャーさんが家族に連絡しお電話で家族と話すことが実現しました。
また本人の意思確認ができなくなった場合は、本人の推定意思を尊重し、家族や複数の専門家で方向を検討します。
【私らの義務】普段から話しやすい環境や関係性の構築
普段から重要な話ができ、自己開示できる関係性を築いたり、意思を確認できる場を設けることも重要です。
【論点となる要素】
「本人の意思」「医学的適応」「本人のQOL」「経済的問題や家族の同意など周辺環境」を中心に話し合うことで、ありたい方向性と再現性はあるのかなどが見出せます。
患者さんや家族がしっかり意思表示しているか確認するためのポイント
患者さんの決断が介護・医療従事者の結論ありきにならず、自らの意思でなければならないと思います。結論を出すときは下記を満たしているか注意する必要があります。
理解:意思決定のために必要な論点を理解している
論理的思考:決定の内容は選択肢の比較や自分自身の価値判断に基づいているか
認識:病気、治療、意思決定を自分自身の問題としてとらえているか
表明:自分の考えや意思を言葉で伝える
ACPとは、その患者さんの状態の時々ではどのように過ごしたいか、必要な医療はなにか、家族との過ごし方などを繰り返し話し合います。
ACPを確認できる関係性や場所の提供も介護・医療従事者の仕事の一つです。
またその選択が患者さんの意思に基づいていることが重要で、それを見分け、ともに療養生活を作っていきます。
最期の過ごし方や体の変化を知っておくことで、本人も家族も死を受け入れることができるでしょう。
あけぼの診療所
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