オクトパストラベラーの良さを語りたい
前回はオクトパストラベラーにドハマりし、裏ボスまでクリアした勢いのままプレイ記録を上げた。
時間が経って語りたいことも増えたので、今回はゲーム全体についての感想を書いていこうと思う。
すごくよくできた「サブクエ」のゲーム
RPGのサブクエストが結構好きで、どのゲームでも基本的に全部こなしながら進めている。
サブクエは大抵好きなタイミングで自主的に始められて順番も自由。やらなくてもいい。手が込んでいるゲームではサブクエのストーリーも凝っていて、その土地に暮らす人々の生活を知れたり意外なドラマがあったりする。世界観補完の役割もあるからだろう。中にはメインストーリーと遜色ないシナリオもある。
オクトパストラベラーはそういう「メインストーリー並みに面白いサブクエ」のそれぞれに主人公を用意し、そこから徹底的に進化させてメインストーリーに昇華したゲームという印象を受けた。
主人公たちは特別な存在ではないし、世界を左右するような使命を帯びているわけでもない。才能や資質に恵まれてはいるが、どこかの街にいてもおかしくない人間だ。そんな彼らは「一人前の商人になるため」「盗みの依頼をやり遂げるため」「家族の復讐を果たすため」といったごく個人的な理由で旅に出る。
最初に選んだ主人公の旅の終着点を見届けるのが一応のゴールだが、8人いるキャラ全員を仲間にしなくてもいいし、どのタイミングで誰のストーリーを進めてもいい。各ストーリーは4章ずつあるが、その気になれば1章に1時間もかからない。過不足のない台詞回しで話がしっかりまとまっている。長々とムービーを見せられることもなくテンポがいい。世界を巻き込んだ物語ではないので(実は裏で世界は巻き込まれているのだがほとんどの人々は知る由もない)、システム上の話だけではなく精神的にも一人の旅人として好きに方針を立てられる。次にどこを目指すのか決め、未完成の地図を眺めながら空白部分のルートを推測し、準備を整えて出発する。それはまさに作中で旅をしているキャラがやっていることそのもので、ロールプレイングの楽しさがしっかり味わえる。
ゲームシステムもそれを支えている。NPCに対しては普通に話しかける以外にも、フィールドコマンドによって情報を探り出す、持ち物を盗む、買い取るなどキャラクターごとに様々な介入ができる。このキャラなら街に着いたらこれをするだろうな、という納得感がある。NPCを探ってみたら「へぇ」と思うような裏の顔があったり、いかにもその職業らしいアイテムを盗めたり、誘惑に乗りやすかったり意外に腕が立ったりする。そのうちに、「そろそろ武器を更新したいから衛兵や傭兵から盗みに行ってみよう」「この人は有益なことを知っていそうだから怒らせるリスクが高くてもいちかばちか詮索しよう」などと考えるようになる。おそらく作中の彼らもこんな思考をしているはずで、キャラへの没入感が自然に高くなる。
個人的にこのフィールドコマンドの利点はもう一つあって、それは戦闘と探索パートが地続きに感じられるようになっていることだ。
キャラクター(ジョブ)ごとにステータスや武器、戦闘スキルが異なり戦闘スタイルに違いが生まれるのはRPGではおなじみである。オクトパストラベラーも例外ではなく、初期から備わっていて付け替えられないベースジョブに加え、ジョブではなくキャラに設定された特技「固有アクション」があり戦闘における個性となっている。その個性が戦闘だけではなく街での探索パートにも発揮されていることで、道中襲ってきた魔物と戦うことも、到着した街の人々と関わることも同じ線上にあるのだと感じられる。
例えば、学者キャラはNPCに対して「探る」というコマンドを使って情報収集を行うことができる。この特技は戦闘になると「予習」という固有アクションに反映され、敵の弱点を一つ開示することができる。人間にも魔物にも同様に観察眼を発揮しているのだと分かる。細かいことではあるが、この地続きの感覚のおかげでフィールド移動やエンカウントバトルが「メイン進行を阻む作業」ではなく旅の一部だと思えるのだ。
こういう主人公でやってみたかった
複数主人公を謳っていながらなんだかんだ特定の一人に主人公っぽい記号が集中しているゲームは往々にしてあるが、オクトパストラベラーは名実共に8人横並びで主人公扱いである。誰もが主人公として成立するように設定やストーリーが作られているので、「主要キャラにはいそうだが主人公では見ない」「他ジャンルの主人公にはいそうだがRPGでは見ない」というようなキャラを主人公にできる。
8人の旅人たちは二次元らしい華と地に足のついた落ち着きを両立させている。これ以上堅実にすると地味になるし、これ以上派手にすると世界観から浮いてしまう絶妙なラインだ。シリーズ初代だからなのか、それぞれの「職業」、デフォルトのジョブの魅力を体現したようなキャラ造形になっていると思う。妙に捻らずストレートに勝負するぞ、という感じだ。
主人公同士の会話は街で時々発生するパーティーチャットのみだが、キャラが立っているためそれぞれの関係や道中のやり取りまでなんとなく想像できる。誰がどのタイミングで仲間に加わったかはプレイヤーによって違うので、自分だけの8人の旅の物語が存在することになる。
風景と音楽
裏ボスを倒すとエンカウントを完全にゼロにするシャットアウトリボンがもらえるが、これを装備して美しいフィールドや音楽を鑑賞しながら歩いているだけでも楽しい。リアルな足音のSEも相まって、吹きつける砂埃や流れる川の水飛沫までイメージできる。
特に音楽は素晴らしく、ストーリーの山場で使用されるキャラのテーマや対ボスの戦闘曲はもちろん、地方ごとのフィールドや街の中で流れる曲、通常戦闘曲まで外れが一つもない。どれも聴いているだけで色々なイメージが想起されるようなストーリー性のある曲だ。前回の記事では好きな曲をあまり絞れなかったので、その中でも特に何度も再生している曲について後で改めて書く。
戦闘がとにかく飽きない
弱点を突いてシールドを削っていくターン/ブレイク中に火力を叩き込むターンの緩急があり、ブレイクの瞬間は爽快で全く飽きが来ない。
オクトパストラベラーの戦闘は歯応えがある方だが、サポートアビリティでエンカウント率を下げればエリア一つを移動する間に戦闘は2回あるかどうかという程度まで抑えられる。要するに、一瞬で終わる雑魚戦を作業的に繰り返して没入感を削ぐタイプのゲームではない。ストーリーで探索することになるダンジョンも短めで、感情の盛り上がりが冷めないうちにボスに辿り着くことができる。
レベル上げの恩恵はちゃんとあり無駄にならないが、戦略を工夫すれば低レベルクリアも可能だ。
戦略も自由度と縛りのバランスが良い。どのキャラにどのバトルジョブを装備させてもいいが、ベースジョブと固有アクションは固定なので個性は失われない。最初に選んだ主人公は外せないので、編成の指針が立てやすい。前回のプレイ記録を書いたのも、対ボスの作戦を考えるのが楽しくて編成をメモするようになったのが発端だ。
前回絞れなかった好きな音楽
神官オフィーリアのテーマ
学者サイラスのテーマ
商人トレサのテーマ
踊子プリムロゼのテーマ
盗賊テリオンのテーマ
クリフランド地方
バトル1
赤き断崖の集落
静寂なる森の里
バトル2
旅路の果てに立ちはだかる者
主人公のテーマ曲は、癒し⇒オフィーリアとアーフェン、落ち着く⇒テリオンとハンイット、美しい⇒サイラスとプリムロゼ、上がる⇒トレサとオルベリク、なイメージである。
プレイ中は意識していなかったが『クリフランド地方』といい『赤き断崖の集落』といいあのあたりの荒涼とした雰囲気の曲がかなり気に入っている。『OCTOPATH TRAVELER Arrange Album – Break & Boost –』というアレンジアルバムも出ているが、個人的に荒くれ者の集まる酒場といった雰囲気の『赤き断崖の集落』のアレンジが一番好きだ。
『バトル1』は初めて流れた途端このゲームの音楽はただごとじゃないと悟った曲なので特に印象に残っている。自分のプレイだとサイラスとテリオンの二人旅で1章エリアを解放していた時期に一番聴いたので、テリオンが敵からSPを奪ってはサイラスに供給していた記憶も蘇る。『バトル2』は耳にした回数で言うと一番多いんじゃないだろうか(裏ボス前のレベル上げ除く)。徐々に高くなっていくヴァイオリンが好きだ。
『静寂なる森の里』はハンイットの出身地と、サイラス4章の舞台ということで最後に訪れたダスクバロウで流れていて、旅が始まったばかりの時に聴いたのと同じ曲だけどまた印象が違うな、と感慨深くなったのを覚えている。
『旅路の果てに立ちはだかる者』に力強さだけではなく少し物悲しさもあるのがこの作品らしいなと思う。トランペットが良すぎて何度でも聴きたくなる。
ボス戦曲へのシームレスな繋ぎはどの主人公でも盛り上がった。タイトルについて言えば、テリオンのボス戦直前の曲が『自由のために』であるのが好きだ。ストーリーを踏まえると腕輪のことではなく、人を信じることに対する恐怖からの精神的な自由を意味するのだと思う。『〇〇のために』はどれも哀愁や悲壮感、厳粛さがそれぞれ混じっている中で、なんとなくトレサの『宝物のために』が一番勇ましい気がする。
原曲のサントラ以外にもアレンジアルバムが複数出ているあたりやっぱり評判良かったんだなと思う。バンドアレンジを聴いていると舞台を現代に移したパラレルも面白そうな気がしてくる。
その後の世界
この世界の大半の人は裏ボスとの戦いがあったことすら知らず、8人はまたそれぞれの人生の続きを生きていくんだろうな…という結末が清々しかった。ラスボスを倒しても主人公の人生は続く。裏ボス戦後に出るメッセージがこの作品を象徴しているなと思う。