【論文レビュー】システマティックレビュー:研修転移に重要な要因とは?
こんばんは。ただいま絶賛課題解決に向けた研修資料を作成中です。
というわけで、プロジェクトを機にKKDで来てしまった実務にもそろそろアカデミック要素を取り入れていきたいなと、研修転移について見ていきます!
参考文献
Grossman, R., & Salas, E. (2011). The transfer of training: What really matters. International Journal of Training and Development, 15(2), 103-120.
研修転移:何が本当に重要なのか
ざっくりまとめ
研修転移とは?:研修によって得られた学習成果が職場でのパフォーマンスに転化し、関連する仕事の成果に変化をもたらすこと(Goldstein & Ford, 2002; Ford & Weissbein,1997)
多くの組織が従業員の研修に投資しているが、職場への転移は研修コストの10%程度との報告(Georgenson, 1982)もある
既存のレビューやメタ分析は、結果の一貫性がなく転移の要因について明確な結論が得られていないため、本論文では実証された要素に焦点を当てることとした
先行要因は、参加者の特性、研修デザイン、職場環境の3つのカテゴリーに分類され、そのうち最も強い影響を及ぼす要因5つ(参加者の認知能力、自己効力感、モチベーション、職場の支援、フォローアップ)が特定された
本結果は、転移の要素を見極めるための基本的なガイドとして役立つ
どんな内容か?
研究デザイン
研修転移に関する先行研究やメタ分析をレビューし、重要な要因を特定した(システマティックレビュー)
Baldwin & Ford(1988)の研修転移モデルに基づき、転移に影響を与える要因を①参加者の特性②研修デザイン③職場環境の3つのカテゴリーに分類して検討した
転移に影響を与える要因として、認知能力、自己効力感、モチベーション、研修の実用性、行動モデリング、エラーマネジメント、実行する機会、移転気候、職場の支援、パフォーマンス機会、フォローアップなどが検討された
その中で、最も強い影響を与える要因として以下の5つが特定された
認知能力(Cognitive Ability):Colquitt et al. (2000) のメタ分析では、認知能力と研修転移の間に強い正の相関が報告された。修正相関係数は0.43であり、認知能力が研修転移の重要な要因であることを示された
自己効力感(Self-Efficacy):Bandura (1982) によると、自己効力感は個人の行動を予測し、モチベーションや成果に影響を与える。Colquitt et al. (2000) のメタ分析においても、自己効力感の研修のモチベーションや成果への強い影響が示された
モチベーション(Motivation):Chiaburu & Lindsay (2008) は、転移へのモチベーションが特に強く研修成果に関連していることを示し、転移に重要な役割を果たすことが確認された
職場の支援(Support from the Work Environment):Baldwin & Ford (1988) は、上司のフィードバックや同僚の協力が、研修転移を促進するために重要と指摘した。また、Blume et al. (2010) のメタ分析でも、職場の支援と転移の強い関連を示した
フォローアップ(Follow-Up):Velada et al. (2007) は、研修後のフィードバックが研修転移に有意に影響を与えることを示しており、Salas et al. (2006) もフォローアップの重要性を強調している
考察
今後の研究について、研修転移に影響を与える要因を拡張するのではなく、既に十分な証拠がある要因に対して、より深い調査を行う必要がある
各要因がどの段階(研修前、中、後)で最も重要か明確にする必要がある
学び
研修転移に影響を及ぼす要因が理解できました。実践的な意見としては、5つの要因のうち、個人の認知能力は研修設計では関与しづらいですが、自己効力感、モチベーションあたりは研修終了までの間に、職場の支援、フォローアップは研修後に設計の工夫ができそうだと感じました。