身近な異空間
高速道路は不思議な空間だ。
特に、夜の高速道路は奇妙な浮遊感に包まれている。
周りには沢山の車が走っているのに、人影は無い。
両脇にそびえ立つ壁は日常生活を覆い隠し、背の高いオレンジ色のライトと妖しいラブホテルの看板だけがものすごいスピードで駆け抜けていく。
月明かりを無機質に反射するボンネットの鈍い光を見つめながら、一人ハンドルを握る。
夜の高速道路は、不気味な色彩を帯びている。
その一方で、ぼんやりとしたノスタルジーの香りを漂わせてもいる。
小さな頃、祖父母の家に行った帰り道、運転席の父の後ろ姿。
大学の仲間と、揺られ、眠りながらゲレンデに向かった高速バス。
おっかなびっくりサイドミラーを気にしていた、免許取り立てのあの頃。
夜の高速道路の光は、心の奥底にしまってある思い出の瓶の蓋を、一つずつ開けていく。
夜更けの高速で眠りにつく頃
ハロゲンライトだけ妖しく輝く
この曲の歌詞で一番好きなフレーズだ。