幸せな音が鳴り響く素敵な毎日
新幹線に乗って西に向かっています。
今日は京都、明日は大阪、明後日は名古屋。
帰りは久しぶりに松本に寄って美味しいお酒でも飲んで帰る予定です。
今回の旅は、若い仲間たちのライブツアーを追っかけての旅になります。毎晩毎晩ライブハウスに行って、知っている音、知らない音、たくさんの音を新年早々浴びてくるつもりです。
仕事柄、若いバンドマンたちと関わることが多く、ライブハウスにもちょくちょく顔を出したりします。2009年くらいから始まったそんな生活も10年が過ぎ、知り合いの若いバンドマンも若くないバンドマンになったり、バンドマンじゃなくなったり、サラリーマンになったり経営者になったり、お父さんになったりお母さんになったりしています。
私自身も5歳くらいから楽器を手にしはじめて、クラシックやら吹奏楽やら、ロックやらポップスやらを演奏したり、歌をうたったりしています。
とは言え元々飽きっぽい性格で、口先ばかりが発達し、手には何も身に付かず、芸事を極めるようなこともできず、漫然とただ下手くそなりに音楽を趣味として楽しむというようなポジションにおります。
それでも音楽と共に半世紀生きてきたおかげで、たくさんの素敵な仲間たちに出会うことができました。芸事は何も身に付かずとも、周りの素敵な音楽家や音楽関係者の皆さんのおかげで、たくさんの出会いをいただき、普通に生きていたら経験できないような素敵な瞬間に立ち合わせていただき、楽しい思い出を作らせていただきました。
今回の旅はそんな半世紀の人生の中でもちょっとだけ嬉しい旅になりそうです。
初心者の頃から彼らの音を聴いていた「南無阿部陀仏(なむあべだぶつ)」くんたち(20歳)がメジャービューを決め、その後輩の中学生の頃から交流のあった「板歯目(ばんしもく)」ちゃん(18歳)たちも音楽の厳しい世界へと漕ぎ出しました。
そんな彼らが様々な関係者の皆さんのご尽力もあって、一緒に見知らぬ土地へと小さなツアーを回ることになりました。
京都、大阪、名古屋、と3日間で回るまるで売れっ子バンドのような怒涛のスケジュールですが、ついこの間まで学校の小さな視聴覚室で汗をかきながら高校生同士でライブをしていた若者たちが、知り合いが誰もいないライブハウスでライブをするんですから、これはもう私の中では嬉しい悲鳴をあげる大事件なんです。
先輩後輩が手を繋いで(あ、比喩的な意味です)、そして何よりも嬉しいのは芸の世界でバチバチのライバルとして戦いながら音楽を奏でていく。音楽と共に歩んできた結果、こんな幸せな光景が見られるなんて夢のような話です。
音楽は人を繋ぎます。そして一人ひとりの思い出を繋いでいきます。瞬間的な轟音が後日の耳鳴りとなって、私たちの耳の中で思い出として反芻されていきます。
あと何年こんな幸せな世界に身を置けるかわかりませんが、時間とお金がある限りは、今まで出会ってきた若い仲間たちや元若い仲間たちの「音」のそばに身を置いてたくさんの思い出をいただいちゃおうかな、と思っています。
新幹線が名古屋を通過しました。
今夜は京都でライブを見ます。旅行でしか行ったことのないあの街で、彼らはどんな音を響かせてくれるのか。
私にはお金も無いし、子どももいないし、中身も空っぽな人間ですが、彼らのかき鳴らす音が耳の中にあります。そして彼らと作ってきた人の輪があります。
それだけが私の財産です。
銀行の通帳には一切記載されない財産ですが、それでも退屈な人生を輝きのあるものにしてくれる貴重な財産。
「親はなくても子は育つ」と言いますが、「音がなけりゃ人生は無い(No Life,No Music)」もまた人生の真実です。私とは無関係のところで若い彼らはどんどん成長していきますが、彼らの奏でる音楽が無ければ、私の人生は灰色です。
今夜も、そして2022年も素晴らしき音と人に出会えますように。
そう願いながら新幹線に乗って西に向かいます。
間もなく京都に着きます。最後まで読んでくださりありがとうございます。