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続けることは難しいっ!

 祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。(平家物語)

 続けることは難しいよね、って周りに聞けば、多くの人が同意してくれると思う。思いつくのは簡単だけど、始めるのは簡単だけど、それを続けることってのは本当に難しいね。これは老若男女関係なしに、多くの人が感じること。
 
 時節柄、自宅にいましょう!なんて言葉があちこちで言われてますが、これだって言われ始めてからはや2ヶ月、もう既に続けることが難しくなって、気付いたら人が外へと出はじめている。生活やら仕事やら経済やらのことを考えると、外へ出ざるを得ない人がいるのは当たり前なんだけど、それとは別の次元でここ数日明らかに外にいる人が増えている。少し前のはやり言葉は「Stay at home」だったけど、今の気分は「出口戦略」。本当にもう飽きっぽい(笑)。まあ、仕方がないか。

 そもそも、この国の文化は常に飽きっぽさと抱き合わせで作られている。「無常観」なんていう我が国で最もメジャーな精神性だって「常に変わり続けるんよ、いろいろとね」なんて感じの思想だし、神様の坐す神宮だって「遷宮」なんてのを繰り返して常に移動している。街並みだって家だってすぐに作り変えちゃうのが日本という国。だから、この国の精神性と「飽きる」っていう感覚は切っても切れないものになっている。日本人が勤勉で、真面目で、コツコツ、なんてのは昭和だけの泡沫の神話。面従腹背、万物流転、そっちの方がはるかに長く私たちが馴染んできた思想なのかもしれないね。あ、面従腹背は関係ないか(笑)。

 喜怒哀楽なんて言葉があるけど、私たちはある1つの感情を持続させるのも苦手。だって1つの感情を持続させることにも飽きちゃうから。特に、怒りやら哀しみ(悲しみ)なんてマイナスの感情を持続させるのが特に苦手。マイナスの感情というは、ずっと持ち続けると生きるのがちょっと辛くなっちゃうから、持ち続けるのはとても難しいことで、そのためには修行が必要。だから、ずっと怒り続けている人をみたりすると困惑しちゃって「いつまで怒ってるの?」と、相手が怒っている理由も探らずに「怒っていること」自体を批判したりする場面も頻発。個人、職場、サークル、世界、色々な関係性の中でよく見かける光景ですね。わが国の人々は怒っている人がとても苦手。政治の世界でも、しょっちゅう国民の怒りが爆発するけど、すぐにおさまっちゃう。だって「怒り」を持続させるのはとても難しいからね。

 ここ数日も、日本人は「色々なこと」に怒っているみたい。そういえば東日本大震災の時だって、戦争に負けた後だって、日本人は歴史の中で何度も怒ってきた。でも、悲しいことに、全部それを忘れてリスケジュールにリビルドを繰り返しちゃう。何しろ「水に流す」の文化の国だから、何かあってもすぐに「水に流す」し「禊(みそぎ)を済ませる」し、無かったことにしちゃう。水だけは豊富にあるからいくらでも流せちゃうもん。

 でも、それでいいのか、と問うておきますよ。
 じぶんで招いた災いならば仕方がない、自分で引き受ける。でも、じぶん以外の誰かによって、じぶんの生活が、じぶんの周囲が、じぶんの尊厳が傷つけられた時にもヘラヘラ笑っていていいのかしらと思う、本当に。正当に怒ること、そしてその怒りを持続させること。怒りの原因が消えるまでずっと怒り続けること。それはとても大事なことのはず。

 怒っていると色々な人がなだめにきてくれる。あるいはもっと多くの人が怒っていること自体を批判しにやってくる。そしてもっともっと多くの人が怒っていることを嘲笑しはじめる。誰かが怒っていることにその人たちは耐えられないんだ、きっと。じぶんが持ち得ない感情を他人がもっていると、人はとても不安になるものだから。

 ここで言う「怒る」とはキレることでも、怒鳴ることでも、じぶんの主張を無理くり通すことでもない。ただ淡々とじぶんが信じて行動してきたことを、壊されたり邪魔されたり嘲笑されたりしたときに行うアタリマエの主張のこと。実際にはむずかしいんだけど、要は「ならぬものはならぬ」ってやつだね(笑)。

 2020年に入って、私たちは見えない何かと直面させられ、ようやくじぶん達をとりまく様々な環境に対して、目を向け、ジッと耳を澄ませるようになってきた。その状況の中で何か「おかしい」と思うこと「なんか違うんじゃないの」と思うものに、今まで以上にたくさん気づきはじめたのかもしれない。だったら次はそれに対してきちんと「怒る」ことが大事なのかもしれないね。怒り方は各自のアレンジでいいと思います。ただ大事なのは、とにかくその怒りの元が解消されるまで怒り続けること。身の回りが快適な状態に戻るまで、怒り続けること。これが今いちばん大事なことのような気がしています。

 あ、怒る相手を間違えたらダメね。怒る相手はきちんと見極めて。
 まずは「飽きる」ことなく感情の持続を。その日がくるまで。ねっ。

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