血の繋がらない家族の物語
昨日、部活の「合宿」から帰ってきました。場所は長野県の北志賀、冬にはスキーで賑わうホテルを舞台に3泊4日、高校生と一緒にバンド漬けの日々を過ごしてきました。
私自身は音楽に関しては人に教えるような知識も技術もなく何もできない人間ですが、幸いにもながーく現場にいるおかげで、気づいたら若い音楽家たちを技術的・精神的にサポートしてくれる素敵な仲間に出会うことができました。ですのでその仲間の力をフル活用させていただいて、何とか若者たちと一緒に楽しい時間を過ごすことができました。
目に見えない侵略者に怯える日々も気づいたら2年をこえました。バンドなんていうのも大きな声を密室で出す世界ですから、そりゃまあおっかなびっくりで、侵略者の目につかないようにひっそりこっそりと隠れるように音を出し歌を歌ってきたのが実情です。
そんな社会状況の中で、2019年以来、3年ぶりに軽音楽部の合宿に行ってきました。
準備の段階から例年には無い苦労がありました。昨年末に日程を押さえてからの数ヶ月。第○波なんてのが来るたびにキャンセルするかどうか悩み、仲間内から陽性者が出るたびに大人数で旅をすることに不安を感じる、そんな日々を数ヶ月過ごしてきました。
私と仲間たちがやろうとしていることはすごくシンプルで、ただ単に、集中的にバンドの練習がしたい!(理由:もっと上手くなりたいので)、、、というだけのことなんです。そんなシンプルなことをやるだけなのに、世間の目、上司の目、同僚の目、家族の目、親戚の目、友人の目、、、、などを見ながら「どうしようなかなあ」と悩まなくてはならない。
本当に、まあ私たちは何と闘っているのかしら?という話なんですね。
若者たちは、私たち元若者たちの時代に比べてとても身体も心も忙しいようです。日々SNSをチェックし、学校に行きバイトに行き、ディズニーランドにも行かなきゃいけないし、カラオケで歌も上手に歌わなきゃいけない。スマホのゲームで友人と対戦しなきゃいけないし、有名なYouTuberの動画も見なくてはいけない。そしてそのスマホを使って学習コンテンツの動画も見なくてはならない。
とにかくまあ、楽器を持ってじっくりゆっくりとそれを練習してカッコいい音楽を鳴らす!なんて時間はないんですよね。
それでもやっぱりバンドは楽しいし、楽器を持つこと、歌をうたうことはとても楽しいことなんです。でも様々な音楽以外の繋がりに絡めとられた若者たちは、その繋がりを断ち切る術を知らない。
だからこその「合宿」なんです。私のような人間が傍若無人に音楽を集中して楽しめる場を用意して、色々な方を説得して意志のある若者たちを山の中へと連れ去る!。そこに私は価値を見出し、様々な面倒臭い準備の辛さにも耐えることができるわけです。
何年も何回も合宿に行っていますが、場所が違うこともあるし、参加人数の規模が違うこともあるし、もちろん参加者は毎回違います。
それでもいつも同じことは、高校生たちは「必ず」その合宿中に、喧嘩をしたり、泣いたり、体調を崩したり、大笑いしたり、必死で練習したり、最高の曲を創り出したりします。10年前の高校生も今の高校生もそこは変わらないのです。で、帰ってきた日の夜には自宅の1人の部屋で、布団の中で、合宿の時の喧騒を思い出しながら寂しい気分を抱えるのです。
たった3泊4日の音楽の合宿ですが、おそらく、この感染症の時代の1年分くらいの感情の動きを経験するはずなんです。クリエイティブな作品の完成を目指して、人間関係を調整しつつ技術の向上を目指します。そして激しく喜怒哀楽の感情を動かしていく。
要は知らず知らずのうちに短期間でとんでもなく「成長していく=大人に近づいていく」期間になるはずなんですね。
特殊なコミュニティの中で、喧嘩したり手を繋いだり、好きなやつがいたり嫌いなやつがいたり。そしてそこから逃げることはちょっと難しい。ちょっと想像力があれば過去に同じ場所にいた人がいることに気づき、未来にもじぶんの後に続く人がいるかもしれないことに思いを巡らせることもある。
これって軽音楽部の合宿の話なんですが、よく考えたらまるで「家族」の話と同じなんです。私たちは血は繋がっていませんが、お互いに巡り合って出会い、同じ場所を共有して、泣いたり笑ったり喧嘩したりしながらたくさんの(良い・辛い)思い出を作って記憶を積み重ねていきます。私はきょうだいがいないのでよくわからないのですが、友人たちに話を聞くと、きょうだいの中でも、仲の良い人/悪い人がいるようですし、別に家族だからってみんな仲良し!なんてことを強制する必要もない。離婚することだってあるけれど、離婚後も繋がっている家族もいます。同じように退部した部員だって音楽を続けていて別の現場で会うこともあります。
ですので、合宿は規模の大きい家族旅行なんです。ここ数年は旅行をしてなかったので、何となく私たちの家族は、狭い家の中で閉塞感をおぼえていました。
家の中に閉じ込められた家族はついつい喧嘩が増えてしまいます。ですのでお父さんは気分を変えるために頑張って旅行を計画しました。それなのに子どもたちの中には、行きたくない〜とかいう子もいたりして(笑)ちょっと寂しい気持ちになっていました。
でも結局、みんなで出かけた家族旅行はたぶん大成功。今は家を出て別の場所で暮らしているお兄ちゃんやお姉ちゃんまで遊びにきて、お兄ちゃんは孫まで連れてきました。家族みんなで来てよかったね、と帰りの車の中で話をするんです。
そんな物語の連鎖。血が繋がっている/繋がっていない、なんて関係ないんです。私たちは家族旅行を通じて最高の家族になりました。家族なんてのは当たり前のように「そこにある」ものではなく、物語を共有する中で大切に物語を育てて「(家族に)なっていく」ものなんです、きっと。
一度出会った人とは「記憶」というものがあるかぎり、たとえ二度と会わなくても記憶の中で繋がり続けていくのです。
昨日までの4日間の「記憶」が今日からの私たちの日常を支えてくれるはずです。そしてこの先も私たち家族の記憶は、さらに素晴らしきものへとアップデートされていくはずです。そして私たちの家族一人ひとりが、近い将来、新しい家族を作り、私たちの家族の輪をより大きなものへと広げてくれるような気がします。
そんな緩やかな感じで、私たち血の繋がらない家族は、記憶の中で繋がっていければいいんじゃないかな、と思います。
少し前に家を出ていった兄はこんな歌を残して出ていきました。
この先もお互いの物語を繋げていきましょうね。
今日からいよいよ夏のコンテストシーズンがスタートします。みんな頑張ってほしいですね。
そして私は、、、来年の合宿の準備を始めなきゃね。
最後に、、、
ここ数年にわたってキャンセル続出の合宿を笑顔で支えてくださった
UNIXトラベルの皆さん
竜王パークホテルの皆さん
本当にお世話になりました!
そしてそして何よりも合宿を手伝ってくださったたくさんの皆さん。
めちゃくちゃ素晴らしき音楽家の、ヨッシーさん、レイさん。
久々に実家に遊びに来てくれたリューちゃん、パートナーのサキさん、可愛いヒヨリちゃん。
実家を出て少し成長した、きむさん、ジョーくん、ダイキくん、りんちゃん、たまちゃん、ただのちゃん。
そして私の頼れる同僚として合宿をサポートしてくれたセキグチ先生。
皆さんのおかげで最高の家族旅行ができました。本当にありがとうございました!
これからも繋がっていきましょうね!!
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