20年目の覚悟
人は、誰かから信頼され期待されれば、その期待に応えようと人一倍努力し、結果的に大きく才能を開花させることになる。教育心理学の世界で「ピグマリオン効果」と言われる現象だ。
例えば、プロ野球の世界でも、試合を締めくくるクローザーと呼ばれるポジションの投手が怪我をして、中継ぎのポジションにいた投手がクローザーに抜擢されると、監督やチームの期待に見事に応える活躍をすることがある。ピグマリオン効果によって才能が開花したわけだ。
ただし、期待されることは嬉しい反面、大変煩わしいことでもある。過度なプレッシャーを感じるが故に「いえいえ、ボクはそんな大したものではないので、どうか過度な期待はしないで」と自らその環境から逃げ出そうとする人もいる。結構多いような気がする。
「成長はしたい、才能は開花させたい、でもプレッシャーは嫌い、だからあっち向いてて、あっ、でも期待はして。たまにはコッチみて。よろしく!」そんな感じが一番快適かもしれない。ボクだってそれがいい。でも、学校ならいざ知らず実社会においてそんな環境はなかなかない。
就職や転職に限らず人生の転機においては、自分に対する期待が最も大きい環境を選択し、腹を括ってそういった環境に身を置くというのも一つの考え方かもしれない。人間、いつまでも期待されアテにされるとは限らないわけだから、期待されるうちが花。そんなチャンスを逃さないことが飛躍を遂げるイチバンの秘訣なのかもしれない。後進の存在もあるし、体力的年齢的なものもある。繰り返しになるが、いつまでも期待されるとは限らないのだ。
とまあ、期待される方について書くのであればそんな感じだろうが、今回は自戒を込めて「期待する方」について。
2001年にいまの会社を設立し、9月からは20年目を迎えることになる。実は、10年以上も前から50歳で社長を辞めると社内外で公言しているのだが、53歳でそれが叶わずにいる。去年の19期全社キックオフミーティングでも「あと2年で辞める」と発表したが、また言ってるよみたいな感じで、もはやざわつきもしない。狼少年ならぬ狼社長と言ったところか。狼少年って最後どうなるんだっけ?
なぜ50歳で辞めたいのか?はさて置き、なぜ宣言どおり50歳で辞めることができなかったのか。この10年、リーマンショックや東日本大震災など予期せぬことが多かったし今年はコロナショック。辞められなかった原因はいくらでも外に求めることはできる。言い訳には事欠かない。しかし、1番大きな理由は「やはり自分でないと無理だ」と思い込んでしまっていたからなんだと思う。すべては自分自身の問題なのだ。
自分がそう思い込んでいるもんだから、社内でピグマリオン効果は生じない。口先で言うほど、実際の行動は役員やマネージャーのことを信頼していないわけだ。任すと言いながらあれはどうなった?もっとこうしないとアカンやん。心当たりはたくさんある。そうなると、ゴーレム効果といって、期待されないと期待されないなりにしか成長出来ないようになり、どこかで成長は頭打ちになってしまうと言う現象が起こるのだそうだ。
後進が育たないのではなく、後進を育てられていないだけ。いや、実際に頼もしい社員は育っているわけだから、最後の仕上げに、覚悟決めて信頼して舵取りを任すだけ。それが出来ないのであれば所詮三流経営者でしかない。
9月からスタートする20期目はそれを胸に刻んで取り組んでいこうと思う。会社設立後、10年後の生存率は6%、20年後は0.3%、30年後は0.02%だそうだが、未来永劫世の中に必要とされる会社へと導いていくのはもはや自分の役目でなはい。そんな潔い覚悟と責任感を持って20年目を迎えようと思う。(おしまい)