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キシンへサイカ ー外伝ー

「染水華来の少年期」


「タッタッタッタッタ!!!」
カク「姉ちゃん!ばあちゃんが飯できたってー!」
姉「はーい!今行く!」
「コンコン」
カク「入るぞー」
「スゥーー」
カク「まだ修行してんのかよ姉ちゃん」
姉「まあね、322、323…」
カク「剣術なんかやったて鎌(かま)にはいきてこないだろ?なんでそんな木刀ばっか振ってんだよ」
カク姉「かもね、でもこうしてるのが一番落ち着くの」
カク姉「お父さんに唯一教わったことだから…あんたも、サボってばっかいないで鎌術稽古(れんじゅつけいこ)くらいしなさいよー?」
カク「俺はいいよ、父ちゃんに稽古つけてもらえなかったし」
カク姉「そうね・・・」
カク姉「そうだ!そろそろアヤカちゃん来る時間でしょ?あんたは早くご飯食べて支度しなさいよー!」
カク「あーーい」

この染水華来(そめみずかく)という少年は彩華の国、東に位置する水華区の名家染水家の跡取りだ
その昔に彼の先祖は鬼との戦争で睡鎌術を駆使し、六華戦進の一人として数えられていた。
現在は道場を営む姉と暮らしている

アヤカ「こんにちはーカクちゃんいますかーー?」
カク姉「はーーーい!ちょっと待っててねー!」
カク姉「ほら!カク!アヤカちゃん来たよ!急ぐ急ぐ!」
「カッカッカッカっ」
カク「ごちそーさま!」
カク姉「今日もお熱いわねぇ〜どこ行くの??」
カク「うっせ、別にどこってわけでもねぇよ」
カク姉「ふーーん、遅くならないようにねーちゃんとアヤカちゃん送ってくるのよー!」
カク「わあってるよー!いってきまーす!」
「ガラガラ」
カク「よう!アヤカ。待たせたな」
アヤカ「カクちゃん!全然待ってないよ〜今日晴れて良かったね!」
カク「だな!今日はよく見えそうだ!」
アヤカ「いこっ!」
カク「おう!」


〜近くの海にて・・・

アヤカ「きれ〜い…!!」
カク「だなぁ〜!」
アヤカ「この景色が今見れるのもカクちゃんのおかげだもんね。。。」

一年前・・・〜

カク「あーあー今日も姉ちゃんは稽古ばっかだよ…あんな道場守ってどうするつもりなんだろうなぁ」
???「ここか、海蛍が取れるって場所は」
???「はい」
???「すごい量だな・・・よし、袋に詰めろ…全て持ち帰るぞ」
「ガサガサ」「ガサガサ」
アヤカ「…や、やめてください…」
消え入りそうな声でアカネは言った
商人「ん?なにかなお嬢ちゃん、ここはおじさん達の仕事場だから向こうで遊ぼうね」
カク(あいつなにやってんだ、あぶねぇだろ…)
アヤカ「ここの海蛍は自然のものです…!かわいそうなことしないであげてください…!」
手下「こいつ松高のところの娘ですよ、例の華力持ってるって噂の・・・」
商人「あぁ君があの祈力で有名な松高の娘さんか〜!(海蛍なんかよりよっぽど金になりそうな商品がやってきてくれた…!)名前は?」
「スタサァ!!」海岸にいたカクは砂浜へと飛び移る
カク「そんな奴らに名乗る必要ねーぞ」
アヤカ「・・・あなたは?」
カク「これが終わったら名乗ってやるよ」
商人「貴様ぁ!染水のガキだなー!?毎回毎回商売の邪魔しよって!この落ちこぼれ家系のお末裔が!」
カク「そっちが勝手に俺の目の前に現れるからだろーが」
商人「チッ…ただ今日は一味違うぞ!おい!低凱!」
すると海の方から何かが泳いでくる
アヤカ「鬼…!?しかも大きい…4mいや、5mくらいありそう・・・」
商人「こいつはなぁ裏の鬼奴隷市場で最も高く取引されていた鬼だぁ…お前に出くわした時見せてやろうと思ってなぁ!潰してしまえ低鬼」
低鬼「グぉあああ!!!」

カク「うぉっと」
巨体鬼の攻撃を「睡蓮」の形をした華力で受け止めるカク
カク「しかたねぇなぁ・・・拓け!睡蓮!」
カクの周辺に無数の青い花びらが舞う
アヤカ「きれい・・・」
すると今度はカクの左肩に翼を宿し、残った花びらが鎖鎌に姿を変える
カクは旋回して空を舞う
カク「頭の位置がちっと高かねぇか…!?」
「水撃‼︎!」(すいげき)
鉛が凄まじい速度で巨大鬼へ向かっていく
鬼は打ちつけられ膝をつく
低鬼「グぉぉぉぅ…」
カク「これで終わりだ!」
再度旋回し巨大鬼へと突っ込む
「水刀!!!」(すいとう)
大きな衝撃と共に巨大鬼は倒れ込んだ・・・
カク「悪かったなバカな人間のせいで、みねうちだ勘弁しろよ」
アヤカ「すごい・・・」

カク「俺、カクってんだ…お前は?」
アヤカ「私はアヤカ…!よろしくね、カクちゃん!」
カク「おい…!ちゃんはやめろよ」
カク「てかあいつらもう逃げたのかよ・・・」
アヤカ「あ!あれ見て…!海蛍!置いて行ってくれたんだね!」
カク「持ってく余裕がなかったんだと思うぞ…」
カク「てか海蛍…それ死んでね・・・?」
アヤカ「大丈夫」
アヤカはおもむろに手を挙げた
すると金木犀の形をした華が現れ海蛍を金色の光が包んで行く
カク「海蛍が…光った・・・」
カク「お前すげぇな!!」
アヤカ「カクちゃんも怪我したらいつでも言ってね…!私が治してあげるから!
カク「おう!」


カク「まあー?あの時、俺がいなかったらアヤカは危なかったよな!」
アヤカ「そうだね…でも私がいなかったら海蛍、もう見れなかったかもよ??」
カク「うっ・・・まあそれはそうだな」
アヤカ「…私あの時カクちゃんと出会えてよかったよ」
カク「ん?」
アヤカ「カクちゃんあれからここの見回りしてくれてるんでしょ?」
カク「ん?えー…いやぁ?どうかな」
アヤカ「ありがとうね私の大事なもの守ってくれて」
カク「ま、まあ姉ちゃんとたまに浜辺で稽古するからついでだよ」
アヤカ「私ここが支えなんだぁ〜」
アヤカ(帰りたくないなぁ)

松高家の屋敷・・・
アヤカ父「今日も祈力が弱まっていたな」
アヤカ「・・・」

国の北東に位置する松高家では「祈力」という人々を癒す祈りの力を持っており、その中でも金木犀という金色に輝く花の力を宿している
その力の高い治癒力で、高官や王族の傷や病を治療することが松高家の家業であった・・・

アヤカ父「また外で勝手に力を使ったのか…?今日は高官から依頼が入っていると言っただろ」
アヤカ「・・・ごめんなさい」
アヤカ父「我々が授かった力は王族の為に使うのだと普段から教えているはずだ」
アヤカ「・・・でも、友達が怪我をしてしまって…」
アヤカ父「ごたくはいい、今はあの方々がこの彩華を支えていることを理解しろ」
アヤカ父「国の役に立てていない者に力は使うな、あの染水の子にもだ」
アヤカ「カクちゃんはそんなんじゃ・・・海で私を守ってくれたし…」
アヤカ父「だからどうだと言うんだ、お前に本当の危害が及ぶ時は付けている護衛が身を守る、その為に王室から護衛部隊を預かっているのだ」
アヤカ「・・・」
アヤカ父「明日も依頼が山積みだ、分かったら早く寝なさい」
アヤカ「はい・・・おやすみなさい」

〜〜〜

カク「大変だろーけどすげぇよ、なんてったってアヤカは国の名前背負ってんだから」
アヤカ「私、好きじゃないんだ…自分の名前」
カク「…え?」
アヤカ「生まれた時からなにをしてどう生きるか決まってるのって凄くつまらないし息苦しいよ…もっと自由な場所が良かった・・・」
カク「でも、俺はアヤカがアヤカで生まれてきてくれてよかったぜ…?」
カク「俺、体だけは丈夫でよ…!でも、物心ついた頃には家族は姉ちゃんとばあちゃんだけだったし、ずっと気がついたら独りのことが多かったんだよ」
カク「でも今は違う、アヤカが優しくて、度胸があって、弱っちいから俺は独りじゃなくなった」
アヤカ「カクちゃん。。。」
カク「お前が不自由ってなら誰より自由な俺を頼れっ!…俺はいつでも自由な俺でここにいてやるから」
アヤカ「ありがとうねカクちゃん。。。私、頑張ってみる…!」
アヤカ「またねカクちゃん」
カク「おう…!また今度な」

カク、アヤカ10歳の夏
これを機に二人は会わなくなったが国の中央に位置する彩葉高校(さいようこうこう)で再開することとなる

〜そして現在

カク「アヤカを…返せ…!」

アヤカは巨大鬼の手の上で眠っている

ケイゴウ「…私は姿を見せた敵には名乗ることにしている
誇れこれから貴様を打ちのめす我が名は景業(ケイゴウ)だ」
カク「知らねえよ!!!」
カク「水刀!!」
「キィィン!!!!」

鋭い衝撃波が響く…
ケイゴウは核の斬撃を自身の手刀でいとも容易く受け止める」
カク「俺の斬撃…素手で受け止めやがった・・・」
ケイゴウ「腐った我が國を再び再興するために礎となってもらう」
カク「再興…?お前らアヤカをどうするつもりだ!…それに、お前らなにもんだ!」
ケイゴウ「まず一つ目の質問だが彼女は繭にとって最も高い養分であり、
言わば最後のピースだ」
カク「…繭?なんだそれ!勝手にアヤカを巻き込むんじゃねぇ!」
ケイゴウ「そして二つ目の質問だが・・・それに答える義理はない…!」

ケイゴウは振りかざした手刀を振り下ろすとスロープを叩き切ってしまう
そのままバラバラになったスロープをカクの頭上へと蹴り上げる

ケイゴウ「…透過」
カク「なんだ!?瓦礫が消えた…?」
ケイゴウ「解」

消えた瓦礫が突然カイの頭上スレスレで現れる

カク「うぉあああああ!!!」

ケイゴウ「では…帰るとしよう」
カク「待て…アヤ…カ・・・」

ケイゴウ「行くぞ高凱」
ケイゴウが巨大鬼に視線をやるとアヤカの姿はない
ケイゴウ「高凱、娘はどうした…?」

白い髪の美しい青年がアヤカを抱えている
謎の生徒「随分と悠長なんだな」
ケイゴウ「貴様は?」
カセイ「百理華世(ビャクリカセイ)だ」
ケイゴウ「そうか…お前が・・・」
ケイゴウ「そいつを寄越せ」
カセイ「悪いが断る」

見ていただき、ありがとうございます!!!今回こだし先生の豆知識はお休みです!ではまた次回をご期待ください!

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