私の存在しない神作品について

「無い神作品より有る駄作」 
そんな言葉を見かけたことは無いでしょうか?

私は、創作活動をしている人がインターネット上でおまじないのように唱えている所を見かけることがあります。

恐らく、創作活動で不安になったときに作品を最後まで完成させる為に自分に言い聞かせる言葉なのだと思います。

この言葉は結構強力で、作品制作時の
「コレを作ることに意味はあるのか」
「こんなクォリティで世に出して良いのか」
「1から作品を作り直したい」
などの作品を完成させる事を第一目標とじた場合の邪念に対抗できます。

ここで、私なりの「無い神作品より有る駄作」を世に生み出すためのちょっとしたコツを書かせてもらいます。私は創作活動で漫画を主に描いているので漫画を作る時の場合です。

1,出来るだけ小さいスケールにする
2,複雑な設定や造語を出来るだけ入れない
3,描けるものしか描かない

それぞれ説明していきますね。

1,出来るだけ小さいスケールにする

簡単に言うと短いお話にする。キャラクター数を3人までにする。長いお話を飽きずに完成させる事はとても困難です。お話を短く、キャラクター数を3人までにすると途端にスケールの小さい描きやすいお話になるのでは無いでしょうか。

2,複雑な設定や造語を出来るだけ入れない 

これは作中で説明するシーンをとにかく減らす為にやります。スケールを小さくする為にはお話自体を簡素に、短くする必要があると先程述べました。設定の説明には工夫が要るので独創的なものは出来るだけ避けましょう。類似作品を借りて設定の説明を最小限にするのはアリです。作中で勇者にしか抜けない剣を出しても誰も説明を求めません。

3,描けるものしか描かない

顔漫画になっても気にせず描き進めましょう。目的は神作品を夢想することでは無く駄作を作ることです。必要なのは背景が白くても気にしない精神です。

似たようなアドバイスを沢山読んで私は何とか1作目を完成させました。

「これで私も作品を完成させる事が出来る人間だ!!」
中学生頃からお話を作ることに憧れていた私は、ある程度まとまった話が完成して夢が叶ったような気持ちでした。

「これで私はどんなお話だって完成させられる!」

どうでしょう、一作品作り上げただけでこれはつけ上がりじゃないでしょうか?

私は早速、中学時代から温めていた設定とキャラクターのお話を今なら描けると思いストーリーの作成から取り掛かりました。

あらすじは普通の中学生の女の子が魔術師の男の子と魔力を共有して悪い魔法使いたちと戦う…みたいな感じです。

登場人物はだいたい10人くらい。全員分の名前を決め、見た目を決め、性格を練り、得意な魔法を決め……

決まらない!!!中学時代から温めていたが決めるのが難しい所は考えていなかったのです。穴だらけの設定を埋める能力は今の私にはありませんでした。

あらすじを細かく詰めて設定を都度足していこうかと思ったのですが、やはり設定が固まっていない状態であらすじも固まりません。

何とか完成させたい!!そう思った私は、先程の完成させる為に気をつけたことと今描こうとしているものを比較して何とか描けないか考えました。

1,出来るだけ小さいスケールにする

描こうとしているもの)
登場人物が10人くらい、全員の思惑が錯綜する複雑なプロット。
読んだ人が救われるような壮大なテーマ。

2,複雑な設定や造語を入れない

描こうとしているもの)
魔術や魔法が複雑に絡み合い戦う、ある種の能力バトルもの。

3,描けるものしか描かない

描こうとしているもの)
派手なアクションシーン多め

……描けるわけが無い。私は完成させる事は出来ても、それは完成させる為に色々な事を省いているからであって描きたいもの全てを詰め込んだお話を描けるようになった訳ではない。
 
気がついた私は、中学時代から温めていた設定での話作りを諦めました。

そして無い神作品がこの世に出ることなく私の中に漂い続けましたとさ。


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