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美容室のKさんに思いを馳せて

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#ヘアースタイル」です。

以前、かきあつめの円さんと「美容院で会話をするか」みたいな話をしたことがある。彼は美容室では会話をしたくない派のようだったが、僕は美容室での会話はめちゃくちゃするほうである。

15年も前の話になるが、当時は大学近くの固定の美容室に通っていた。
当時の僕はヒッピーのような風貌で、背中までロン毛をたらし、ひげ面で学生生活を送っていた。

バイトはしていたがやはり金はそんなにないので、指定大学の学生を格安でカットしてくれる美容室に通っていた。
また美容師が全員気さくなオッサンで、ずっと下ネタで笑いあう居心地のいい空間であった。
その中でもKさんとは仲良くなり、たまに飯をおごってもらう仲であった。

ある日カットしていると「ヨシロウちゃーん、ベッドほしくなーい?」とKさんは言ってきた。聞くと、バツイチの彼に彼女ができたようだったが、その彼女と破局してベッドが余ったので引き取らないかとのこと。
「ラッキー、いいんすか、もらいますー」と二つ返事をし、その晩にKさんのマンション前で待ち合わせることにした。

待っているとそこに真っ黒なヴェルファイアが停まり、「悪い待たせた」とKさんが出てきた。車への積み込みは順調に進んだが、僕のマンションに車で向かう際に、Kさんが前方の車に対し「チッ、遅ぇーな」とクラクションを鳴らした時に「あぁ、これかー」と(Kさんの出身地である)北関東の風を感じていた。

そのベッドは結構長いこと使わせてもらって、たしか奥さんと結婚するまで使用していたと思う。

「このままロン毛を長くするとボリュームが多くなっちゃって、君のパーマも強いから陰毛みたいになっちゃうよ」と、地毛のパーマを直毛にして再度パーマを充てるオシャレパーマを、Kさんには今考えると相当安くやってくれていた。
大学の卒業とともに、Kさんの美容室には行かなくなった。

社会人になり、結婚もし、リモートワークがメインとなった今では、近くのモールに併設している1000円カットを活用している。もちろん、会話などない。

Kさんは、まだ大学近くの美容室で髪を切っているのだろうか。
立ち寄ったのならば、また当時のように気さくに会話をしてくれるのだろうか。

ふと想いをよせてみた

記事:アカ ヨシロウ
編集:otaki
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