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勇者残酷指輪物語
主人公である勇者は中東系の天然パーマの青年
その横に雰囲気がイケているが、振り返ったときに「あぁ」と思うくらいのブスな女エルフが1人
しかもそのエルフはパーティー内恋愛は禁止だと言っているのにオークと付き合う色気狂いであったりする
横のオークに対しては「よくそんなエルフを相手するよ」と誰もが思うが、オークからしたらエルフは全部同じ顔に見えるから別に気にしていない
端っこにいるのは老兵の魔法使いであり、耳も悪ければ、最近では意識が10分と続くことがない
その老人が「触ってほしい」と言うので、勇者はたまに老人の股間をさすっていたりする
冗談にしか思えないのだが、触った直後は機嫌がよくなるのは確かなようだ
勇者は疲れていた
伝説の指輪を探す者に名乗りを上げた当時、勇者は光に溢れていた
今の彼にその面影はない
各所から集まる『勇者』たちの圧倒的な格の違いに潰れた
『勇者』の多くは貴族出身であったり、特異な能力を持ち合わせている者がほとんどある
田舎出身で学も身の振り方も分からない青年は、勇者になる際に国から給付される”餞別”を狙う者たちにとって、恰好の獲物であった
事実、勇者は最初のパーティー結成したその初日にして、持ち金の全てを雇った格闘僧(モンク)にカツアゲされている
それでもその勇者はめげなかった
簡単な怪物退治から小銭を稼ぎ、自身のスキルを身につけながら、仲間を増やしていった
パーティーの信頼関係が出来上がりつつある頃、一番信頼していた仲間が金を持ち逃げする事件が起きた
犯人はその後捕まり勇者の前に突き出されたが、勇者は彼を放免とした
その決断が甘いとして離れるものも多かったが、気にせず旅を続けた
ある日、野営をしていると不意をついて盗賊団が勇者を襲った
盗賊団には勇者が放免した彼がいた
その時に一緒に逃げ切った者が、冒頭の老人である
勇者は3度目のパーティー結成をしたばかりであった
ある日、勇者が目を覚ますとエルフとオークの姿がない
「またか」
勇者は吐き出すようにつぶやいた
エルフとオークが物資を持って逃げたのだ
逃げる予兆を老人に問い詰めるか悩んだが、どうでもよくなった
これまでの経験から、金銭は勇者が肌身離さず持っていた
だが、そもそもエルフを雇うのに無理をしていたので、無一文に近かった
旅に必要な物資を持っていかれたのもキツい
街から離れすぎている まずは戻って仕事を探そう
そう老人と街へ向かって歩いていると 風向きが変わり、あたりが暗くなった
ーーバサッ!
急に眼の前に大きな物体が落ちてきた ドラゴンである
「逃げろ!」と老人が魔法で勇者を後方へ吹き飛ばす刹那、勇者は老人がドラゴンの右足に潰されるのを見た
勇者は物凄い勢いで後方に飛ばされ、背中から木にぶつかり何度も身体を回転させた
朦朧としながらも必死に逃げると、空の方から轟音が聞こえてきて ドンッと地響きがなった
勇者は身を起こしながら顔をあげると 眼の前にドラゴンがいた
だんだんと焦点が合っていく ドラゴンはまっすぐとこちらをみている
一歩どころか、指先も動かせなかった
「俺は死ぬのか」
「まだ何もできていないのに」
「仲間は誰も助けに来ないのか」
「あんなに頑張ったのに、なんで」
「勇者になっていいことなんてなかった」
「勇者になって持ち逃げしかされていないぞ」
「そもそもなんで勇者になろうだなんて思ったのだろうか」
「なんであのとき指輪を探すだなんて言ってしまったのだろうか」
次の瞬間、その小国の勇者の身体は上下に引き裂かれ、ドラゴンは器用にも足で鎧を外すように平らげた
数年後、ドラゴンはたまたま近くを通った勇者によって苦労もなく駆除される
後にその勇者によって伝説の指輪を発見され、世界に平和がもたらされたという
それはまた、別のお話し
記事:アカ ヨシロウ
編集:鈴木乃彩子
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