実話、二十歳の時の地獄の口と光る玉
母親からの虐待で、家出を繰り返すも、家の借り方も知らず生活力も無いワタシは、父親に連れ戻されていました。
今から何十年も昔のワタシが二十歳のころのできごとです。
小学生の頃友達に貝殻を貰ったことがありました。親に捨てるように言われたがその前にワタシに見せにきてくれたのでした。
片手に乗る貝殻の裏には女神様がいました。ベールを被って白いドレープのあるロングドレスを着た美しい女性の姿
「女神様やぁ!」と感嘆の声をあげるワタシに
友達は「そやろ?女神様みたいやんなぁ?でもなお母ちゃんが言うねん。貝殻に出る人の形は、川に身投げして死んだ人の姿や言うねん。だから遠くに捨ててこい言うねん」と二人して貝殻を覗き込みながら語り合っていました。
ワタシは「捨てるの?だったらワタシにちょうだい?綺麗やん、ちょうだいちょうだい?」
そういわれて友達は惜しくなったのか?「え~」
と悩みだします。迷った末、お母ちゃんに捨てるように言われたからとしぶしぶ貝殻をワタシにくれました。
「大丈夫なん?」と心配そうに。
それからワタシは貝殻を大切に机の引き出しにしまって。
毎日貝殻の女神様と心の中でお話していました。
優しい女神様のことを、ワタシの本当のお母さんに違いないと信じるようになりました。
ある時、貝殻の存在が親にバレ。友達に貰った経緯まで話してしまいました。
翌日、缶は空になっていて。
「お母さん貝殻が無い」と大騒ぎしていたら
「あんな気持ち悪いもん捨てたよ!へんなもの貰うな!」と怒られ
ゴミ箱をさがしても貝殻は見つかりませんでした。
貝殻がなくなっても目を閉じれば女神様は、姿を現し。
女神様と会うと、なんとも幸せな空気感に包まれ何があっても癒される、大切な大切な心の支えでした。
父親の定年退職後、手芸の店舗つき住宅を商品ごと買い取り移り住むことになりました。
そこは店舗の上にベランダから増築した二階の離れの洋室がワタシの部屋になりました。
初めての自分の部屋。
その頃二十歳になる前のワタシは
夜のお仕事を黙認されて、自分で金を稼ぎ、ファッションに注ぎ込んでいました。
精神ズタボロながら、生きるために夜の仕事をしました。
働き方もわからない世間知らずの未成年にいろいろ教えてくれ働く場を紹介してくれる男性がいました。
人生勉強になると、その人の話を聞くのが好きでした。
その人に時給800円のウエイトレスから、時給1500円のキャバレーを紹介してもらいました。
なべちゃんは、やくざのオジキでした。
オジキって何?と聞くと、組員ではなく相談役みたいなもんやと。
なべちゃんは、若い時はそうとう男前であろう歌舞伎役者のような、整った顔立ちをしていて、それでいて気取らず楽しい人でした。
ワタシにいろんなことを教えてくれ、稼げるようにしてくれました。
バンドが入るキャバレーは楽しかったのですが客層が悪くて
なべちゃんにそう愚痴ると
「Kは、上品なとこがいいかもしれないな」と
一流クラブを紹介してくれました。
なんと時給4000円で4時間だけでよく日給16000円もらえました。二十歳そこそこが。
そんなころ自分の部屋ができたのです。
昼間うとうとしていると、風が吹き髪の毛が逆立ってたなびきます。
見るとそこは戦国時代で馬が両脇を走り抜け
髪の毛が風圧でたなびいていたのです。
周りには足軽のような格好の死体がたくさん転がっています。
ワタシの身は金縛りにあって動けません。
真っ黒なモヤが近づいたと思ったら、ワタシの上に被さってきて、地の底に沈められて行く感覚、
恐ろしくて声を出そうにも声が出ない。
いよいよ地獄の口に沈められるんだと思った瞬間、バーンと音がして光る玉が飛んできて、魔物のような真っ黒なモヤをはね飛ばしてくれたのです。
もうそこはいつもの自分の部屋でした。
光る玉と目があった瞬間、光る玉は慌てたように天井の電灯にぶつかり、驚いたように窓ガラスに飛んでバーンと大きな音をたててガラスを突き抜けていなくなりました。
天井の揺れる電灯を眺めながら、「女神様や」光る玉は女神様、そう感じていました。
いつも疲れてバタンキューと寝てしまうワタシは
寝床で黒いモヤのことを思い出していました。
と思ったら金縛りにあい動きません。
黒いモヤがやってきます。
「女神様~助けて~」と叫んでいると「自分の力ではね除けなさい!」と優しい女神様の声が聞こえます。
「自分の力ってどうやってこのモヤみたいなものを?」ともがいていると
「念じるのです。あなたならできます!」女神様の声に応えるように
渾身の力で念じるとモヤは書き消されたように、消えました。
それからも懲りないワタシは黒いモヤは現れるのか?実験で「黒いモヤ出てこい」と念じると、ホントに黒いモヤは出てきて、ビビりながら力いっぱい念じると黒いモヤは消えました。
自分ではね除ける。やればできる。座右の銘になりました。
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