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皐月賞予想+世代の概観

藤岡康太騎手の逝去について

この記事を執筆中に訃報が飛び込んできました。先週まで騎乗していて当たり前にいた存在が急にいなくなり、心にぽっかりと穴が開いたような状態です。ジョーカプチーノやナミュールを代表に数多くの名勝負を演じたターフの名優で、日本の競馬界になくてはならない存在でした。
謹んで哀悼の意を表します。

はじめに

先週の桜花賞を皮切りに、今年もクラシック戦線が開幕しました。クラッシック戦は世代の頂点を決める戦いであり、競馬予想の身には、昨年夏から追ってきた2歳戦、明け3歳戦の答え合わせとなります。

世代の概観

今年の世代全体を見渡して特筆すべきこととしては、やはりその父系の多様さです。この数年間で、長らく日本競馬をけん引してきた名種牡馬ディープインパクト&キングカメハメハがこの世を去り、更にはそのキングカメハメハ後継の筆頭であったドゥラメンテまでも去っていきました。マイル以下はロードカナロア産駒が圧倒的な成績を収めているものの、中長距離路線はまさに種牡馬戦国時代の様相を呈しています。ここでは新世代をけん引するであろう、要注目の種牡馬を数頭取り上げつつ、簡単な所感を述べたいと思います。

まずキズナについて。今年は種付け料が上げられて以降の産駒であり、父ディープインパクトにつけていた良質な繁殖牝馬が軒並み流れ込んできたことも相まって良血揃いの産駒になっています。その為成績もかなり優秀で、クラシックまで駒を進めた産駒数は現時点で最多となっています。
現時点での成績は十分リーディングを取れるものではありますが、来年以降は同じくディープ後継のコントレイルと繁殖牝馬を分け合う形になりそうです。

続いてキタサンブラックについて。初年度でイクイノックス、次年度でソールオリエンスと好調そのものでしたが、今年はクラシックまで駒を進める産駒は一頭も現れませんでした。一見して急失速の様に思えるかもしれませんが、これは概ね妥当な結果です。今年のキタサンブラック産駒はキズナと逆で種付け料が低い時の産駒であり、この要因が大きいです。今年度の種付け料は2000万円であるのに対して、今年の産駒は400万円の世代。種牡馬入り初期こそ良質な繫殖牝馬が集まり名馬が産まれるのも納得ですが、人気が落ち着いた今年はいくらキタサンブラックと言えど厳しいと言わざるを得ません。
イクイノックス効果が表れ、良質な繫殖牝馬が揃う再来年のデビュー馬からまた活躍馬が増えてくるとは思うのですが、しばらくするとイクイノックスが同系統の種牡馬としてライバルになるので、苦難は多そうです。種牡馬としての負担を分けることにもなるので、悪いことではないんですけどね。

最後にスワーヴリチャードについて。今年の世代を語る上で、最も重要な存在はやはりこの種牡馬になるでしょう。今年の世代で初年度産駒がデビューし始めたと思えば瞬く間に勝ち星を重ね、勝率、複勝率は圧倒的です。勝ち上がり率が高いだけかと思えば、2歳重賞も複数制し、少ない産駒数の割にクラシックまで駒を進める産駒も数多く存在しています。

期待の新星スワーヴリチャード産駒について

私は、スワーヴリチャードの優秀さは、この馬の持つ「産駒の能力をまとめ上げる力」に根ざしていると考えています。スワーヴリチャード産駒はとにかく平均点が高く、繁殖の質にかかわらず安定した成績を出しています。良質なノーザンファームの繁殖牝馬のみならず、少し実績に劣る日高の繫殖牝馬からも勝ち上がる産駒を多く排出し、また1200mから2000mまでまんべんなく成績を残しています。様々な要素に左右されることなく、一定のレベルにまとまった産駒が多いことは、この種牡馬の優秀さを物語っています。
このまとめ上げる力は、特に産駒の馬体重にも表れています。産駒を見渡すと、極端に小さい馬や極端に大きい馬が少なく、いずれも適切なところでまとまっています。小さい繁殖牝馬につけてもある程度のサイズに仕上げてくれて、大きい繁殖牝馬につけても大きすぎないサイズに収めています。
例えば、母父ハービンジャーだとサイズが大きくなりすぎることがあるのですが、スワーヴリチャードはそれをうまくまとめています。ダンチヒ、デインヒル、ハービンジャーを持っている産駒が好成績を残しているというのは、そういう相性の良さがあるのだと思います。レガレイラなどがその最たる例で、母であるロカはデビュー時500kg、レガレイラは452kgでした。

スワーヴリチャードは、その産駒の完成度の高さから今後も活躍を続けていくと思います。種付け料も初年度の200万円から1500万に跳ね上がり、産駒の質もさらに上がっていき、成績が良くなることはあっても、悪くなることはないでしょう。正直、すべての出走産駒の馬券を買っていてもあと数年はプラスになるとすら思います。母父や牝系の特徴を柔軟に引き出すので、併せて注目することが今後は重要となってくるでしょう。

長々と書きましたが、スワーヴリチャードは数年以内に間違いなくリーディングをとると思います。繫殖牝馬の良いところを引き出しつつ、高い完成度でまとめ上げ、日本の芝競馬に高い適性を示す。まさに稀代の名種牡馬サンデーサイレンスの特徴そのものです。
ディープ、キンカメ、ドゥラメンテ亡き今の種牡馬戦国時代を平定するのも時間の問題でしょう。

皐月賞展望

本題に入る前に長々と話してしまうのは、悪い癖ですね。記事を分けるなどすればいいのですが、一度書き出すと止まらないので如何ともしがたい所です。個人ブログのようなものなので、大目に見て頂けると幸いです。
さて、牡馬クラッシック初戦の皐月賞。イギリスの2000ギニーに範をとり、最もスピードのある優秀な繁殖馬を選定するためのチャンピオンレースとして行われます。そのため、はじめにで触れた種牡馬戦国時代を占うレースとしても重要な一戦です。
クラシック3戦のうち最も短い距離で行われるレースですので、文言に倣い最もスピードがある馬を選びたいところなのですが、例年の結果を見るとそう単純ではありません。

馬場状態によって求められる能力が変化する

皐月賞に求められる能力はその年の馬場状態によって大きく変化します。昨年の重馬場の皐月賞を制したソールオリエンスはキタサンブラック産駒。キタサンブラック産駒は軽やかなスピードというよりも強引な体力とパワーで走る、消耗戦向きのタイプで、母父のMotivatorはSadler's Wells系でやはり豊富なスタミナで走るタイプです。

逆に高速馬場で行われた場合は、スピード自慢が好走しています。過去十年で決着時計が1:59秒以下となったレースは4戦あり、それぞれ2019年のサートゥルナーリア(1:58.1)、2017年アルアイン(1:57.8)、2016年ディーマジェスティ(1:57.9)、2015年ドゥラメンテ(1:58.2)が制しています。いずれも父がロードカナロア、ディープインパクト、ディープインパクト、キングカメハメハと上がり勝負に強い日本の王道血統揃いとなっています。

今年の中山競馬場の馬場状態

正直土曜の開催を見てからでないと何とも言えないのですが、先に結論を述べると、ある程度早めの馬場になると考えています。具体的に想定している決着時計としては、1:59.0をぎりぎり切ってくるあたりです。

3月31日に行われた古馬3勝クラスの美浦ステークス(中山芝2000m)は良馬場で1:58.7の好時計でした。これは同じく良馬場で行われた昨年の同レース時計の1:59.7より1.0秒も早く、それだけ馬場状態は良好に保たれていることを示しています。
これがそのままの状態で残っていれば良かったのですが、先週の重馬場開催による消耗、週中の火曜日に降った強めの雨と開催前日の金曜日に降った軽い雨。正直馬場がどうなるか、はっきりとしたことが言えない状況です。

現在、土曜日は最高気温23℃の快晴、日曜日は最高気温25℃の晴れが予報されており、絶好の競馬日和になっています。ここはその絶好の天気を信じて、皐月賞までにある程度馬場が回復すると期待し、美浦ステークスよりわずかに傷んだ良馬場を想定して、1:59.0をぎりぎり切る決着時計を想定しようと思います。

<追記>土曜競馬をふまえた馬場状況について

土曜の平地の芝レースを4鞍見て、今の中山には欧州的なスピードが求められているというのが自分の見解です。

欧州的なスピードとは、平たく言うと洋芝で他の馬よりも早く走る能力のことです。主に野芝で実施される日本の競馬に対して、欧州では気候の違いから品種の異なる芝で実施されており、これらを洋芝と総称しています。野芝では地下茎、匍匐茎のクッションから反発力を活かしてはねるように走れるのに対して、洋芝はよほど乾燥して馬場が硬くならない限り反発力をあまり得られないので馬自身の推進力が重要になります。

今の中山は通常の野芝に加えてイタリアンライグラスという洋芝がオーバーシードされています。先週の悪天候の開催で地下茎を荒らされた野芝に対して、洋芝は昨今の温暖な気候と程よい雨で急激に成長し、その影響が顕著に出てきています。そのため、重馬場を走る抜くスタミナではなく、洋芝を駆けるスピードが求められるというわけです。

従って、注目すべきは馬の走法と血統です。おおきなストライドで軽やかに走る馬ではなくピッチが短く力強い走り方をする馬を選びつつ、欧州で活躍した馬の血を引く馬を探していければと思います。

予想印と各馬への見解

◎ミスタージーティー

一目惚れでした。美しい顔立ちに、寸分の狂いなくバランスの取れた馬体。新馬戦のふらつき追走からの圧倒的な末脚。そして何よりも、父はドゥラメンテ、母父Sadler's Wells、母リッスンという圧倒的な血統表。有馬記念に負け(◎スルーセブンシーズ)中山から船橋法典駅へと歩く帰り道、ホープフルステークスの出馬表を見てから虜になるのは一瞬でした。

現代において歴史的名種牡馬Sadler's Wellsを二代目に持つ馬を見れるとは思いもしませんでしたし、ましてやその馬が新馬戦で、終始もたつきながらも上り3F33.7秒の差し切り勝ちを見せているのですから末恐ろしいものでした。本来Sadler's Wellsを持つ馬は欧州的な馬力とスタミナで走るのがほとんどで、これ程の末脚を新馬線で見せるのは驚愕の一言です。

長々と彼の魅力について書き連ねていますが、POGの指名馬を決めるわけではなく皐月賞の記事ですから、このレースに最も適性がある馬だと思って本命印を打っています。後ほど触れますが、なんならこのレースがこの馬にとってのピークであり、もし皐月で勝てたとしても今後は軽視すべきとすら思っています。順を追って話していきます。

この馬の皐月賞適正を謳う根拠は、やはりこの美しい血統表です。
ミスタージーティーの父ドゥラメンテは昨年のリーディングサイヤーでありその能力は折り紙付きです。また特に、各馬が初距離になるクラシックレースで抜群の適性を発揮します。タフな血統ながらスピードも兼ね備えた、言わずと知れた優秀な種牡馬です。

ドゥラメンテ産駒は、ディープインパクト産駒と近い適性、特徴を示す一方で、母系の特徴を強く引き出すことで知られ、本馬の特徴を探るには母系を深く見ていく必要があります。

母父は英愛リーディングサイアー13回連続獲得の歴史的名種牡馬Sadler's Wells、母母父はNever Bend系のIrish Riverでありいずれも欧州的な要素を与えます。そのため、ドゥラメンテの早くから活躍するフレッシュさとその素軽さである程度好走しつつも、他の欧州志向の馬に同じく比較的時計のかかる馬場が向き、本格化は古馬になってからと考えていました。

しかし、近親の馬を探っていくとピークはもっと早いのではないかという考えに自分は至りつつあります。
というのも母リッスンは英2歳GIフィリーズマイル(芝8f)に勝利し、その後2戦で凡走し繁殖入り。
2番仔でデインヒルダンサーの仔アスコルティを産み、その産駒アスコリピチェーノが阪神ジュベナイルF(G1)、新潟2歳S(G3)を勝利。
3番仔タッチングスピーチはキャリア6戦目で関西TVローズS(G2)を制し、その後2年に渡り勝ち鞍なし。
その他サトノルークスなど近親馬もキャリア4~6戦頃がピークです。

このように、この牝系は良馬場の芝重賞を勝つほど軽く、極めて早熟です。ミスタージーティーの新馬線の素軽さもこと牝系の良さを発揮してのものだと思います。従って、ミスタージーティーもこの牝系の例にもれず早熟傾向の一頭だと考えています。キャリア5戦目での皐月賞は、この馬のキャリアにおいてピークでの挑戦となるのではないでしょうか。

ミスタージーティーは父ドゥラメンテ、母父Sadler's Wells、そして近親に重賞馬の多い優秀な牝系を引継ぎ、総合的な能力の高い馬だと思います。またその早熟牝系の影響から、能力のピークをクラシック戦に持ってこれているでしょう。キャリア4戦の内2つの勝ち鞍は他を圧倒する競馬、負け鞍2戦も明確な敗因があって能力を発揮しきれなかったものであり、馬柱からこの馬を嫌う要素は一切ないと思います。

なにかと鞍上にまつわるエピソードが絶えない本馬ですが、それに劣らぬ個性と魅力、そして能力を兼ね備えた一頭であり、この馬こそが皐月賞馬にふさわしいと心の底から思っています。

<追記>相手評価と買い目

個人的には単複での勝負を考えていたのですが、やはり藤岡康太騎手の影響が大きいのか藤岡佑介騎手騎乗のミスタージーティーは単勝が想像以上についてないです。
ワイド5-2,12,17 資金配分3000円
5軸3連単マルチ

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