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秋競馬に向けて(予想における論点と注目点)

はじめに

夏競馬を振り返って

宝塚記念と帝王賞を終えてから約三か月。長い長い夏競馬が終わりを迎えました。札幌記念にWASJ、新潟の薄暮開催に個性豊かな2歳馬たちのメイクデビューなどなど、今年もオフシーズとは思えないにぎやかさでした。
そんな話題の尽きない夏競馬でしたが、自分の中ではとりわけ、小牧太騎手の中央引退レース&セレモニーが印象深く記憶に残っています。
過去には地方競馬での華々しい活躍や2度のG1勝利などの実績がある小牧太騎手。歳もあってか最近は長らく勝利がなく、乗鞍も減少傾向にありました。そんな中で決まったJRA騎手引退と古巣である園田への復帰。引退は小倉開催の中京記念の週で、中央最後の重賞騎乗としてワールドリバイバルと共に挑むも振るわず。正真正銘ラストの12Rでは12番人気のモズアカボスでの出走でいよいよ勝利は厳しいかと思いかけた時、最終レースのゲートは開きました。
決して良いスタートではなかったモズアカボス。そのまま馬群に飲まれていくかと思いきや小牧太騎手の出鞭と共に二の脚を使い内2~3番手を確保し小倉1700mの小回りコースを好位でじっくり追走。4コーナーでやや後退し一瞬厳しさを見せるのも束の間、内から力強く抜け出し先頭馬を目標に捉えたかと思えば、そこからじりじりと脚を伸ばし、ゴール板前で捉え僅かに先着、実に約600日振りの勝利をJRA騎手最後のレースで飾って見せました。
この「魂の騎乗」に引退セレモニーも大盛り上がり、息子の小牧加矢太騎手も同日の福島の障害レースを騎乗後すぐに新幹線で駆け付け加わり、華々しい引退式となりました。
現在は古巣の園田競馬に復帰して、未だ衰えない腕で圧倒的な勝利数を重ね、さながら地方版のルメール騎手状態になっているそうです。

いよいよ秋競馬も本番

小牧太騎手の魂の騎乗についつい文字数を割いてしまいましたが、思い出に浸っていてばかりではいけません。今年の秋競馬は特に慌ただしく、先週のスプリンターズステークスを皮切りに国内外で数々の主要レースが繰り広げられ、国内G1か日本馬出走の海外G1が毎週なにかしら行われる番組編成。ラストウィークのホープフルステークス&東京大賞典までノンストップです。

今年は、春競馬では故障や海外遠征で見ることができなかった古馬の強豪も多く、彼らもこの秋競馬を目標に調整しており、より一層目を離せない開催となりそうです。
自分もどのレースを現地で観戦し、どのレースに資金を多く割くか、しっかり吟味していきたいところです。

秋競馬の方針

いよいよ来週から東京・京都・新潟開催が始まります。秋競馬をどこからとするかは結構人によると思いますが、自分は東京競馬場の近郊に住んでいるのもあり、この東京開催の開始が秋競馬開幕を強く感じさせてくれます。
競馬予想ファンにとっての東京・京都開催は、夏のローカル開催と異なりトリッキーな狙い方が効かず、より実力が問われます。折角のタイミングなので、今一度秋競馬の予想における論点、注目点を整理していこうと思います。

京都競馬場13週開催

阪神競馬場が馬場改修工事となり、現状関西における競馬主場は京都競馬場のみ。そのため、我々競馬民のみならず京都競馬場も年末までノンストップとなります。となると気にするべきは馬場。このハードな開催にも耐えられるようにJRAの馬場管理もあの手この手の工夫をしてくると思います。可能な限り詳細まで馬場の傾向を把握するとともに、柵移動のコース替わりもA~Dまで行われるので、これらに都度器用に対応できるかが本開催の大きなカギとなっていきそうです。

長期休養明けの馬への評価

秋競馬は例年、夏を休養に充てていた馬と、北海道などの滞在競馬で叩かれ、能力や実績を伸ばしてきた馬とがぶつかる舞台でもあります。実際に先週のスプリンターズSではサマースプリントシリーズで頭角を現してきたサトノレーヴが一番人気になり、それを高松宮記念1番人気で凡走し骨折判明&長期療養していたルガルが破りました。

自分もルガルは能力こそあっても骨折開けは厳しいだろうと軽視しており、苦汁をなめる結果となりましたが、この図式は今後も頻繁に現れるのではないかと考えています。
思い返せば日本ダービーのダノンデサイルや神戸新聞杯のメイショウタバル、新潟記念のシンリョクカなど今年は長期休養明けでの活躍がとにかく目立っています。
これら結果を受けて、2つの仮説が立てられます。

1つ目は調教設備の充実による、長期休み明けの馬への好影響です。以前はノーザンファームの馬だけが天栄などの設備の整った外厩を使うことができることを根拠に、ノーザンファーム系の長期休養明け馬は信用しそれ以外は疑う姿勢だったのですが、ルガルやシンリョクカを筆頭に非ノーザンファーム系の長期休養明け馬の活躍が目立ちつつあります。これは、ノーザンファーム系以外でも充実した外厩ができたり、美浦の巨大な坂路コースの完成などによって、調教設備が整ってきた影響だと考えています。
設備面含め様々な調教技術が確立されつつある昨今、わざわざ休養明け初戦を叩きとして使わずとも、それに匹敵する調教が出来るようになってきていると感じます。

2つ目は、レース1戦辺りの消耗の増大です。昨今の日本競馬はレースの平均的なレベルが上がり、事実レーティングも高くなってきています。また、サンデーやディープ亡き今、全体的な瞬発力が下がり、脚を溜めて末脚を伸ばす競馬よりも積極策で早めに馬を動かして粘り込む消耗戦も増えつつあります。今年の皐月賞を始めとするスーパーレコード乱立の背景には、このレーススタイルの影響も確実に出ていると思います。

以上の仮説が正しければ、今開催は長期休養明けの実績馬を積極的に狙うことが有効になると考えられます。さらにその競走馬が晩成血統の3, 4歳馬であれば、かなりの上積みが見込まれ厚めに張っていきたいところです。見逃しがないよう、出馬表をくまなく確認していきたいですね。

4歳馬の台頭

昨年のクラシックを追っていた方であればご存じの通り、現在の4歳世代はレベルが低いという話をよく聞きます。実際に昨年の菊花賞出走馬のほとんどがその後未勝利で、ショウナンバシットくらいしかその後の活躍がありません。
一方で菊花賞組以外の4歳馬を見ていると、案外活躍している競争馬は多いです。ホウオウビスケッツやレーベンスティールなど、今後の重賞戦線をにぎわしてきそうな4歳馬も現れてきています。
一つの仮説として、4歳馬はコロナ渦中の生まれで若駒時の調教が不十分でポテンシャルが発揮されていなかっただけと考えるのは、案外的外れではないのかなと考えています。長期休養明けで体をじっくり作り直し活躍するのも4歳馬が多いですし、前で挙げたルガルもその一頭です。
まだ仮説の域を出ませんが、いずれにせよ多くの競走馬は4歳秋がピークですので、秋競馬での4歳馬動向はしっかり追っていければと思います。

3歳ダート路線組とヤマニンウルス

昨日行われたJDCで、長らく続いた3歳ダート路線はフォーエバーヤングの鮮やかな勝利と大井にこだまする瑠星コールと共に幕が下りました。ダート3冠を含む3歳ダート路線の整備にまつわる振り返りはまた別の記事で書くとして、彼らが加わることで混沌としているのが、現在のダート路線の獲得賞金問題です。無敗のままプロキオンSを制し、多くの期待がかかっているヤマニンウルス。彼のチャンピオンズC出走決定獲得賞金が7210万円で、3歳ダート馬でこれを超えられているのが
フォーエバーヤング(39870万)
ラムジェット(22500万)
アマンテビアンコ(9200万)
ミッキーファイト(8760万)
サトノエピック(8550万)
サンライズジパング(7290万)
の計6頭で、このうちBC直行を決めているフォーエバーヤングを除くと5頭となる。チャンピオンズCに向けて彼らとヤマニンウルスとの獲得賞金争いが注目となるだろう。

おわりに

「HERO IS COMING.」

今年の秋競馬に色々と思いを巡らせましたが、なによりもの特徴、そして何よりもの面白さは年度代表馬候補が無数にいることだと思います。
確かに去年のイクイノックスのような圧倒的な存在は、秋競馬を非常に熱狂的なものにしてくれました。しかし、今年の開催はそのような主役がおらず寂しいものというわけではありません。むしろ主役の座を奪い合う、血で血を洗うような激戦が繰り広げられる事でしょう。
年末までノンストップの秋競馬。「HERO IS COMING.」のキャッチコピーと共に、これから登場するであろう新しいHEROへの期待に胸を熱しつつ、この開催を駆け抜けて行きましょう。


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