BJステアリングホイール レストア日記 第2回 接着剤充填
前書
1970年代以降のステアリングホイールはウレタン製である。革巻きはそのウレタンの外側に巻いてある。ウレタンだけでは強度がないので金属製の芯が入っている。現在の純正品や社外品は軽いアルミ製だか、丸目ランクル70は鉄製だ。初期BJ70ステアリングホイールは鉄が厚くてかなり重い。
手に入れたBJステアリングホイールは、鉄芯とウレタンが剥離してグニグニとウレタンが回ってしまう。つまり鉄芯とウレタンに隙間ができている状態である。その隙間に接着剤を流し込んで固定するのだ。
接着剤仕様
第1話で書いたように、接着剤はトーヨーポリマー ルビロンKA-10(主剤)/ルビロンKB-35ME(硬化剤)という二液形ウレタン樹脂系構造用接着剤を使う。
https://toyopolymer.co.jp/products/adhesives/1396/
https://toyopolymer.co.jp/cms2/wp-content/uploads/2021/11/leaflet_rubylonKseries_polynate_210803.pdf
https://toyopolymer.co.jp/cms2/wp-content/uploads/2023/06/catalog_adhesives_2023.6.pdf
・硬化剤を使う二液形なので密閉空間でも硬化する
・金属とプラスチック(ウレタン)の接着に適している
・可とう性があり耐衝撃性に優れる
・低粘度速硬化タイプ
今回の補修で必要条件を満たしている接着剤である。
作業時間を考えると8時間硬化タイプ(KB-33M)が欲しかったが、20kgでしか買えないので諦めた。
混合粘度は7000~8000(mPa・s)程度なので、注射器で注入可能だと想定した。注射器は100均に売られている25mlの金属針付き注射器を使用したのだが、実験してみると金属針を使うには粘度が高く押し出すことができなかった。そのため針なし25ml注射器を使い注入することにした。注射器は使い捨てなので複数用意しておく。
【注意事項】
この投稿を見てルビロンKを使うの人もいるかもしれないが、添付されている注意事項また下記の安全データシートをよく読んでほしい。硬化剤のイソシアネートには毒性があり発がん性もある。屋外の風通しのよいところで、手袋・防毒マスクなどを装着して安全に作業すること。余った接着剤の保管・処理も責任を持って行う。硬化(ウレタン結合)したウレタン樹脂からはイソシアネートが浮遊することはありません。
http://image.trusco-sterra.com/pdf/sds/2KA10KB35ME_8179__SDS.pdf
接着前の準備
図面2のようにステアリングホイールの裏面6箇所に6mmの穴を開けた。これは充填された接着剤が抜ける穴である。この穴から接着剤が出てくることで隙間に充填されていると判断する。私は6mmのドリルで穴を開けたが慎重にしないと中の鉄芯を傷つけてしまう。穴あけポンチのほうが上手くいくだろう。私の個体は上半分のウレタンが剥離していたので、概ね7等分するように穴の位置を決めた。
図面2のようにステアリングホイールの横面(外側)7箇所に3mmの穴を開けた。この穴は注射器で接着剤を注入する穴である。これは穴あけポンチを使ったのでキレイな穴を開けることができた。6mmの抜け穴のと位置が同じにならないよう千鳥配置するようにする。
この穴はテープで塞いでおく。注入するときだけテープをめくり、注入が終わったらまた塞ぐ。そうしないとこの穴から接着剤が流れ出てしまう。
接着剤充填
今回使うルビロンK接着剤は優れているが、硬化時間が短いので素早く注入しなければならない。カタログの可使時間は5~7分、夏の暑い時期はあっという間に反応するのでなるべく避けたほうが良いと思う。接着剤はキッチンスケールなどで正確に計量する。KB-35MEとKA-10の割合は3:1なので、15:5の計20gで混合した。
スマホなどで経過時間を測ったほうが良い。硬化剤を入れた時にスタートして、混ぜる時間が60秒、混ぜた液を注射器に流し込むのに15秒くらい。残りの時間を使い、テープ剥がして穴に注射器指して接着剤注入、抜け穴から接着剤が出てきたら、注射器を抜いてテープを貼る。時間的に3箇所くらいしか注入できないと思う。量も3箇所くらいで使い切る感じになる。7分くらいで接着剤を押し出すことはできるけど粘度が増してくる。
急がないといけないが、主材と硬化剤の撹拌があまいと完全硬化しない可能性がある。硬化剤は茶褐色なので色が均一になるまで時間配分の中でよく混ぜること。
今回は、2回に分けて端の穴から順番に接着剤を注入した。全部の抜け穴から接着剤が出たら終了。完全硬化するまで待つ。硬化時間は30分とカタログにあるが、一晩動かさずに放置した。
後から分かったけど穴の周りはマスキングしたほうが良い。注入作業は時間制限もあるので焦って雑になりがちだし、抜け穴からは思ったより接着剤が多く溢れ出ることがある。硬化前はパーツクリーナーとウエスで拭き取ることもできるけど、最初から接着剤がつかないように保護した方が良い。硬化すると強固に付くので剥がすのが大変なのだ。
接着剤硬化後の仕上げ
完全硬化したらウレタンと鉄芯はガチガチに固定される。さすが接着性に優れていると謳う商品である。抜け穴にも接着剤が充填されているので、これがストッパーとなり強固になっているのだろう。可とう性はあるけど本体ウレタンよりは硬い。カッターナイフで削ることは可能だが、周囲のウレタンを削りすぎないように気をつけなければならない。
穴からはみ出た接着剤をすべて削りツライチにする。ある程度刃物で削ったら600番程度のサンドペーパーで削り慣らした。
まとめ
資料を集めて事前シミュレーションは何度もした。初めて使う接着剤で初めての作業である。何度か失敗もしたけど、最終的には大成功であった。後は耐久性が気になるところ。実際に数ヶ月使用しているが、ウレタンが剥がれることはなくしっかりと固定されている。
次回はホーン接点の分解・スポークの塗装について書いてみる。
乞うご期待。