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Q.公認会計士短答式試験撤退組はどういったキャリアや業界等に進めば良いでしょうか?

※元記事




質問

初めまして、他校で受講しているH29IIの短答の結果が不合格になった受験生です。
現在休学しており次回の試験がダメなら会計士試験から撤退し一般就活をするのですが、公認会計士短答式試験撤退組はどういったキャリアや業界等に進めば良いでしょうか?
こういった質問をすること自体情けないことなのですが、よろしくお願いします。(匿名希望)

どうも、松本です。


本日は短答試験を撤退した場合のおススメのキャリア形成についてお話ししたいと思います。


まず、大前提としてどんな業界に行ったとしても公認会計士の勉強は役に立ちます!


一般に、ITと英語と会計はビジネス言語と呼ばれています。


つまり、ビジネスマンが使いこなすべき言語であり、換言すれば「ビジネス上のインフラ」なのです。


だから、例えば営業課に配属されても、会計士試験で学んだ会計のスキルや考え方は役に立ちます。


下記に管理会計論から使えるビジネス思考を4つほど、列挙してみます。


その1


利益の上げ方一つとっても、販売数量を10%増加させるよりも販売価格を10%増加させた方が全体の利益は大きくなりますよね。


管理会計論のCVPの感度分析で学習したかと思います。


ここから、「売るよりも前に優先することがある。」ことを学びました。


セールスファーストではなく、いかに販売価格を維持、引き上げるかの戦略を構築する方が、会社の営業利益を獲得する上で有益なのです。


その2


資本コストを上回るリターンの投資案件がある場合には、残余利益(RI)が出るのだから、全社的にはGO(採用すべき)ということも学びました。


ここから、経営的には借入金利を上回るROIの投資案件があるなら、融資を引いてでも投資すべきということが分かります。


つまり、ビジネスには「善い借金がある」ということも学びました。(これ重要です。)


会計リテラシーのない人だと「借金なんて悪に決まってんじゃん。」という声が聞こえてきそうです。


しっかり学んだ人からすれば、「借金それ自体は善でも悪でもない。」ということと、「会計リテラシーがないこと自体が悪である。」ということが分かるはずです。


その3


何かアクションを起こすと損失が出るリスクはつきものですが、行動しないことにより機会を損失するリスクがあることも学びましたよね。


管理会計論の意思決定会計で学んだ、機会原価という概念です。


「行動しなければ、損なんて出ないじゃん。」と考えるのは、会計に無知な人の浅はかな知見な訳です。


その4


過去の原価は未来の意思決定には影響を及ぼさない「埋没原価」でした。


ゆえに、「終わったことをクヨクヨ考えても、未来に良い影響を及ぼさない。」ことも学びました。(これ重要です。)


挙げだすと枚挙にいとまがありませんが、やはり会計が活きた学問であることは実感できると思います。


だからどんな業界に行っても会計士の勉強は役に立つから、どこに就職しても良いです。以上!



とは、いきませんか。。。(せっかく質問してくれた訳ですし。)


では、ここからが本題。


話しを戻します。


大前提として質問者さんは大学3年生であると思われます。


3年の12月試験に落ちたら、そこから就活に切り替える。


これを前提にして、考えてみました。


就活おススメの業界


おススメの根拠は「今後30年後も食いっぱぐれがない業界であること」と定義します。


こちらの記事でも示しましたが、そう遠くない未来にAI(人工知能)が人の仕事を奪うのは確実な状況です。


誰でも出来る汎用性の高い業務はAIによるIT化グローバル化の業火に見舞われます。


完全なるレッドオーシャンです。絶対に進んではいけません。


AIによる脅威を直接受けず、長期的にキャリアを形成する道を考えていく必要があります。


以下、松本講師が考える会計士試験脱落者へのおススメの業界やキャリアの形成を示します。


☆会計士受験勉強が直接、役に立つ職種・職業

A:国税専門官(公務員志望の場合)
B:企業再生(M&A)のコンサルティングファーム
C:外資系企業のコーポレートファイナンス部門

☆私が個人的にオススメする職種・職業

D:ベンチャーキャピタリスト
E:アクチュアリー
F:システムアナリスト
G:ITコンサルタント(特に集客)


いずれの場合も卒業までに(4年生の6月か11月までに)日商1級取得は推奨します。


では順次確認していきましょう。


A:国税専門官


まずは、親がついて欲しい職業No.1、結婚したい相手の職業No.1の公務員からです。


会計学が試験科目にあることから、会計士の勉強が相当程度進んでいるのであれば、かなりのアドバンテージが期待できます。


23年勤務することで、全科目免除で税理士になれるというメリットもあります。


しかし、後述するB~Gとは明らかに異なる点が一つあります。


それが、「専門スキルにコミットしていない」という点です。「安定性にコミットしている」ので、キャリアが形成されていく実感はないでしょう。


淡々と日々の業務をこなす毎日。「安定」と「自由」は二律背反です。安定を選んだ時点で自由への道は閉ざされたと考えてください。


ここは、価値観と職業観の問題なので、どちらが良くてどちらが悪いということはありません。


ちなみに、脱税容疑で逮捕されたりする税理士の大半は、国税上がりの税理士です。ポンコツ税理士も相当多くいます。(税理士業界の4割が国税OBです。)


試験から逃げるからそういう人格が形成されてしまうのです。


一長一短ありますが、いずれにしても国税専門官がなくなることは考えられませんので、安定感は抜群の職業と言えます。


B:企業再生(M&A)のコンサルティングファーム


企業再生の分野は2017年時点で最もトピックな業界と言えます。


当該分野には会計士のライセンスホルダーも数多存在しているので、彼らとは一線を画す必要があります。


それは、より上流の戦略系コンサルにシフトすることです。


組織再編の手法と企業再生の具体的方法を立案する「スキームを構築する専門家」になるのです。


組織再編の手法
・吸収合併、株式交換、株式移転、吸収分割等


企業再生の具体的方法
・公的資金の注入、銀行団によるシンジケートローンの組成、私募債の発行による調達、VCによる出資、同業他社による買収等


誰がいつどのタイミングで、再生が必要な企業に資金を入れるのか。(ファイナンスの問題)


経営のかじ取りは誰が執り行うのか(経営の問題)


などを企画・組成するアレンジャーになります。


組織再編の手法は財務会計論の「連結、企業結合、事業分離」で学習しますので、この分野についての知識は他の人よりも優れているはずです。


また、ファイナンスに関しても上記の他に「手形の割引」、「セール&リースバック取引」、「自己株式の処分」、「債権譲渡(ファクタリング)」といった手法があり、これらはいずれも簿記で学習します。


会計士の勉強の最大の利点、それは「体系的に学べること」です。


色々なスキームを組み合わせる上で、体系的に理解していることは極めて重要です。


会計士の勉強は、戦略系コンサルにおいても十分通用しますし、使えます。


C:外資系企業のコーポレートファイナンス部門


外資系企業であっても日本の会計基準(J-GAAP)を理解していることは重要です。


例え、海外の親会社へのレポートを米国会計基準(US-GAAP)や国際会計基準(IFRS)で作成していたとしてもです。


なぜなら、わが国の税務は「日本の会計基準」ベースだからです。


社内に米国公認会計士(USCPA)しかいないと、日本の会計基準のことが理解できていない可能性があります。


その点でも会計士の勉強自体がJ-GAAPの体系的な学びになっているので、活躍の機会は増えると思います。


なお、おススメは「経理」(簿記)ではなく「財務」(ファイナンス)です。


どう違うのか、それは「ベクトル軸による違い」と「業務内容による違い」があります。


経理は現在までに起きた事象や取引を会計データに反映させることが仕事なので、ベクトル軸は「現在から過去」です。(過去志向)


一方、財務は現在の状況を踏まえて、今後の対策を社内で講じていくことが仕事なので、必然、ベクトル軸は「現在から未来」になります(未来志向)


業務内容としては、例えば、財務部門で今後の資金計画を立案し、2か月後に借入が10億円必要だとします。


2か月の間、融資付に奔走し無事に融資を受けることができたとします。(ここまでが財務の仕事)


通帳には10億円が入金されています。


これを(借)Cash 10億 (貸)借入金 10億 という仕訳を切ります。(これが経理の仕事)


財務が長男、経理が次男 みたいなイメージでしょうか。(ちょっと違うか。)


財務が上、経理が下 という関係性があることは理解できるかと思います。(優れているか否かは無関係です。)


将来に関連する数値関係、例えば、「繰延税金資産の回収可能性」や「固定資産の減損損失」などは、往々にして財務のトップが関与しています。


キャリアのゴールは「CFO(最高財務責任者)」とか「コントローラー」という役職になります。


そこまで目指すのであれば、内定後からUSCPAの勉強を始めることをおススメします。


以上、ここまでが会計士受験勉強が直接、役に立つ職種です。


ここからは、会計士の勉強が直接役立つという観点ではなく、これからの時代にニーズが高まること間違いなしの職種・職業を4つご紹介します。


D:ベンチャーキャピタリスト


資本主義の世界にいる以上、資金の担い手は重要な存在です。


その意味では、ベンチャーキャピタル(VC)で経験を積むことはおススメです。


VCはアーリーステージにいる会社(大半が非上場)に出資をして、場合によっては経営に参画し、企業価値を高めて売却(EXIT)することで利ザヤを得るのが目的です。


やっていることは、ファンドと対して変わりません。


ファンドは主に上場企業が対象となるのに対し、VCは名もなき中小企業に対して出資をする点が異なります。


あと、ファンドは株価が重要な指標(金融投資)であるのに対し、VCは企業それ自体の価値(事業投資)に重きを置くという違いもあります。


VCでは、会社の事業計画の実現可能性を検討の上、財務分析をして、会社の成長性や収益性を判断します。


そして問題がなければ、無事出資に至ります。(その会社の株主になることもありますし、劣後債というのを発行して債権者になることもあります。)


銀行や証券会社の業務は将来、AIにとって代わる可能性は高いですが、VCはどうでしょうか?


私は、AIはVCにおける人間の仕事を奪うほどの脅威にはならない と見ています。


AIが人間の仕事を奪う可能性のある業務


それは・・・


定型的な(決まった)業務
取引量が多い業務


であるという特徴を有します。


まさに銀行の融資業務や窓口業務、証券会社の売買業務などはバッチリ該当するのです。


一方で、VCの場合には、1つのプロジェクトにはかなりの時間をかけて、色んな要素(非定型的な要素:経営者の人柄や誠実性等)を織り込みながら出資の検討をします。


AIが一つの参考情報を提供することはあり得るかもしれませんが、30年後にAIだけでVCが生業として成立しているとは思えません。


それ故、金融の世界に足を運び入れるのであれば、VCには一考の余地があると考えて良いでしょう。


E:アクチュアリー


数理計算のプロフェッショナル、それがアクチュアリーです。


昔は保険会社での勤務が一般的でしたが、今後の働き口は相当多方面に展開されると予想します。


保険会社が徴収する保険料は、保険加入者の死亡率や事故率を踏まえ、複雑な数理計算モデル(例:二項モデル、ブラックショールズモデル、モンテカルロシミュレーション等)を駆使して決定しています。


アクチュアリーは数理計算のプロフェッショナルとして、保険料の決定に参画していきます。(保険会社には不可欠な存在なのです。)


今後は「会計とアクチュアリーが連動する時代」が来るだろうと私は考えます。


例えば、「ストックオプションの公正な評価単価」の算定は突き詰めるところ、「モチベーション(やる気)の時価評価」という非常に曖昧かつ抽象的な概念を数値で具体化することを意図します。


例えば、「退職給付債務」の算定は、より正確な仮定に基づいて「死亡率」や「退職率」を使用する方が、算定金額が精緻になります。


例えば、「企業価値」の算定は、会社の事業からもたらされる「将来C/F」の金額を複数の方法でシミュレーションできる方が、企業価値をより適正に算定できます。


アクチュアリーは統計的、確率的に将来において起きる事象を数理計算に落とし込むスペシャリストとして辣腕をふるいます。


複雑かつ非定形な時代だからこそ、未来の不確定要素を正確に数値で算定することに対するニーズは高まると私は考えています。


数学的素養は欠かせないので、アクチュアリーは理系の方が多いです。数学が得意な方には、おススメの職業です。


F:システムアナリスト


アクチュアリーが「金融工学の専門家」だとするならば、システムアナリストは「マーケティング工学の専門家」です。


これから拡大していく「ビッグデータ」をビジネスに活用していく上では、欠かせない職業です。


分かりやすく、アプリによるオンラインゲームで例えてみます。


複数人がオンラインで対戦する場合、待ち時間はストレスになるため、これを解消する必要があります。


どうやって?


待ち時間が起きる原因を分析し(Aさんは海外から、Bさんは3G回線、CさんはWi-fiを利用しており、通信速度にムラがある状態)、これを是正するためにプログラムを組み替えることで、システム上の問題点を解決していきます。


これがシステムアナリストの業務の一つになります。


また、単なるシステム代行屋さんではありません。


どのようにプログラムを組めば、オンラインゲームにおけるユーザーからの課金を促せるか、といった上流に位置する経営戦略にも食い込んだ実践的アドバイスを行います。


SE(システムエンジニア)の上位互換」といったイメージでしょうか。


大量の顧客情報を効率的に一元管理するためのプログラムを構築・設計するため、当然プログラムにも精通しています。


文科省では2020年から小学生のプログラミング教育を必修化することを決めています。


ITの人材が今後不足することが懸念されるからです。


その点で、「これから来る職業」と言っても差し支えないと思います。


G:ITコンサルタント(特に集客)


最後はこれ、ITコンサルタントです。


会計士のライセンスがない方が、将来において独立したいと考えるなら、この職業は超おススメです。


個人(1人又は少人数)で開業して、年収1億円を突破できる職業はこれしかないと考えます。


今や時代は「O(オフライン)to O(オンライン)」と呼ばれ、あらゆるビジネスがオンライン化しています。


田舎の漬物屋さんがネットで販路を拡大していくようなことが、今後ますます加速していきます。


「売れるためのホームページ」の作り方や、「SEOによる検索エンジンからの最適化」、「グーグルを利用した広告の打ち出し方」などのアドバイスをする人、それがITコンサルタントです。


私が最も注目している一人に「加藤公一レオ」という人がいます。


レスポンスの魔術師の異名を取る、天才マーケッターです。


彼のコンサル料相場は「2時間で50万円」ですが、予約待ちで殺到しています。


集客方法(あるいは、売上を上げる方法)を指南できるコンサルタントは引く手あまたです。


30年後も絶対に廃れることのない職業であることは確実です。


個人的におススメします。


以上です。


長くなってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。


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