『Shi Sil St』-06
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目薬をさしたら随分すっきりした。
安堵の空気を吐き出すと、ちゃんと思考や景色が見えてきた。信号の色で流れる人々。どこから、こんなに大量に。
そして、あのど真ん中で拾うものってなんだろう。
今になって気になってきた。気になったところで、もうそれは無いんだから確認しようがない。レアアイテムをみつけたように見えて、実はたいしたことないかもしれない。お菓子や飲み物のちょっとしたおまけとか、同僚にもらった飴とか、ぺらぺらで失くしやすいのにそれがないと経費精算できないレシートとか。まぁ、紙には見えなかったけど。
おっと、また余計なことを考えてしまった。僕はいつもこれをやって怒られる。ぼーっとしてないで動けって。早く移動しないと。移動だけ、早くしてればいいんだから。ぼーっとするために、バイト先に急ぐ。ぼーっとするのがバイトであり、仕事なんだ。こんなにおいしいバイトがあるなんて知らなかったよ。まぁ、それこそ、この街でぼーっとさっきみたいに考え事してたら、スカウトされたんだけどさ。
だから、本職が終わったあと、この坂を登ってバイト先に向かう。世の中にはいろんな仕事があるんだ。
ぼーっとするのが仕事なんていう、ね。