KOTIRA ATATAMEMASUKA?【短編小説#2】
「こちら温めても大丈夫ですか?」
そう声をかけられ、現実世界に戻ってきた。
「あっはい、お願いします。」
最近はやたらと忙しく、終電とまではいかないが、退社は22時を確実に過ぎる。社会人に成り立ての頃は自炊をしていたが、気がついたらやらなくなっていた。人間は一度だらけると、なかなか元には戻れない。
今日も何の迷いもなくコンビニで夜飯を買う。
調味料って消費期限あるんだっけという、どうでも良いことを考えていると、
「今日も遅いですね。」
と店員が声をかけてきた。
ここ2~3週間通っているが声をかけられたのは初めてで、咄嗟のことで対応ができず、え、あ、ええ。という素っ気ない返事をしてしまった。
タイミングよく電子レンジの音がなった。
温め終了の合図。
店員が手際良く、商品を袋につめて、割り箸とお手拭きも必要の有無を聞かずに、いれてくれている。
あーもっと気の利いた返事をすれば良かったと後悔した。
と同時に、最後に何か一言添えられると気づいた。まだ最後にチャンスはある。おそらくこの後に店員が、「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」と声をかける。その時に、一言で良いから何か、何か添えたい。
「いつもありがとうございます。」いや、感謝するのは変か。。。「明日は早く帰れるように頑張ります。」決意を述べたところで相手も困るな。。。「ちなみにオススメとかありますか。」いや、ないだろ。。。
考えがまとまらない。
やばい。もう袋を渡される。店員が声をかけようとする。
何か、咄嗟に!何か、何か返事をしないと!
一言添えよう。何でも良いから返事をすることだけを決めた。
すると店員が最後に声をかけた。
「Are you happy?」
「あっいえあ、いえあ」
私はまた気の抜けたような返事をした。いや、それしかできなかった。
それ以来、そのコンビニへは行けていない。
今も返事を考えている。
完
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