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かわいい子には旅をさせよ鑑定士【短編小説#13】

受付:「次の方どうぞ〜〜」

鑑定士:「はいはい、いらっしゃい〜。どちらを鑑定するのかな?」

子連れの母:「今日一緒に連れてきた、6歳になるこの子なんです。少し早い気がするのですが、早いに越したことはないと思いまして。いかがでしょうか。」

鑑定士:「ほほ〜〜これはかわいい子ですなぁ。僕名前はなんていうの?」

子供:「たかひろっていいます。」

鑑定士:「そうかいそうかい〜。お母さんのことは好きかい?」

子供(たかひろ):「はい、大好きです。」

鑑定士:「ん〜〜!素晴らしい。お母さん、この子にはまずは5時間で良いと思いますよ。まずは、5時間程、少し遠出のお使いをさせてみなさい。旅の処方箋を出しておきますね。」

子連れの母:「分かりました。昨晩旦那と話をしていて、何日間旅をさせたら良いかという話になり、適切な日にちが分かりませんでしたので、本日先生の所に連れてきました。先生、ありがとうございました。」

鑑定士:「いいえいいえ、お大事にね〜〜。」

受付:「はい、次の方どうぞ〜」

鑑定士:「いらっしゃい〜〜。どちらの方を鑑定すればいいですか?」

ある母:「今日は本人も連れてきたかったんですが、最近会話をするのも難しくて。それで私一人できました。写真はあります。」

鑑定士:「そうですか。お子様は男の子ですか?女の子ですか?」

ある母:「男の子です。今年で14歳になります。」

鑑定士:「写真を見せていただけますか?」

ある母:「こちらになります。」

鑑定士:「ふむふむ。なるほど。産まれた時は可愛かったが、最近悪さをしているせいか、目が釣り上がってきてますなぁ。」

ある母:「そうなんです。子供の時はすごく可愛らしい顔で、女の子みたいと言われた時もありました。」

鑑定士:「ええ、そうでしょう。最近のことで何か彼とのエピソードはありますか?」

ある母:「晩御飯の準備ができたので、呼んだのですが降りてこず。仕方ないので部屋まで行ったら、すごく怒られました。勝手に部屋に来てんじゃねーよって。」

鑑定士:「なるほど、、、、。それは困りましたね。分かりました。この年代になると皆んなあることです。心配しすぎないで大丈夫です。少し母親の有り難みを感じた方が良いでしょう。21日分の旅の処方箋を出しておきます。まぁ、3週間も旅をすれば、少しは自分と向き合う時間が作れるでしょう。」

ある母:「そうなってくれると嬉しいです。」

鑑定士:「いえいえ。3週間後にまた状況変わらないようでしたらお越しください。今度は長期間も検討してみましょう。それではお大事に〜」

ある母:「先生ありがとうございました。」



ーーー先生はどのような仕事をされているのですか?

鑑定士:「かわいい子には旅をさせよ」という諺があると思うのですが、どれくらいの期間、旅をさせたら良いのか悩むものです。そこで一人一人にあった期間を提案する鑑定士をしております。

ーーーどのように期間を決められるんですか?

鑑定士:それはもうそれぞれですね〜。だいたい6歳から20歳くらいまでの子を見ることが多いんですが、本人が来れば顔を見たり、話し方を聞くだけで大体分かります。

ーーー平均的にはどれくらい旅をさせますか?

鑑定士:それも人それぞれです。3時間の子もいれば、長くて半年の子もいます。ある時は3年間の子もいましたね。

ーーー3年間?それはどのような子だったのですか?

鑑定士:個人情報なのであまり言えませんが、随分とヤンチャをして、周囲を困らせている子でした。

ーーー3年旅をして、その子はどうなりましたか?

鑑定士:他言語習得して、今は翻訳家をしているそうです。「先生、ありがとうございました。」と挨拶に来てくれました。

ーーー最後に、旅について、何か一言お願いします。

鑑定士:旅というのは、本人だけでなく親にとっても価値のある時間かと思います。物騒な世の中になり、一人で旅をさせるのは怖いと親が過保護になるケースが増えましたが、逆に子供の成長を止めてしまう一面もあります。日常にある当たり前なものは、決して当たり前ではないことに気がつくために、旅というのは非常に効果的な機会だと私は思います。

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