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2人の異教徒【短編小説#20】

罰論を唱える二人の異教徒がいた。
自身の信仰こそ、最高の教えであると各自が豪語しており、
それに反すると罰が当たるぞと、互いに脅し合っていた。

そんな異教徒二人が、一人の頑固おやじを取り合った。
互いに自身の信仰する教えに帰依させようと、強情に教えを説いていたが、頑として、おやじは承諾しなかった。

「馬鹿馬鹿しい。俺は自分自身を強く信じている。そんな教えは必要ない。」

しかし、しつこく二人の異教徒が信仰を迫ってくるので、いよいよ親父は二人の異教徒に提案をした。

「じゃあ、どっちの宗教の力が強いのか、お互いに罵り合えばどうなんだ。」

異教徒は互いに心が引いたが、そこは引くに引けなかった。
引くことは即ち、自身の宗教の力を信じないことになるからである。

「何をびびってるんだ。俺はお前たちの宗教を同時に罵っても罰なんかあたりゃしねぇ。勝負してやるよ。」と豪語した。

そこまで言われて勝負しない者はいない。
二人の異教徒も心は引いていたが、腹を決めた。
異教徒は互いの信仰を罵り、親父は二つの信仰を同時に罵ることになった。

もうそれはそれは、文字にするのも嫌になるような言葉で、それぞれ罵り合った。よくもまぁこんなに汚い言葉が出るものだと感心しあう程に罵った。それぞれが罵しり疲れるまで、散々に罵り合った。

そして、翌日。

二人の異教徒は互いに腹を壊したり、熱を出したりして、体調を大いに崩した。
一方、頑固な親父はピンピンして、相変わらず元気に畑仕事をしていた。

体調を崩した異教徒について、親父は語った。

「全く馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。罪の意識があるから罰があたるんだ。俺は罵ったことに対してなんとも思っちゃいない。結局、病は気からなんだよ。」

親父は誰よりも、自分自身を強く信じていたのである。


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