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世界共通の国歌【短編小説#18】

世界共通の国歌を決めるプロジェクトが始動した。
が、議論は想定通り荒れに荒れた。

中国は自分たちが1番人口が多いのだから中国語の曲にせよと訴えた。一方で、インドはいずれ人口トップになるのだから、当初からインド音楽にすべきだと訴えた。

また、世界で1番歌われている「Happy birthday to you」の曲にしようとアメリカが提案したが、信憑性がないとロシアが即座に却下した。

著作権やお金など、各国の利害が関わらざるを得なかったため、簡単にはまとまらなかった。

議論は紛糾し、プロジェクトがいよいよ頓挫しようした時、最長老の音楽家が皆に突拍子もない提案をした。

「すべての国の国歌を同時再生した時に、そこから連想される曲、1番メロディーが近しいと思われる曲に決めよう」と。

提案した彼も馬鹿げていると思ったが、プロジェクトを頓挫させたくはなかった。彼以外の皆も馬鹿げていると思ったが、他に代替案がないため、仕方なく試してみることになった。

「それでは曲を流します。」


何も聞こえやしないと批判を述べていた人も、思わず姿勢を正した。

そして曲が流れ出すと、皆衝撃を受けたのだ。
聞こえるはずのない、ある曲のメロディーが、はっきり聞こえてきたのだ。

When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be

 And in my hour of darkness
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom
Let it be

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be

その場にいた誰もが、ビートルズの偉大さを再認識した。
2,100年のことである。

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