テレ東ドラマシナリオ
☆選んだテーマ☆
月がきれいですね
もしこの世界から すき の二文字が消えたら、私はあの人にこの思いを伝えられるのだろうか…
◯高3の冬。みんな進路も決まりかかってる頃。
本が大好きな詩織は学校の図書室で放課後に本を読んでいた。
詩織「…夏目漱石の「月がきれいですね。」ってセリフ素敵。言われてみたいなぁ。」
岳「何を言われてみたいって?」
詩織「!!」
慌てて本から顔をあげると同じクラスで幼なじみの岳が目の前にいた。
詩織「が…岳」
岳「何をそんな真剣に読んでるの?…夏目漱石の伝説みたいなやつ?」
詩織「う…うん。(慌てて)あっ私そろそろ行くねっ」
詩織は読んでいた本を慌てて閉じると図書室から逃げだした。
岳「あっ…詩織…」
岳は逃げていく詩織をしばらく見つめていた。
◯学校裏
詩織は心臓の高鳴りを抑えるようにつぶやく。
詩織「…びっくりしたぁ」
岳とは幼なじみ。家も近いから小学生の頃はよく一緒に帰ったりしていた。岳は明るくていつもみんなの人気者。だけど私はみんなに合わせてばかりいるその他大勢のうちの1人。
いつからだろう…。一緒に帰る事もなくなりよそよそしくなってしまったのは。
それに私は…
岳に幼なじみ以上の感情をもっている事に気付いたら普通に話す事もできなくなってしまったのだ。
◯次の日の朝(教室)
麻衣「おはよー詩織!」
詩織「あっ麻衣。おはよー」
麻衣「ねー聞いてよ。昨日さぁ…」
気が付けば岳をさがしてしまっている詩織。
岳は友達と笑って話をしていた。
岳は詩織の視線に気が付き詩織を見るが…
詩織は慌てて視線をそらす。
麻衣「詩織?聞いてる?」
詩織「あっごめんっ」
岳「…」
◯夕方の教室
授業が終わり、先生に呼ばれていておそくなってしまった詩織は帰り仕度をしていた。誰もいない教室。そこに詩織を待っていた岳が現れる。
岳「…詩織」
岳が詩織の机の前にいき、向かい合う形になった。
詩織「岳…?」
岳「詩織、オレの事嫌い?」
詩織「な…何で?!」
岳「だって、最近よくオレの事睨んでるだろ?」
詩織「に…にらんでなんか」
岳「じゃぁオレの事どう思ってんの?」
詩織「…っ(言葉が出てこない!)」
焦る詩織
詩織「分からない!!」
岳「…何だよそれ」
岳は詩織を壁際に追い詰めて目の前に顔を近付ける。
詩織「が…岳?」
岳「オレは…詩織が目の前にいるだけでドキドキする」
詩織「…え?」
岳「詩織は?」
詩織「私は…」
この気持ちを正直に言えたら…
詩織「…分からない。」
詩織は岳を振り払い教室から逃げてしまった。
◯次の日の夕方(学校)
詩織「ついてない…。今日も先生に呼ばれちゃうなんて。」
夕方、帰ろうと廊下を歩いていると…
岳「…あれ…詩織?今帰り?オレも部活今終わったとこなんだ。」
振り向くと岳がいた。
詩織「が…岳。そ…そうなんだ。お疲れ様。」
岳「…昨日はごめん。良かったら久しぶりに一緒に帰らないか?」
詩織「う…うん」
◯帰り道
細長い一本道を二人で歩いていく。
岳「日が暮れるのも早くなってきたなー」
詩織「…そうだね」
詩織は何を話していいか分からなくて口数が少なくなる。
岳「…」
暗くなり月が夜空に浮かび上がる
岳「…月がきれいだな」
詩織「…え?」
岳「…詩織なら分かるだろ?」
それって夏目漱石の…?
岳「…答えは?」
詩織「…月はずっときれいだったよ」
岳「…合格」
岳は嬉しそうに笑った。
そして大きな手をのばしてきて私の手を握った。
ずっと2つだった影が1つになった瞬間だった。
夏目漱石が英語教師をしていた時、生徒がI love youを「我君を愛す」と訳した。漱石はそれを「月が綺麗ですね」と訳したと言われている。
何個かある返事の中で私は「月はずっと綺麗でしたよ」を選んだ。
意味は…私はあなたの事をずっと前から好きでした…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?