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面ファスナーを使用したキーボードを設計した話


はじめに

面ファスナーを使用したキーボードとは、基板の裏面とケースの底面に面ファスナーを取り付け、それを貼り合わせるだけという、非常にシンプルかつ手軽なマウント方式を採用したものになります。
このアイデアは、X(旧Twitter)やDiscordで伺ったり、ネット検索を行ったりしましたが、同様の方法に関する情報が見つからなかったため、恐らく世界初のマウント方式です。

2024年12月23日 追記
嘘でした。面ファスナーを使用したキーボードをt-miyajimaさんが4年も前に作られていました。
正直、とても悔しいです(笑)、この悔しさをバネに、今度こそ世界初のマウント方式を考えます!

見た目は普通のキーボード
基板を裏返すと面ファスナーが現れます

面ファスナーとは

面ファスナーとは、2つの面を貼り合わせて固定する留め具の1種で、「フック」と「ループ」の2つの面から構成されていて、繰り返し使用できるのが特徴です。一般的には「マジックテープ」や「ベルクロ」という名称の方が馴染みがあるかもしれません。

接着の仕組み

フック側には小さな鉤状の突起が並び、ループ側は柔らかい糸でできた輪状の素材で構成されています。この2つを組み合わせることで、フックがループに絡みつき、しっかりと接着する仕組みです。ただし、メーカーごとに構造や設計に違いがあり、フックやループの形状にもさまざまなバリエーションが存在します。

名称の違い

面ファスナーは、一般的に「マジックテープ」や「ベルクロ」として知られていますが、これらの多くは商標名です。例えば、DAISOでは「ファスナーテープ」という名称で販売されるなど、さまざまな名前で展開されています。以下に代表的な名称をいくつかまとめました。

  • マジックテープ:株式会社クラレの商標

  • ベルクロ (Velcro):ベルクロ社の商標

  • クイックロン:YKK株式会社の商標

このように、メーカーによって異なる名称が使われています。

面ファスナーを採用した理由

すべてはこの投稿から始まりました。キーボードで使える素材を手芸屋さんで探していた際に、面ファスナーを見かけたのがきっかけです。その場では特にアイデアが浮かばず、そのまま帰宅しましたが、後に「基板を面ファスナーで固定する」という冗談のようなアイデアを思いつき、Xに投稿しました。
その後、「ネタとして作ってみるのも面白いかも」と思い立ち、過去に同じ固定方法を試した人がいるか調べてみたところ、どうやら世界初である可能性が高いことがわかりました。それならばと本気で取り組むことを決意し、11月28日に設計を開始し、12月13日に完成させていました。

面ファスナーマウントのメリット・デメリット

少し前置きが長くなりましたが、面ファスナーをキーボードに使用した際のメリットとデメリットは下記になります。

メリット

  • コストがかからない

  • 高い入手性

  • ケース設計が楽

  • ケース発注が楽

  • 硬い打鍵感(好みによる)

  • 基板とケースの脱着が容易

デメリット

  • 内部の美観が非常に悪い

  • 若干の厚みが出る

  • 硬い打鍵感(好みによる)

  • 基板を外す時にバリバリ音がする

面ファスナーマウントの最大の利点は、その手軽さにあります。ねじ穴やガスケットマウントのような複雑な設計が不要で、単純に弁当箱のような形状を作るだけで済むため、非常に簡単で効率的です。しかし、意外なことに打鍵感は硬めです。

面ファスナーといえば柔らかい「ふかふか」した印象を持つ人も多く、それがクッションの役割を果たし、柔らかい打鍵感になると想像されがちですが、実際には硬めの感触となります。そのため、柔らかい打鍵感を求める方にはあまり適していません。

打鍵音はやや高めで、「コトコト」よりも「カタカタ」と「パチパチ」の中間のような音がします。音の特性はキースイッチによっても変わる可能性がありますが、この点も好みが分かれるポイントと言えます。

2024/12/23 追記
基板の部品を避けて、面ファスナーを基板の上面にだけ貼り付けてみたところ、打鍵感が柔らかくなり、打鍵音も「コトコト」と「カタカタ」の中間のような音に変化しました。この変化はとても興味深く、さらなる可能性を感じさせてくれます。引き続き、さまざまな工夫を試してみたいと思います。

面ファスナーマウントの作り方

  1. シールタイプの面ファスナーを用意する

  2. 基板の裏に面ファスナーを貼る

  3. ケースの底に面ファスナーを貼る

  4. 基板とケースを貼り合わせる

  5. 完成

ねじ穴やガスケットマウントの耳など、複雑な設計を考える必要はありません。シンプルな四角い箱を作れば、面ファスナーで基板を固定することができます。そのため、金属ケースを発注する際にも、細かい指示書を作成する手間が省けるかもしれません。ケースの内部構造を考える時間を、外観デザインに活かしましょう。

ただし、一点だけ注意が必要です。面ファスナーには、縫い付けタイプとシールタイプがあります。基板やケースに面ファスナーを糸で縫い付けるのは手間がかかるため、粘着シールタイプの面ファスナーを使用することを強くおすすめします。これにより、作業が格段に楽になります。

面ファスナーマウントの評価

個人的には、面ファスナーマウントを非常に気に入っています。設計が簡単でありながら、打鍵感や打鍵音が良好で、ケースの製作も容易という点で、素晴らしいマウント方式だと思います。

先日開催された自作キーボードのイベント「キー部9%忘年会」でこのマウント方式のキーボードを展示した際、多くの方々から感想をいただきましたが、予想以上に高評価をいただき、この面ファスナーマウントに対する自信がさらに高まりました。

面ファスナーマウントの感想

  • 手軽な割に打鍵感が良い

  • 硬い打鍵感が好きなので、これは私好きです

  • どこ押しても押し心地が変わらないですね

  • ケース作成が楽になるのは良いですね

  • ちょっと真似して作ってみたいと思ってます

  • 発想が面白い、これは思いつかなかった

打鍵感に関しては、ケース内部にクッション材を仕込んだり、面ファスナーを貼る位置を工夫したりするなど、貴重なアドバイスを頂くことができました。また、面ファスナーの種類自体によっても打鍵感が変わる可能性があるため、面ファスナーマウントはまだまだ改良や研究を重ねる価値があると思っています。今後の追求が楽しみです。

おわりに

面ファスナーマウントは意外と良いマウント方法なので、騙されたと思って1度試して頂きたいです。そして、「私はこんな工夫を取り入れてみました」など教えていただけると嬉しいなと思います。

この記事は面ファスナーマウントのTruenoで書きました。

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