Tinder芸人が生まれた日

「許せない」
多くの人が行き交う、夕方の街で私はそう呟いた。
同時に『「復讐」してやる』そうとも思った。

片田舎の自称進学校出身の私は、高校時代を棒に振った。少し無理をして入った学校では勉強についていくのが必死で、部活動の仲間と共に励まし合いながら生きていた。そんな私の高校生活、「恋愛」の「れ」の字もなかった。

それなりに勉強してそれなりの大学へ入った。
ただ3年のブランクがある私に、都会の恋愛強者たちが目の前へ立ちはだかった。
「ご飯だけはデートじゃないよ」
「男の子と2人で出かけるなんて普通だよ」
赤リップが似合う友人たちはくすりと笑いながら私にそう語りかける。
「私は置いて行かれている」そう気づいた時にはもう時すでに遅し。どうすれば「恋愛」ができるのか、私には分からなかった。

そんな私にも転機が訪れる。
当時流行っていたSNSで男の子と仲良くなった。
彼はまるで都会には似つかない角刈りで「何年経っても方言が抜けないんだよね」と微笑む男の子だった。正直失礼ながらタイプでは無かったけど、自分の身近に「男の子」という存在が出来たことがむず痒くて、なんだか照れ臭かった。

「きっと私のことが好きなんだ」少し期待もしながら、彼と連絡を続けた。
良い年齢をした男女が一緒に出かける、そんな自然発生的なことも起こり始めようとしていた。
「一緒にお出かけでもしようよ」
初めてのデート!何を着て、どこへ行こうか。
楽しみで楽しみで寝られませんでした。

しかし、その希望は諸共打ち砕かれることになります。「〇〇でいいよね?」「もう行こうよ」あまりの彼の強気な態度に少しずつ、違和感を感じました。そして…「脈無いんだ」。

そう気づいてしまった私は、「許せない」。
そう呟いた。

きっと私がかわいくないからだ。
きっと私が恋愛弱者だからだ。
きっと私が男の子との経験が少ないからだ。

『「復讐」してやる』
私の「復讐」が始まった。