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番外編 風が吹いている #文字でスケッチ
風が吹いてきた。
ゆらりゆらり。
間合いを図ろうとするが、気まぐれな風はもう止んでいる。
またか。今の時期の風は一定ではない。ぐるぐると回り、ふわふわと踊って、他を翻弄する。こちらの都合に合わせてはくれない。
移ろいやすい風を掴まえるのは難しい。
また、風が吹いた。
先ほどよりは強くしっかりとした風だ。
これに乗れるか。ゆらりゆらり。揺れながら、風向きを確かめる。透明な羽が左右に頼りなく振れる。朝日を跳ね返して光が飛び散る。
未だ駄目だ。未だ風向きは定まっていない。
風が吹くたび、何度もゆらりゆらりと揺れて、慎重に見定める。風向きとその強さ。風の意思。
感覚を研ぎ澄まし、ただそのときを待つ。
空気が大きく動く音がする。庭の木の葉擦れの音。地面の夏草が揺れた。
来る。この瞬間。これだ。これを掴まえろ。
ゆらゆらしていた羽がゆらり、大きく振れる。意を決したように、初めてぐいっと一回転する。
その自らの動きに励まされ、風車の羽はゆっくりと回り出す。次第に早く、早く、ぐるぐると回る。さっきまで止まっていたことが嘘のように。
回れ回れ。風はまだ吹いている。
風が止み、風車の回転はゆっくりになる。回るのをやめた羽がゆらゆら振れていたが、やがてぴたりと静止した。
風車はまた止まった。
でも、もう大丈夫。
風を掴まえる方法はわかった。
後はただ、次の風を待てばいい。
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お盆休み直前なのですが、ヤマダさんの楽しそうな企画を見て、ついつい書いてしまいました。
ヤマダさんの以前の企画、「#100文字の世界」も本当に楽しくて、厚かましくもたくさん投稿させていただきました。
楽しい企画をありがとうございました。
昔、子どもらが小さいときに作ったペットボトル風車、懐かしくて久しぶりに作って庭に立ててみました。
暇さえあれば観察して、風が吹いてゆらゆらと揺れ、回りそうで回れない、そんな様子を眺めては応援(?)してます。
あの、こんなのでよかった、のでしょうか。(少し心配です)