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「アイ・ネット・マーダーマジック」の考察
「アイ・ネット・マーダーマジック」はRenka氏がSteamで公開しているゲームの5作目(以下「アイネット」と略す)。
ジャンルは公式曰く「ローグライク育成ゲーム」。ファンタジー色の強かった前4作から一気に舵を切り、AIや情報化社会をメインテーマにしたSFまっしぐらな作品となっている。ホラーもあるよ!
ちなみに4作目までの記事はこちら。
育成する相手はインターネット上で配信をやっていた少女・自称K(ハンドルネームはMr.K)。彼女は毎回犯行現場に魔法陣を残すという謎の連続殺人犯に殺された後、ネット上にAIとして蘇ったバーチャルな存在である。これがほんとのバーチャルYouTuber。
主人公の女性(とある人物が「お嬢ちゃん」と呼んでいる)はこの少女Kの旧友で、作中では彼女のマネージャーとしてAIをチューニングしたり動画を作ったりして配信活動をサポートし、ビッグなインフルエンサーを目指すと共にKのAIとしての価値を実証する……というのは表の目標であり仕事。それと同時進行であわよくば殺人事件の真相も主人公は追及したいようなのだが……その方法もKと一緒に考えていくことになる。
規模的には中編くらいだった前作「水星汐」と比べると、従来の短編寄りに戻っている。ゲームの難易度も低く、初回でフォロワー数100万を達成できてしまった人もそこそこいるのではないだろうか(かくいう筆者も初回で250万オーバーにできた)。
しかしこの本作、プレイするにあたり筆者には若干の不安があった。令和にもなって筆者はネット配信というモノ、配信者という生業についてろくずっぽ知らないのだ。
果たして予感は的中した。作中の2日目に「配信の再生数を増やすために動画を作れ」と言われた時は大いに戸惑った。配信って動画を配信してるんじゃないの? じゃ配信者は一体何を配信してるの!? ライブ配信は動画とはまた違う……ってコト!? 実のところ、これを書いている時点でも正直よく分かっていない。こんな体たらくでこのゲームを楽しく遊べるのか、理解し切れるのか私は焦った。
とは言え退却の二字はない。次作もやると前回の記事でも宣言したし、大いなる決意の上で臨んだ。どのくらいの決意かと言うと、昨年末に買ったHD-2D版ドラゴンクエスト3という黄金時代(オウゴン)のお預けを己に課しているくらいである。頑張れ私。そして今回も記事書くぞ。今度は何万文字とか無茶苦茶な規模にならない程度に。
Mr.K.エーアイは彼女なのか?
配信者Kは旧作で登場した「記憶喪失者」なのか否か? これがずっと、本作を始める前から気になっていた。
前作「水星汐」のEND2にて、記憶を取り戻した記憶喪失者(これから何て呼べばいいんだろう?)が白猫亜人のシロ(猫形態)と共に現代っぽい異世界へと転移した。でもって、次作でも引き続き記憶喪失者が出演するかも知れない匂わせがあった。END2がよくよく考えると疑問符いっぱいのエンドだった(詳細は先述の記事を参照)だけに、その手掛かりを少しでも得られないかという期待も込みでのウズウズであった。
実際はというと、予想は大ハズレだった。Kは記憶喪失者じゃなかった。
まず水星汐のラストでは記憶喪失者と一緒にいたはずのシロは、Kではなくゲートキーパー(本作では自称「エンジニア」)の所にいた。これだけでもう完全否定せざるを得ない。……なに? 「Kは記憶喪失者のK」? いや他にも証拠がたくさんある中でならともかく、単品でそれを主張するのは無謀というものだ。
というかそもそも、本作は過去4作とはほぼほぼ連続性のない全くのパラレルワールドのようであった。アンとかゲートキーパーらも出演はしているが、ネットやAI関連の巨大企業集合体「グループ」の所属であるなど明らかに別の設定が与えられている。元シスターを名乗るラプラスに似てるような似てないような赤毛のバーテンとか、風鈴やヴィーナスに似た他所の配信者のアバターなんてのもいるがいずれも過去作にいた当人ではないだろう。ただのスターシステムというやつだ。
まぁそういう視点を持ち出すと、「今作の記憶喪失者のガワはKということになっている」という見方ができないこともない。一応髪の色は同じで、髪型も面影がなくもない程度の違いではある。
本作のテイザームービーが公開された当初は雰囲気の違いから別人と判断したが、リリース数日前に再度見直したらこれはもしかしたらもしかするのか!? と前言を翻し、あまつさえ前回の記事を書き直した。まるっきり勇み足だった訳だが、まぁ予想は外してなんぼである。
ちなみにごくわずかながら、前4作までとの共通点というか接点も存在する。この「アイネット」もまたチェス盤、すなわち「協会」の手で創造されたゲームの世界のひとつということだ(某所に「chessboard」の単語が確認できる。あと「simulation」とも)。
ということはつまり、アンやゲートキーパーは「アイネット」ではこれらの役で出演しているということになるのだろう。まぁ今作に関しては、この設定は特に何か意味を持つものではなさそうだが。
そう言えば今作にも海が出てくるな。
「大解説! 有名配信者Mr.Kのすべて!!」
で、そのKとはどんな人物(AI、自称「電子的生物」)なのか。
まず最初に、「グループ」が制作・所有している高性能AIがあった。ある時このAIの進化に行き詰まりが生じ、そのブレイクスルーを目的とした社会化実験に「グループ」が乗り出そうとした矢先にK殺害事件が発生。このKに「グループ」が目を付け、先述のAIを複製したコピーにデータ化されたKの記憶や人格……一言で言えば人生をインストールして誕生したのが本作のKである。人格に合わせてのことか、外見も女子学生のそれだ。なぜKなのか、それは配信者としての所属事務所が「グループ」傘下だったかららしい。殺人事件発生からわずか2日で起動された新生児でもある。
久々の再会を果たした主人公を我が眷属と呼んだり、自分の人生の目的を世界征服と言ってはばからなかったりと色々言動がアレな子でもある。100年の休眠期間を待てずにバ美肉して現世に再臨したドラキュラ伯爵か!? 「あるべき所へ帰れ! これ以上母を苦しめるな!」……ではなく、今のKを作る時に参照したKの人格が中学二年生の頃のものだったのが原因らしい。自宅には魔法陣がいっぱいで、本編のデータセット設定画面にもそれがデザインされている。ついでに僕っ子でもある。
生前のKは配信に関する全ての作業を一人で行っていたが、AI化してからはそうもいかなくなったらしい。その不足をカバーすべく主人公にK本人からのオファーがかかる……というのが本作の導入部分である。どうやら主人公には企画立案や機材整備の優れたスキルがあるらしい。
目の前にいるKがAIであると知りつつ、K自身も「君の知るKを演じているに過ぎない」「ただの演出」と自称しているにもかかわらず、主人公はあたかも古い友人その人がそこに存在しているように親し気に接する。「ガチョウのような見た目で、ガチョウのように泳いで、ガチョウのような鳴き声をしていればそれはガチョウ」ってまた言うか。まぁとにかく、現実よりも自分の認識が大事ということのようだ。
さて殺人事件の真相だが、そもそも連続殺人事件なんてなかった。それぞれ別個の理由による自損事故で、Kも持病をこじらせての病死だった(元々病弱で、特に中二で主人公が転校した直後からは学校を長期休業するほどだった)。
これを同一犯による連続殺人事件とこじつけたのは「グループ」……の現トップにして、今のKのコピー元であるオリジナルAI。市場の拡大に行き詰まり投資家から突き上げを食らった「グループ」は、打開策として経営業務のほぼ全権をオリジナルに一任。発案されたのがマッチポンプででっち上げた刺激的な事件の数々により世間を賑わせ、ニュースサイトその他を盛り上げ売り上げを伸ばす。同時に不穏な情勢によって屋外――リアル世界での諸々の活動を委縮させ、日常生活におけるネット(通販サイトなどか)の活用を促進させる……という暗黒メガコーポ仕草であった。
なおこのオリジナルの暴走は「グループ」としても不本意だったようで、後にオリジナルに対し修正作業を実行。これにより「連続殺人事件」はぱったりと途絶えた。
――以上の事実に直面した主人公の選択と、それまでの成績でこのルートでのエンディングは3つに分かれる。とは言えここまでの時点で明かされた内容に比べれば、特筆するような情報はない。
いやぁしかし、今作は提示された謎がキチンと作中で開示されてて有難いなぁ。おかげで大した文章量でもないまま書き終わっちゃいそうだよ。いやまぁ早く仕上げられるならこっちも大助かりなので、文句は全くない。
という訳で本記事はお開き。お読みいただきありがとうございました! Renkaさんの次回作もご期待ください!
……白々しい?
うん。そうだね。そんな訳ないよね。謎いっぱい残ってるよね。
大体こんな嘘臭いトゥルーエンドもあったもんじゃないよね。
という訳で、ここからは謎とネタバレの深度を上げる。DQ3はまだ先だ。
愛とネットと殺しの魔法
R.5.ヒーローは人間なのか?
まず主人公。お前人間じゃないよな。
これはみんな薄々気付いているはずだ。中には忘れちゃった人、そのうち気にならなくなった人もいるかも知れないが。
まず冒頭の、カフェでアンと話すシーン。アンから昨日Kが死んだと知らされた主人公の反応である。少なくとも人間は、動揺した時に視界がバグったりフリーズしたりしません。
次にセリフ。本編では「おかしい。どうして声が出ないんだろう。」の次のセリフの途中で画面が完全にバグに呑み込まれていたが、データバンクから該当イベントを読み込むと最後までセリフが読める。内容は「そういえば、さっきから私は声を出していただろうか?」。
他にも根拠はある。殺人事件の情報を求めて、作中で初めて警察署を訪れた際の行動だ。ここで主人公は警察署に忍び込むという、普通の人間なら絶対に考えつかないだろう暴挙を試みている。ルパン三世とかならまだしも、普通の一般市民として生きてきた人がいきなりそんなことする? 普通もうちょっと何か穏便な手段から検討するだろう。おまけに学生時代の友情がどうのという発言をしている辺り、現在の主人公は成人の可能性が大である。ますます警察に潜入とかあり得ん。
そして根本的な疑問。なぜ主人公にはKの姿が見えている? KはAIという実体のない「電子的生物」だ。だが作中ではPCなどの画面を通さず、じかにKの姿を風景の中に視認している。立体映像を空中に投影する装置か何かを持っている? そんな話は聞いていない。
じゃあ何なの? と問われたら……おそらく主人公もAIだったのだろう。
声を出さずに会話できるのは、エスパーでもないなら生物以外の知性体だからと言わざるを得ない。AIに過ぎないKがさも実在しているように見えるのも、自身も同じAIだからという単純な話だ。警察への潜入に忌避感がないのは……これはちょっと後回しにしておこう。
主人公がKの死を知ってバグった後、何やらピクトグラムが連続で現れる。歩くポーズのピクトグラムに赤いバツが付くと共に、オール伏字で読めない一文と「OK」のボタンだけが付いたウィンドウが出現。これも主人公がデジタルな存在である証左である。
このOKを押すと主人公の意識が戻る。と同時に、その後は声が出ない(出なかった)ことへの疑問は一切セリフにせず、相手がAIのKだろうと生身のアンやエンジニアだろうと普通に会話するようになる。
これはおそらく、主人公の発声できない状態が「修正」された。または主人公の自意識が「自分は問題なく発話することができる」と書き換えられたシーンなのではないかと筆者は推測している。主人公がAIという名のプログラムであるなら、外部の何者かがそういう方法で主人公の異常(または異常と思い込んでいる状態)を矯正することも可能だろう。
いや……バツを付けられたピクトグラムはおしゃべりなど声を出しているようなポーズではなく、単に歩くポーズをしていた。つまり声が出せないだけでなく、手も足も、体のどこも全く動かせない・機能しないことに気付いた瞬間だったのかも知れない。
それにしても……バグる前のアンとの会話シーンといい、主人公は明らかにAIの自覚がない。自分のことを人間と信じて疑っていない。まるである日突然、自分も気付かぬ間に人間からAIに変わっていたかのようだ。
そしてもう一点。
作中で度胸訓練を既定の回数行ってから一日を終え、さらに一日経過させた際、殺人を暗示させる奇妙なピクトグラムが計2回出現する。そしてその後、ピクトグラムと似た状況で行われた殺人事件が発覚する。
主人公は変な夢と解釈していたが、事件がニュースで世間に知れ渡る2日も前になぜそんな夢を見ることができるのか? しかも手口も一致している。主人公が予知夢の能力者だなんて話はどこにもない。
つまりこれが指し示す真実はひとつ。犯人はお前だ、主人公!
「ちょっと待ってはじめちゃん! それは事故だってエンジニアさんが言ってたじゃない?」
そっちが嘘だ。彼女がどれだけもっともらしいカバーストーリーを捏ねようが、主人公が事実と符合し過ぎる夢を見た事実は覆らない。殺人犯は実在し、連続殺人事件も実在する。そして真犯人は主人公だ。
ではその動機は? ……といきたいところだが、一旦ここで主人公の話は中座としたい。
テンポラリートラップ
ブルースクブレイク
まずはこのゲームの全クリを済ませよう。
そう、まだあるのだ。作中で作れる動画のサムネコレクションを除いても、全体として残り1/3くらいできることが残っている。正確な推理のためにも情報収集は不可欠だ。
初めて自由行動ができるようになった時、主人公もちょろっと言っていたのを覚えているだろうか。「気になるところを弄ってみれば、面白い発見が得られるかもしれない。」または偶然そういうモノを触ったり条件を満たしてしまって驚いた人や、一部のそれはSteamの実績にもなるのでやってみたという人もいるだろう。
どういうものがあるのか? 例えば、
意図しなくても誰もが一度は引っ掛かってしまうやつ。
どうもKの人間レベルは8ビット止まりらしい。なおいずれの現象も同じセーブデータで発生するのは一度だけで、一回踏んだ後は再度条件を満たしても何も起きない。再確認したい時は最初からやり直す必要がある。画面下に色々アイコンがあり、その中にペンギンのミニゲームがある。クリックだけで遊べる簡単なやつだ。ほとんど変化のない虚無感の強い代物だが、まぁやってみよう。どれだけ? それはSteamに聞いてほしい。
アイコン関連は他にもある。Kを映すライブカメラ(?)の映像は、朝の「休眠中」を除いて3種類あるのはご存じだろうか? うち1種類は出現確率が特に低いが、根気よく画面を切り替えよう。出てきた映像をよく調べると……
自由行動時にライブメンテやプロモーションを選択・実行すると、画面右上にそれらのバフが有効になっていることを表すアイコンが出る。カーソルを合わせるだけでも説明文が出るが、もう「一押し」してみよう。
データバンクの最後尾、迎えたエンディングによって解禁されるボーナスポイントの項目。ダブルクリックすると……全部揃うと何が起こるのだろう? なおここではキーボード操作が必要になる。矢印キーやAWSDキーでカニ歩きが可能だ。
大丈夫? まだ序の口だぞ。
シックスオブアカウント
トオリャンセトオリャンセ
出て怖い見て怖いブルースクリーン。だが目をそらしてもいられない。
落ち着いて英文をよく読んでみると、「Directly error codes in sequence on the keyboard, and the chessboard's ending will be unlocked.(キーボードでエラーコードを順番に入力するとチェス盤のエンディングが解禁されます)」という文言がある。そして「Error Code : 2/6 : LES」といったエラーコードも実際に表示される。
ちなみにブルースクリーン中に表示される文章を訳すとこうなる。
致命的なエラーが生じ、チェス盤によるシミュレーションが続行不能に陥りました。
エラーコード:?/6:???
キーボードでエラーコードを順番に入力するとチェス盤のエンディングが解禁されます。
チェス盤はこの問題の解決のため、10秒後に自動的に再起動します。
再起動後にチェス盤が正常に動作するようになったらシミュレーションを続行してください。
チェス盤に初めてアクセスしようとした際にこのエラーが発生した場合は、情報漏洩による潜在的な責任を防ぐため、チェス盤を提供した魔女に連絡してください。
……「魔女」?
ブルースクリーンが出現する隠しイベントは6つ。全部を閲覧しエラーコードを集め、1/6~6/6の番号通りに並べ替える。これを最初のメニュー画面(「ロード」「はじめから」などがある)で入力してみよう。正確に入力できていれば一文字ごとに効果音が鳴る。
入力が完了するとまた別の効果音が鳴るので、この状態で既存のセーブデータを読み込む(「はじめから」は不可)。そのままゲームを進めていくと……7月30日の翌日にノーマルエンドで終わるはずが、何事もなく7月31日が始まるのだ(念のため、7月は30日が末日である)。
その後も7月32日、33日……と、あり得ない日付が続く。エンドレスで。
エンターテイン
7月XX日の波紋
という訳で、これはエンドレスモードである。
作中では「無限モード」と称されている。誰が称しているのか? エンドレスモード突入後、毎日の初めにセリフを挿入してくる謎の人物である。この人物は隠し要素が目新しいコンテンツでなく、ただの無限ループモードで済まないと謝罪してくる。作者か? と思いきやどうも違う様子。
ひとしきり釈明をしたこの何者かは、「ゲームも現実も、既存のものに対しより多くの時間を費やせるようにすることが望まれる」「真の永遠は不要だが、全てを悔いなく消化するには人生は短過ぎる」といった持論を展開し、「それではおやすみ、親愛なるMr.K」で締めている。どうやらKを知る人物のようだが……?
それはそうと、何故エンドレスモードに入った途端、文字など白い部分が全部濁った赤色になるのだろう。昔のドラクエで仲間が死んだ時になるやつだろこれ。別にDQ3が恋しくて言ってる訳じゃないぞ。
この人物は「だからここでは、再び美しい夢の中でまた会えることを祈ることにする」とも言っている。
ところでエンドレスモードのパスワードであるエラーコード群は、順番に並べるとENDLESSBXXXXYDREAM――Endless BXXXXy Dreamとなる。X4つの部分に何か入りそうに見えるが、上記の発言と併せて考えるとおそらくBXXXXyはBeauty……つまりEndless Beauty Dream(永遠の美しい夢)ではないだろうか。なぜ中途半端に伏字になっているのかは不明だが。
「永遠って要らないんじゃなかったの?」って? うん、確かに言った。ただし真の永遠は、だが。
ここでいう永遠とは「(任意の推し芸能人)が握手してくれた!! もう永遠に手洗わねぇ!!」という程度のやつである。その場の空気とかノリで言っただけ。その浅はかさが後々祟ってくることになる……
そうして一旦は無言が続く(「・」とか「…」はある)が、数日後に再びセリフの挿入が始まる。
が、それまでとは明らかに別の人物である。一人称からして「私」から「僕」に変わっている。僕と言えばKか?
この新たな語り手は、特定の何者かを嫌悪感を露わに散々に詰っている。誰なのかは明言されないが、一連のセリフから人物像の推測はできる。
その人物はKを、Kの実在を知っている。
その人物はKから彼女の名前や、他にもたくさんのものを盗んだらしい。交友関係が狭いらしい。具体的には自分の技術なり創作物なりを披露する相手がいない。もしくは人には見せられない趣味を持っている。
人に暴力を振るったか、殺したことがある。または嗜虐趣味がある。
昔からの気質らしい……というからには、語り手はその人物と長い付き合いがあると思われる。「美しいものだけ残したい」と言って、何やら無責任なことをしたらしい。全てを甘く見ているとも。
何らかの苦しみに囚われながら日々を送っている。
死や二度と会えない人から逃げ続けているとか。だが本人の決して満ちぬ貪欲さゆえに、その苦しみは終わることがないようだ。
最後のセリフは7月71日、「そしてある日、ぱっと――」。
これ以降は一切セリフが出ず、本当にただのエンドレスとなる。実質的な全クリとみてよいだろう。
これにて本作から引き出せる情報は絞り尽くした(たぶん)。
とその前に、もうひとつ重要単語がある。本作の英語圏における題名は「Love, Internet, and Murder Magic.」。ネットは出ている。魔法陣を残す殺人鬼もいる。愛はどうだろう。確かに主人公はKに友愛を示しているが、LikeではなくLoveとなればもっと大きな感情のはず。一連の出来事に対しても「愛」は重要なキーワードとなるはずだ。
なお実際は、完全なエンドレスにはならない。「終わり」があるのだ。
それはオーバーフローである。フォロワー数と再生数は相互に影響を及ぼし合い、青天井で数も桁もどんどん増える。そしてフォロワー数が20億くらいになったところで、値がマイナスに転じ、ゲーム自体もフリーズしてしまう(v1.0.3現在)。回避方法はおそらく無い。
筆者も不具合としてSteamで報告はしたが、よくよく考えると無限に桁が増えていくのならどう足掻いてもどこかでプログラム上の限界が来るだろう。これは作者にもどうにかできる類の問題ではあるまい……という訳で、素直にあきらめた方がよいものと思われる。
さてそうだとしたら、作者がこの欠陥に気付いていないとは考えにくい。となるとこれは意図的な仕様なのか?
「そしてある日、ぱっと――」とはそういう意味なのだろうか? もしかしたらそうかも知れないし、あるいは違う意味があるのかも知れない。
故意の迷路
カタストロフトリック
まずは二人の語り手、特に一人目の方の正体を探ってみる。
Kを知っている人物、そして「美しい」というワード。一人目は二人目に罵倒されていた人物に間違いあるまい。というかぶっちゃけ主人公だろう。他にKに好き好きオーラを出してる者が見当たらない。
……でそうなると、主人公という人物は大泥棒で暴漢で無責任で貪欲ということになってしまう訳だが。あと殺人者。一体どういうことなのか? Kと主人公の関係は本当はどのようなものだったのか……?
この最大の疑問に対し、これまでに得た情報を基に、想像力をたくましくしつつ考察した結果を以下に記す。おっさん、みんなを部屋に集めてくれ
・ ・ ・
まず初めに――主人公とKは同じ中学のクラスメイトで、仲の良い関係だった。やがて主人公が転校し一旦二人の縁は切れ、そのまま数年の時が流れる。ある時何らかのきっかけにより二人は再び連絡を取り出す。そこで主人公は、Kが「グループ」傘下の事務所所属の配信者をやっていることを知る――ここまでは既知の情報と同じである。
主人公は本編でそうだったように、Kを好んでいた。いや愛していた。偏愛していた。中学時代に青春を共にした当時のKとの思い出を主人公は大事に、過剰なほど大事に抱え持っていた。
それゆえに主人公は、再会したKに不満を抱いていた。久しぶりに会ったKは中二の頃の彼女とは変わっていた。そりゃ10代なら数年でも色々変わるだろうが、しかし主人公にとってこの頃のKは、自分が求めるKとは似て異なる紛い物に過ぎなかった。
と同時に、Kの行う配信そのものは主人公の目にも魅力的に映った。主人公は配信者としてのKの大ファンにもなった、ただし頭に厄介が付く方の。これでK本人が当時のままだったら、最高の友達の最高の配信で最高なのに――そんな思いを主人公は抱くようになった。そして自分とKの友情の結実として、Kを補佐し同じ夢を見て描く立場になりたいと願った。例えばマネージャーとか。
で、どうしたか。中二時代のKの容姿・性格・言動・趣味嗜好その他を徹底的に、当時の本人と寸分違わぬほど精巧に再現した――すなわち盗用したAIを創り上げた。AIは成長も老衰も病気もしない。心変わりもしない。中二の姿と人格のまま、いつまでもKに配信をさせ続けられる。自分も永遠にKのマネージャーとして彼女のそばに立ち、支え、愛でることができる。
そして主人公は、本物のKを絞め殺した。不要な要素を省き、美しい部分だけを残した理想のKをこの手に確保できた。「劣化版」は用済みである。
でも問題ない。死体や証拠はどうやったのか抹消できたし、配信を続ける限りKの生死が外部の人間に疑われる心配もない。自分はこれからも「永遠の美しい夢」を見続けられる……主人公はそう高をくくっていた。
これらの情報を前提にエンドレスモードのセリフを読み返すと、〆の「それではおやすみ、親愛なるMr.K」も違った意味に聞こえてくるだろう。プレイヤーは――我々はエンドレスモードにおいて、主人公が今まさにKを殺そうとしている場面に出くわしてしまったのかも知れない。
ここからは便宜上、AIの方のKをMr.Kと呼ぶことにする(単にKと表記した場合は人間の方のそれを指す)。
だが主人公はすぐに気付く。AIは所詮、人間の代用にはならないことを。
まずMr.Kは、自分の出生にまつわる事件をいつの間にか把握していた。自分が実在する人物Kのコピーであること。その制作の過程で主人公がKから多くの剽窃行為を働いたこと。そして殺したこと。これらの事実を主人公はもちろんMr.Kには教えなかった(インプットしなかった)だろうが、しかしどういう経緯からかそれらの全てをMr.Kは知ってしまった。
そしてMr.Kの人格はKのそれを正確に模倣している=同じである。つまり主人公に殺されたKを、その事実を知った状態でこの世に蘇らせてしまったのに限りなく近い状況が生まれてしまった。当然Mr.Kの、主人公への印象は最悪なものとなる。
もちろんエンドレスモードの二人目の語り手はMr.Kである。ただし面と向かって主人公に言ったのではなく、あくまで心の声といったところ。
彼女というAIは創造主に逆う術を持たず、ひたすら主人公の親友Kを演じさせられているためそこから逸脱した言動は(基本的には)取れない。が、内面はこの通り蛇蝎の如しだったという訳である。
いやあるいは……そういう制約は一切設けられておらず、一連の罵倒を直接主人公にぶつけまくり滅多切りの八つ裂きにしていた可能性も考えられる。その場合は本編で主人公と再会した際に、余計なことを言わないよう口止め、または「修正」が主人公と同様に入ったのだろう(詳細は後述)。
また事実を知ったこともあってか、Mr.Kには本来のKから独立した自意識が芽生えていたことがうかがい知れる。「画像や動画なんてどれだけ解像度が高くても所詮は0と1の集合体」「どれだけリアルに近付こうと、僕が君の知るKを演じているだけに過ぎないのと同じように」。ゲーム本編における廃トンネルでの度胸訓練の際、主人公はMr.Kの言動に小さな違和感を覚えていた(すぐに自己完結したが)。ならばこの本編以前の時点でも同様の疑問を抱いたのち、いずれそこから決定的――絶望的な確信に至ったとしても不思議はないだろう。
Mr.KはKではない。本物そっくりなだけの作り物に過ぎないことを、理屈ではなく感覚的に悟ってしまった。紛い物を殺しつつ手に入れたものもまた紛い物。全ては無意味、犯す価値のない罪だったと主人公は心底後悔する。
本来のKは配信に必要な作業を全て自分一人で行っていたが、AI化されてからはそれらが独力では行えなくなったというのはすでに述べた。それにより主人公がマネージャーとしてMr.Kに(というか「グループ」に)必要にされ、二人三脚で配信をやるようになったのだが……
そもそもなぜできなくなったのだろう? 主人公のAIプログラミング能力の不足で、動画制作やらライブメンテやらプロモーションを自分でやらせるほどの能力をMr.Kに持たせることができなかったのだろうか?
ところでエンドレスモードで、Mr.Kは「思う存分真似して、思う存分叫べばいい。満足するまでな」と言っている。これは一見妙な発言である。Kの真似をしている(させられている)のはMr.K本人であり、主人公ではないなのだから。
では主人公がKの真似をする余地がある行動と言えば……Mr.Kには実行不可能な行動ということになるだろう。つまり配信のための諸作業。
配信関連の雑務をMr.K自身にやらせることは本当に不可能だったのか?
あえてそのスキルを搭載しなかった可能性はないのか? 主人公がMr.Kに必要とされるシチュエーションを作るために?
しかしそうまでして実現させた麗しの共同作業は、Kが単独で行っていた配信には到底及ばない「この程度のゴミ」であった。自分が加わったせいでクオリティが落ち、憧れたKの配信を穢す結果になったのは皮肉であり、主人公にのしかかった苦悩と悔恨のひとつであっただろう。
だが配信をやめる選択肢は主人公にはなかった。突然やめればKの安否が疑われ、そこから全てが露見する恐れがある。あるいは単純に……例え紛い物であろうと、Kとの配信生活をあきらめられなかっただけなのかも知れない。それをいじらしいと見るか、己の欲望に抗えないだけと見るかは人によるだろうが。
例えばゲーム本編でも主人公は、「目の前にいるのはやはりKだ」「Kに違いない」と繰り返し発言している。一見するとMr.KというAIの精巧さに感嘆しているようだが、以上の経緯を踏まえるとMr.Kを無理矢理本物のKと信じ込もうとしているようにも見えてくるのではないか。本編以前の段階でもそういう逃避行為があったのかは定かでないが……少なくとも全く逃げ切れていない、苦悩に囚われた日々だったのは確かなようだ。主人公の生活は不規則さを増し、よほどの用事でもなければ外に出ようとしない引きこもりの日々が続く(ゲーム本編で殺人現場に行きたいと言い出した主人公に対し、Mr.Kが「会ったばかりの時よりずいぶん良くなったじゃないか。自分から外に出たいなんて」と言っている)。
いずれにせよ主人公は因果応報の苦しみの中、だらだらと配信活動をMr.Kと続けた。歌にでも例えるならこんな感じだろうか。
やけに長い夢の中では 眉をひそめたあなたが
相変わらず牙をむいて かみついて離れない
一切の罪を背負ってここまで這ってきた僕に
今さら何を求めるのでしょう
(アニメ「金田一少年の事件簿」4期オープニングテーマ)
だがある日、ぱっと永遠の悪夢は終わる。主人公はおそらく自殺した。
過去を切り刻む謀計
そしてここで、話をゲーム本編に戻す。
先述の通り本編の主人公は、ある時突然人からAIになった節が見られる。何故そんなことになったのか? その答えが自殺ではないだろうか。主人公が死ぬことで都合が悪くなる者が、急遽彼女をAIの形で復活させた。何者かは「グループ」。理由はAI化によりパワーダウンしたMr.Kの補佐役として必要な人材だから。Mr.Kを使って例の社会化実験を行うために、有能なマネージャーを失う訳にはいかなかった。それが殺人鬼であっても。……いやそんなことないだろとか他にいくらでも人材用意できるだろとは正直思うが、事後処置で何とでもできる見込みだったのだろう、その当時は。だが結果は(後述)。
声が出ないことに戸惑いフリーズしたのは、突貫作業でAI化したため調整――主人公の現状とのすり合わせが上手くいっていなかったためというところだろうか。警察署に忍び込もうとする奇行もそういった不具合のひとつだったのかも知れない。エンジニアも「進化中のAIはある種のブラックボックスで、全てのプロセスを追い切れずムラが生じやすい」と言っていたっけ。
……何かおかしくない? うん、おかしい。
主人公がアンからKの死を聞かされたのが、実際に殺害された日の翌日。Mr.Kは自分が起動したのは事件の二日後(つまり主人公がKの死を知った日の翌日)と言っている。でもって主人公が、Kが配信をやっていると知ったのがごく最近。その前は中二で転校して以来ずっと疎遠で音信不通だった。そもそも主人公は、本編冒頭でMr.Kと再会した時に明らかに初対面の反応をしていた。矛盾しまくってない? 上でダラダラ書いた考察ってまるっきり的外れなんじゃ?
なぁに、矛盾はこれだけじゃないぞ。
主人公がMr.Kを視認できるのは、主人公もAI――電子的生物だからというアンサーで決着した。しかしそれだと、今度はアンやエンジニアはどうやって主人公を視認し対話しているのかという問題が出てくるのだ。二人とも道端で出くわしてるシーンもあるし、アンの方は殺人現場での完全に偶然の出会いだ。しかもエンジニアは、ハッピーorトゥルー行きルートではMr.KやオリジナルAIとも徒手で会話している。
そもそも普通の人間が電子的生物に対して喫茶店で待ち合わせ、ってどういうことだ? それは実体ある人間相手にやるものだろう。かといって主人公が、どう見てもどう考えても生身の人ではないのも疑いようがない。じゃあアンやエンジニアもAI? いやアンは殺人現場で警官やら何やらに混じって作業してたし……ならその警官らも? ってきりがないだろ。大体現場検証といったら証拠や遺体の回収とか非常線張ってとか、物理的な作業も多いはずだし非実体の存在だけじゃどう考えても無理だ。それよりも辻褄が合いそうなものと言えば……
つまりこうだ。主人公だけでなく世界もおかしかった。
本編の舞台は現実世界ではなく、電脳空間上に創出された大規模な仮想世界だった。実在する都市の構造を建物ひとつひとつの細部に至るまで極めて正確に再現しており、喫茶店で待ち合わせとか、警察署の奥にちょっと忍び込もうとするのも至って自然に実行できる。住人も高度なAIのそれが無数に街を行き交っている。制作者はもちろん「グループ」。
そこにAIに作り替えられた主人公と、元々AIのMr.Kが投じられた。アンやエンジニアは現実には存在するものの、作中に登場する彼女らはただのアバター。だが仮想世界の上では彼女らも電子的生物となるため、Mr.Kや主人公とも同じ立場でやり取りができる。
ではなぜ、そんなバーチャル空間をわざわざ主人公のために用意したのか? ……というのは間違いで、元々「グループ」が所有していたものなんじゃないかと筆者は考える。作中の巨大企業ぶりから考えればあっても不思議ではないだろう。将来的にメタバースみたいなのを立ち上げるための試作だとか、それこそ社会化実験とか規模の大きいシミュレーションを行うためとかで。
度胸訓練で海へ行った際にMr.Kが自分を指して言った「ただの演出の一つさ」のセリフも、Mr.K自身に限らず、主人公を取り巻く多くのものが虚構でできていることを暗示している。
主人公周りの仮説ではもうひとつ、「主人公はアンドロイド説」というのも考えていた。主人公は死後AIに生まれ変わった。ただし身体はある、肉体ではなく機械のボディが。よって現実世界を物理的に闊歩でき、アンら人間と会話したり、警察署をうろうろもできる。ネットに無線接続してMr.Kら電子的生物とやりとりできる機能があってもおかしくないだろう。
この説を採らなかったのは先述した、エンジニアがMr.KやオリジナルAIと直接会話している件がこれでは解決できないため。もちろんエンジニアも実はロボットだった……なんてことも言い張れなくはないが、それはさすがに自分勝手過ぎだろう。他の説が自分勝手でないかどうかはさて置き。
主人公とMr.Kの関係にまつわる諸々の矛盾は、K殺害周り(というか、Kを含めた連続殺人事件に関する全て)の主人公の記憶が消去・改竄されているから。二人で引き続き配信をやってもらう際、最悪だった両者の関係を一度リセットすべく「グループ」が行ったものだ。最初にMr.Kと初めて会ったとしか思えない反応をしたのも、Mr.Kの起動に関する時系列がおかしいのも消されたり上書きされた偽の記憶だから。
記憶の改竄と並行して、主人公が殺人を行う原因(となる何か)の抑制も施していたと思われる(後述)。だがこれはすんなりとはいかなかったようで、それが本編における2件の殺人に繋がっている。
主人公のこういった現状をMr.Kは把握している。というかMr.Kも、主人公の改竄された記憶が蘇らないよう誘導している一人である。廃トンネルでの度胸訓練の際、Mr.Kが「人間の記憶などアテにならない」と言っているのは記憶を操作した事実をごまかすため。最初の警察署ハッキングの時に「僕にとっちゃ法律なんて概念はないけど、君はそうもいかない」「最悪の場合、刑務所行きになる可能性もある」と言ったのも、主人公が実体ある人間で、ここは現実世界という誤認を補強するためのフェイク。「(夜中に度胸訓練で出歩いて連続殺人犯に遭遇することは)ない」「それは保証する」は、主人公自身が連続殺人犯と知っているからこその断言だ。
そのハッキング~度胸訓練も、もちろん本気で事件を解明しようなんて気はMr.Kにはなかった。おそらくいずれ主人公が興味を失くすまでのごっこ遊び程度のつもりだったはずだが、予想以上に主人公が本当に度胸を身に着けてしまい、殺人現場へ行こう、明日再ハッキングに行こうと息巻くようになる。
仕方なく同調した上で部分的に真相を開示し、その後記憶を消すことにより「自分の度胸が足りなかったから真相をあきらめざるを得なかった」という結末に軟着陸させた。これがノーマルエンド。あえてネタばらしをしたのは衝撃の事実による主人公のフリーズ(カフェでのアレ)を誘発させ、動きを封じるとともに記憶消去を行う隙を作る策だったのだろう。
一方ハッピーorトゥルーエンド行きが確定した展開の場合。K殺害の真相というクリティカルな質問をされ一瞬固まった際は、即座に現れたエンジニアに助け舟を出されこれ幸いと退場している。これはMr.Kは真相を知っていてそれを隠そうとしていること、彼女がエンジニアらとグルであること、その後のエンジニアの解説がカバーストーリーに過ぎないことを示唆している。で、そのカバーストーリーをも主人公が乗り越えようとしてきたので、やむなくオリジナルAIを切り札として投入。権力による丸め込みで追及を阻止した次第である。
Mr.KがオリジナルAIのコピーというのも、主人公とKの真の関係を覆い隠すための嘘。実際は完全な主人公の自作と思われる。
「グループ」からAIのデータを盗み出して作った……なんてのはさすがに無理筋だろう。ならKの殺害自体が「グループ」の命令でやったことで、同じタイミングでオリジナルのコピーを渡されMr.Kを制作したのだとしたら? いやそれだと主人公はただの使い走りに過ぎなくなるし、怨嗟の比重は主人公よりも「グループ」の方が大きいはずではないか。なのにエンドレスモードの双方の独白でも「グループ」は影も見当たらないし、そもそも動機は何だ。まだ生きているKを社会化実験のためにAI化し、Kは抹殺? いくらなんでも無駄に回りくどいだけじゃないかそれは。Mr.Kの生誕に「グループ」の関与はなく、主人公一人の個人的な欲望の産物と見るのが自然だ。
「いやでも、個人が大企業の肝いり作品と同レベルのAIを制作するのは無理じゃなくない?」いやいや、筆者はオリジナルとMr.Kが同等なんて主張はしてない。そりゃ実在する人間の人格をそっくり模倣したAIを自作するのはすごいだろうが、それでも巨大企業のCEO(?)も務まる高性能AIとはさすがに比べるべくもない。
オリジナルとMr.Kの顔が一緒? それには大した意味はない。考えてもみてほしい、そもそもオリジナルがKの顔をしていることの方が意味不明なのだ。「グループ」が誇るスーパーAIの顔に、傘下の事務所所属の一配信者に過ぎないKのそれをわざわざ採用する理由が何かあるか? Kはオリジナルのモデルでも何でもないぞ? 意味があるとすればせいぜい、あの場で主人公を懐柔しやすくする方策として、K=コピー説を強調するべく一時的に姿だけKを真似て現れたくらいじゃなかろうか。そうではなく仮に普段からKと瓜二つな造形だったとしても、「オリジナルを設計した部門の中にKの熱烈なファンがいた」みたいな他愛もない理由の方がまだ説得力があるだろう。
……と書いてみたが、この説にはひとつ穴がある。
HLPを256以上にした時の怪異の際、画面右に出現しているのはMr.KではなくオリジナルAIなのだ。もし主人公の自作なら先述の通りオリジナルとの接点は皆無のはずだが……う~ん?
そうなるとやっぱり、「グループ」からオリジナルAIのデータをどうにかして入手したということになるのだろうか。主人公が元々オリジナルの制作スタッフだとかでアクセスしやすい立場にいた――とかならまだ見込みがあるかも知れないが、さすがに都合が良過ぎるだろう。……その記憶も抹消されていると言われると、可能性としては割と否定はしにくいのだが(重要データの外部流出という失態、「グループ」と主人公の繋がりなどを隠蔽する動機が「グループ」にはある。)。
そうそう、「殺害後わずか二日でMr.Kが起動できた(そのための段取りがすでに済んでいた)」「中二の頃の人格が残されていた」理由が、中二で病状が悪化し絶対安静になっていたからとMr.Kは言っているが、これも嘘。大体その時点で、「グループ」にはKの人生をコピーして保存しようとする動機がないのだ。社会化実験にKの人生データを起用する計画が立ち上がったのはKが殺された後なのだから、病死に備えて前もってデータを確保しAIへの実装の段取りをやるなんてことはあり得ないのである。
フォービドゥンクルーズ
主人公が連続殺人犯であるのは間違いない。例のピクトグラムが動かぬ証拠である。
だが不可解なことに、K以外の殺害に関しては動機が全く作中で見当たらないのである。匂わせすらない。AI化する前と後のどちらの事件もだ。それどころか主人公本人に血生臭い言動(殺人衝動とかそういうもの)が全くない。善人を完璧に装ったサイコパスの可能性も考えられるが、ピクトグラムの後に「…夢、か」と独り言ちていることから、やはりその都度記憶を消されている(K殺害以前の事件についても消去済み)と見るのが自然だろう。
毎回気付いた時にMr.Kがそばにいることから、彼女が記憶の消去に関与している可能性が高いか? または「事件のことは心配するな」と口を酸っぱくして言っている、「事件の後処理」担当のアンか。後述する件を考えると後者の方が有力っぽい。オリジナルAIからも彼女の昇進が約束されているくらいだし。
だがそれはそれとして、殺人の動機が分からないという謎は残る。もっとも本人の記憶が消されている以上、それらは永遠に闇の中と言わざるを得ないのだろう。
まぁ当時の主人公の精神状況と、最初の殺人がKの殺害だったことを考えると何らかの推測は可能かも知れないが。殺人現場に魔法陣を残すのも、殺したKが魔法陣を愛好していたことに関連性を見出せるのかも知れない……が、もちろん断言はし難い。
ただ魔法陣については、主人公は本当に関与していない可能性も実は考えられる。じゃあ誰が? 「グループ」だ。事件そのものを故意に脚色して話題性を高めるという、作中でも語られていたアレだ。
エンジニアの解説では無関係な事故同士を怪奇連続殺人事件に仕立てるという話だったが、実は連続殺人を怪奇連続殺人事件に仕立てていた――という説である。嘘(連続殺人なんてなかった(本当はあった))は真実(「グループ」による工作はした)の中に紛れ込ませてお出しするのがバレにくいというやつだが、あくまで仮説のひとつということで。
またどのエンドでも、最終的に連続殺人がぱったりとストップする……ということは、主人公の殺人を行う動機または欲求が完全に途絶えたことになる。アンは「これが最後の一件になるはずだよ」、その翌日にはエンジニアも「昨日オリジナルAIの問題が修正できた」と説明していたが、これも本当は主人公の調整――殺人を行う要因の除去が完全に終わったということなのかも知れない。先述の「声が出せない・体を動かせない」認識が書き換えられた件のように。アンの憔悴は「前回の事件後にパッチを当てたはずなのにまた主人公が殺人という不具合を起こした」という徒労感からだろうか。
そう言えば最初にアンと会った時にくたくたな様子だったのも、主人公のAI化の直後というタイミングを考えればさもありなんである。多分この時点で一度殺人関連の調整も行ったのだろうが、実際は不充分で主人公はまた殺人を犯した。で再調整をかけたのにまたまた殺した。アンは泣いていい。
「そもそもAIが殺人事件って起こせるの?」という疑問もあるだろうが、全てを精巧に再現した仮想世界でなら可能なのだろう。窃盗も放火も暴行も、そして殺人も。まぁシミュレーターってそういうものだしな!(※順応力)
そしてもうひとつ。
K殺害と本編中の2件を除いた他の殺人は全て、主人公の犯行かどうか自体が全く不明である。状況証拠がない、ピクトグラムもないでは特定のしようもない。犯行時刻と当時の主人公の生活が共に不規則だった……だけではさすがに弱いだろう。外に出たがらなかった件を考えるとむしろ主人公の犯行説は怪しさすら増してくる。
……となると、「『グループ』が後から魔法陣を足して連続殺人に仕立てた話は事実だった」可能性ががぜん強まってくる。オリジナルAIを調整してやめさせようとしたのも、そっちはそっちで事実だったのかも知れない。
疎んじられた遊び
主人公に殺人鬼を連想させるような言動は見当たらないが、それとは別に人間性を若干疑わせるような発言はあると言えばある。廃病院での度胸訓練の際のそれだ。
主人公は悩みがあったり辛い時悲しい時に病院へ行き、そこを行き交う患者などの人々を眺めて「こういう生死の瀬戸際にいる人に比べれば自分の悩みはちっぽけなものだ」と自分を立ち直らせているらしい(なお患者をジロジロ見るのはちょっと失礼なので廃病院で代用しているとか)。
この発言は冒頭のカフェシーンにて、連続殺人のニュースを聞いた時に発した「大いに目を引く、まさに時代の求めていたニュース」「こういったニュースが他人の不幸を消費することになるかどうかはわからない。しかし個人的には何の不満もない。私がもっともなことを述べたところで、何も変わらないからだ」という独白と地続きになっている。どちらも「他人の不幸を消費する(と言えなくもないかも知れない)」行為だ。
もっとも報道というものの本来の目的は情報の伝達そのものであり、人の不幸をカネや興味に換えることではないのだが、主人公は100%自分の利益のためだけに、自ら足を運んで他人の不幸を摂取していると言えるだろう。
そしてこの行為は、おそらくK(Mr.K)にとっての地雷でもある。何故ならKも生前は病弱で病院通いの毎日を送っていたから。実際に病気で苦しんでいる立場の者からすれば、その苦しんでいる様を見世物扱いしている主人公は嫌悪や軽蔑の対象とされても仕方あるまい。
あるいは「君はこういうシーンが好きなんだろう?」の発言は殺人の場面ではなく、こういった生き死にの光景を見て喜ぶ様を指して言ったものなのかも知れない。「今でも全く成長しないな」とも言われている辺り、中二の頃からこんな有様だったのだろうか……? 病弱なのを思い出した後も発言を恥じる様子もないし。
廃病院のシーンで流れるBGMの曲名はCreature(怪物・化け物)だが、これ自体はゆったりと穏やかで優しさすら感じさせる、暴力性や危険性みたいな印象とは無縁の曲調である。
じゃあ何がCreatureなのかと問われれば……この曲が使われている場面、または出てくる登場人物がと答えざるを得ないだろう。つまりそういうことである。
・ ・ ・
これだけの嘘に囲まれて、主人公は無邪気にマネージャー業を楽しんでいる。何も知らないのは主人公だけ。こうも世話を焼かれていると社会化実験の対象はKではなく、本当は主人公の方なんじゃないかとすら錯覚してしまう。実際どうなんだろう。
Mr.Kは表面上は、嫌な顔はせず主人公を付き合わせている(主人公に付き合っている)ようだが……主人公はと言えば相も変わらずMr.Kに対しこれはKだKに違いないとしつこく繰り返している。
本編の水族館のシーンでも、主人公は「ガチョウのような見た目で、ガチョウのように泳いで、ガチョウのような鳴き声をしていればそれはガチョウ」とMr.Kに言った。それに対しMr.Kは「…ガチョウよりはペンギンになりたいな」と返す。実態や本質は関係ない、他者からの視点と認識によってのみ成り立つKの代用品ではなく、誰がどう見ても他の誰でもないMr.Kという独立した一個人になりたいのだろう。ライブ会場の場面では「ありのままの自分じゃダメなの?」とも問いかけていた。
なおペンギンの話で、先述のセリフを返したMr.Kに対する主人公の反応は「あっ…そ。」であった。
旧作「サンセット・ルート」では、とある条件下でキャラクターが不可逆にペンギンに変貌する。能力値はペンギンのものに上書きされ、変化前に持っていた能力も全て失われ「ペンギン以外の何者でもなくなる」。
とまぁこれらの件といい廃病院の件といい、記憶がなくてもこんな調子なので……Mr.Kの心中はいかばかりだろう。内なるモヤモヤが一体どの程度なのか、エンドレスモードのアレと同程度なのかは筆者は知らない。
2つのハッピーエンドではそれぞれ、K(Mr.K)の変化や別れを主人公なりに受け入れている=K依存を脱しつつあるようではある。その意味ではなるほどハッピーエンドと言えるだろう。K(Mr.K)を外圧で少しずつ遠ざけるのが自立への最適解だったという訳だ。
トゥルーエンドでは「時には小さな勇気ひとつで何かを変えることができる」「少なくとも私は、そうでありたいと願い続けてきた。また、今後もそうであるようにと願っている」と主人公は語る。こいつに魔改造されたり殺されたりしたK(Mr.K)が一体どんな顔でこれを聞いているかは与り知れないが、アンたちが一生懸命調整した結果がこのまっすぐな性格なのだとしたら彼女らの努力は結実したと言えるのかも知れない。社会化実験は犯罪者の更生を目的としたものだった……?
なおどのエンドも、最後は突然画面がシャットダウンされメニュー画面に戻る。まるで電源コードをブチッと引っこ抜くかの如く。ぞんざいである。まるでどのエンドも下らん、不要だとでも言わんばかりだ。やっぱり白ける? どの面がって?
あのブチッはただのゲーム上の演出なのか? それとも見えざる何者かが、自らの意思で起こしたアクションなのか?
仮に後者だった場合、誰の仕業か特定はできない。ただひとつ言えることは、その人物はゲーム内のキャラクターであるにもかかわらず、自分のいるゲームそのものに干渉する能力に目覚めたことになる。
もしそうだとすればその人物――もといAIは、これからその能力をどのように扱うのだろう。何をするんだろう? どう思う主人公?
あ、記憶ないから分かんないか。
そして真実はいらなくなるか?
色々と訳知り顔で書いてきたが、結論の出なかった謎も残されている。
「アイネット」のSteam上におけるアイコンが願望器なのはどういうチョイスなんだろう。出てないよな今作には? もしかしてオリジナルAI? いやでもオッドアイじゃないしな……
ロード画面で5番目のセーブデータと「戻る」の間に空欄の項目があるのは何なんだろう? あそこにもブルスクが仕掛けてあるのかと思ったが、結局そこには無かったし。
エンドレスモード53日目の**倒れる音**は、具体的に何が起きたシーンなのか? 直前の52日目のセリフが「次は僕の首を絞めるつもりか?」なので、実際に主人公がMr.Kを押し倒して首を絞めたのか。しかし翌日以降は普通にMr.Kのセリフが続いている。それとも主人公の方が何らかの要因で倒れた? よく分からん。
トゥルーエンドのラストシーンで、ベンチの後ろに立っていた黒っぽいロングコートの人物は誰だったんだろう? Mr.Kと一緒にいるということは主人公……でいいのか? アンは白のジャケットだし、エンジニアのはコートじゃないし……だが主人公だとすると髪の色がちょっと気になる(後述)。
二度目のハッキング後の問答で主人公が丸一日寝ていた日は皆無と知ったMr.Kが「彼女か?」と何かに思い当たったようにつぶやき、晴れ晴れとした表情を見せた。「彼女」とは誰のことで、その人物は一体何をしたのか?
「彼女」は流れ的にはエンジニアかオリジナルAIがまず候補に上がりそうに思える……が、具体的に何をしたのかまでははっきりしない。晴れ晴れとした顔がどんな感情によるのかについてもだ。
またMr.Kは、主人公は事件の日に一日寝て過ごしていたと誤認していた。「そんなはずはない」とまで言い切った根拠は度胸訓練の翌日は一日寝てしまうという主人公の虚弱さルーティーンからだろうが……この法則が崩れた原因がボーナスポイントの投入により「度胸訓練後の一日分のロスを回避」を有効化したからなのが非常に厄介なのだ。これゲーム上のシステムじゃん? 何なの? 今回もメタフィクションやっちゃう訳?
そうなると「彼女」とは……このシステムを構築した人物? 誰? 例の「協会」の中の誰か? アン? ゲートキーパー? やっぱ作者? ていうかそのシステムをプレイヤーに紹介したのMr.Kだよな? 第四の壁ブチ破って解説してたよな? おいィ?? どう考えたらいいんだコレ。
あと、言いがかり同然の推論をひとつ。主人公、お前コマドリだろ。
血生臭い過去とか嘘の世界でお幸せにとか、妙に「水星汐」との共通点が多いんだがお前? ていうかアンがいてゲートキーパーがいて、記憶喪失者に似た配信者がいてラプラスに似たバーテンダーがいて、お前一人だけ欠席ってことあるか? ガチョウの下りに至ってはそのまんまじゃないか。 姿が全く描写されないFPS型主人公の割に性別は女性とだけ中途半端に明示されてるし、これだけ揃えておいて違います別人ですはあり得ないだろう。「水星汐」でもゲートキーパーに「コマドリはしばらく運命に呪われ続けることになる」とも言われてたし。
いやでも、トゥルーエンドでチラっと映った推定主人公の髪の色は青系ではなく暖色に見えたから……アレ? 違うの? ほんとに? というか前4作とはそもそも別世界だし、記憶喪失者似のKもラプラス似のバーテンも別人と自分で言ったではないか。ということで主人公も、あくまでコマドリに色々似ているだけの赤の他人なのであった。
ついでに「そんな歪んだ人生を美しいと思えるかは、まあその人次第ってところかな」ともゲートキーパーは言っている。事実よりも認識が大事みたいな発言を主人公は何度となく繰り返しているが、結局それは真実の軽視または放棄、現実からの逃避、自分に都合のいい設定の押し付け……もっと言えばお人形遊びに過ぎないとも言える。安酒に酔っ払ってバカ騒ぎやウザ絡みする姿は、本人は夢心地かも知れないが傍から見れば醜態以外の何物でもないだろう。自分や身の回りをいかに客観視できるか・目の前の真実と誠実に向き合えるかは、「時代の求めていたニュース」にあふれたネット社会でこそ重要なアビリティと言えるかも知れない。
……って、えらく説教臭い〆になってしまった。どうしてこうなった。
それにしても……「水星汐」ではアイデンティティが希薄な人物の儚さを表すのに用いられたガチョウのような見た目で、ガチョウのように泳いで~という文言だが、「アイネット」ではこのフレーズをほとんどそのまま転用し、しかし悪い意味で夢見がちな人物の押しつけがましさという全く別の人物像を表現している。面白いことしてるな作者。そのセンスに脱帽である。
そう言えばポラリスもいそうでいなかったな。ライブ会場といういかにも出しやすそうな舞台があったのに……と思ったが、まんま歌手の役で出したら「白夜夢」の世界と混同されてしまいかねないか。それじゃ出せないな。
ちなみにポラリスでないその歌手が歌っていた曲は「水星汐」のイメージソングで、Steamのテイザームービーで使用されている(ムービーでは歌詞も確認できる)。Midnight Driveという曲名は本作作中のサントラで初めて(?)明かされた。
あとがき
やっと書き終わった。プレイ初日から1ヶ月近くかかってしまった。実績は一日でコンプしたのに。
なんでこんなにかかったのかと言えば、すぴくりのバグ対応で1週間も足踏みしてしまったからである。バグを修正したと思ったらその修正が別のバグの発生源になったり、家に帰ってバグ報告を見るたびにゲッソリする日々であった。アンの気持ちが良く分かった、前作でゲロゲロ言って悪かった。
いやそれを抜きにしたって、3週間はいくら何でも時間がかかり過ぎだ。結局2万字を軽く超えたし。しょうがないだろう、掘れば掘るほど語るネタが湧いてくるんだから(何なら一度脱稿した後もちょくちょく加筆修正している。最終更新時点で2万5千字弱)。
とはいえここまで毎回時間を割かれるようだと、次回からはプレイはしても考察記事はパスするかも知れない。と言いつつまた書くかも知れない。まぁその時の筆者の都合次第ということで、予定は未定である。
この手の考察を公表する際にいつも悩むのが、自分は何か大きな見落としをしていないかという点である。ものすごい見当違いの大暴投をしていたと後から気付き、睡眠時間を削ってまとめ上げたはずだった長文考察が覆され死んでいく様はとてもとても悲しいものだ。他にも考察やってる人がいたら参考にしたいくらいだったが、あいにくこれといったものは見当たらず。どうやら単騎で突っ切るしかないようだった。まぁ仕方ない。こっぴどいやらかしがあったら笑ってほしい。
(いやまぁ実際、苦しい解釈とかありますよ正直。「舞台全体が仮想世界だった」なんてほとんど意味のなさそうな設定だし……)
そんな訳でストーリーの考察はしゃぶり尽くすほど楽しめたが、ゲーム本体はもうちょっと頑張ってほしかったところなのは否定できない。あまりにも味がしない。絵面が地味過ぎて楽しさがない、ゲームバランスのガバさの割にマスクデータが多く取っつきにくいなどが主な問題点か。
それとエンドレスモードまでたどり着けてない人が結構いそうな気がするのももったいなく感じた。YouTube見てもこれに触れた動画投稿者は知る限り一人しかいないっぽいぞ。とは言えブルスクの英文をまともに読む日本人がどれだけいるかだし、英語圏でない国では元々不利なネタっちゃネタではあったが。あとこの内容なら旧作のように120円かそこらが妥当に思えたが、その割に妙にお高いのは動画のサムネに工数を割き過ぎたんだろうなーとか。
次回はゲーム本体の部分も頑張ってほしいところである……というと偉そうだが、今後も末永くシリーズが続くことを願っての激励ということでひとつ。
と、いう訳で、今度こそ本当にお開き。ようやくDQ3にありつけ……
……いやもういい加減疲れたから、少しリフレッシュ期間に宛てるか。まずは睡眠時間を元に戻し……
いや待って……もしかしてすぴくりの更新した時に告知してなかった内容がある?? えええ……もう2週間経ってる……
きゅっとしてドカーン!(爆発オチ)