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今更ながら人類滅亡後の小世界をPinocchiaたちと歩いた話・6機目

続・第五階層:士官居住区
「最強のアンドロイドと最凶の敵性機械」

 駄弁り散らかしただけで1ページ使ってしまった。今度こそ第五階層の攻略に移る。

 とその前に、まだ第四階層から来たばかりなので一晩寝なければならぬ。就寝前にマーズとヴィーナスを修復カプセルに入れて、少しでも破損を直すことも忘れない。起きたら二人を回収する。
 速攻型のウラヌスだが、彼女は実戦でレベル10まで上げていくことにする。2日も戦えば多分達するだろう。ムーンはまだレベル10でないし、今ある即時育成キットは最後の1機に残しておく。
 会議室の隣の開かずの間も気になるが……拠点の中は一通り探し尽くしたはずだし、今後手掛かりが見つかることを願うしかない。ここまでに何か取りこぼしがあったということはない……はず。

 しかし……と疑問がよぎる。第四階層は攻略的には、大した波乱もなく余裕で突破することができた。ヴィーナスの守護+があればレーザー砲くらいしか怖いものもないし、その上で修復カプセルが2個に強化外骨格ときた。これもう過剰戦力では? もうゲームの峠は越えちゃってたりして?? それとも……これだけの援助が要るほどの激戦が待っているというのか?


 残り16日。
 グワーッ強敵! 初戦でいきなり痛い目に遭った。
 いやあの丸いやつ、あいつも自爆するのかよ! しかも全体攻撃? それもう実質レーザー砲じゃないか。ノーモーションでレーザー撃つやつがこの世にいていいと思ってるの? 相方の二本足のデカブツも、なに守護+したヴィーナスに35もダメージ与えてんの? 防御力無視なの? わけがわからないよ。やたら頑丈だし赤熱刃+にも余裕でHP半分近く残して耐えるし。
 うん。甘かった。終盤で楽ができる訳がなかった。というか第四階層を楽に抜けさせておいて、油断したところに精鋭をぶつけてくるとは味な真似をしてくれる。勝手に慢心しただけ? はいそうですそうですとも。

 メガネ女医が貯蔵してくれた応急修理キットを早速無駄遣いし、自爆のダメージを修理。今度はもう少し慎重に戦いたい。
 丸い浮遊機雷は手榴弾1発で軽く沈む。問題は二本足兵器だ。2機来られると閃光手榴弾で1ターン稼いでも1機も倒し切れない。次のターンで手榴弾も投げて……も、ノーダメージとはまずいかない。要は無傷で勝つのは期待薄という訳だ。まぁ終盤だしそういうものか。序盤もそんな感じだった。

 進んでいくと部屋を発見。第四階層と同じ趣向だ。固定砲台もいる。サクッと赤熱刃+で二枚におろすと、室内では情報とカードキーが手に入った。早速当たりか? これ絶対、会議室の隣部屋のアレ関連だろ。
 で情報の方だが。ある母子の母が死に……「死」という表現は適切じゃない? ははーんそうか、この母ってアンドロイドか。子供の方は少なくとも男、青年だろうか。彼に言わせればその辺にいる敵性機械はウスノロらしい。一戦しただけでビビリ倒した私を遠回しにDisってるのだろうか。いやさすがに被害妄想か。敵がというより「母さん」の方がよっぽど強かったということらしいのだが。一体どれほど高性能だったのか? 「息子」もなかなかの手練れらしい、生身の人間だというのに。
 なんでもその「母さん」が世界中探し回って見つけた生存者が、この息子の実の両親だけ(息子を生んですぐ死亡)……って、シェルターの外にも出たのか母さん? 核狂乱は今どうなってるんだろう。

 それで部屋ということは、またあちこちの部屋に情報がたくさんあるのだろう。確認したらまだ10以上未見情報が残っている。情報以外のモノも何か出てくるといいが。
 と言いつつ進んでいくと25歩目で固定戦闘勃発。何奴? ……って、出てきたのは二本足兵器が2機散々既出だ。もう何度も戦って苦労させられてきた敵を、今更ボスでございとお出ししてくるのは新手の煽りか何かか? いや別に腹を立てている訳ではないのだが、素で真意を測りかねたのは正直な感想として書いておくことにする。アレだ、多脚戦車に対する二脚戦車というか弟分みたいなデザインだし、多脚戦車同様に定点防御も任されてるポジションなんだろうきっと。知らんけど。

 そんなこんなで50歩目。直前で予告もあったがついに出た。死神だ。
 第一印象は「ハイウィンドさんですか?」。いや違うか、武器が剣だし。冗談はさておきこいつは主人公の娘の仇、そして例の「息子」さえ恐れさせる強敵だ。心してかからねアバーッ! 5回攻撃グワーッ!
 何が起きたか。「百花繚乱」なる必殺技だ。これはどうも斥力装置が張る全体シールド以来の、主人公すら出し抜く超先制攻撃だ。おかげで守護+も閃光手榴弾も間に合わない……間に合ったらあったでヴィーナスが一瞬で大破してただろうが。何しろ剣なので一撃一撃がやたらと重い。ウラヌスだけは死神にも先制できるようで、命中率-25%のおかげで何発かは外れたがもちろんこの程度では当てにならない。ならば……ならば? どうすればいい?まさか完全運ゲーではあるまいが。
 まぁいい、全部耐え切ってしまえばこっちのもんよ。ここからは我らのターンなんで2ターン目も百花繚乱なんですか? まさかこいつはこれしかやらんのか? どうにか全員生き残った……本当に運が良かっただけだ。こうなったらもう作戦も何もなく殴り切るのみ。大破させれば命中率-25%も込みでほぼ完封だ。

 勝つには勝ったが……ドロップが……ドロップが貧弱……! ケーブルとアクチュエータとモーター……だけ……? ジャンクコアとかないの? 経験値も多脚戦車の半分以下ときたもんだ。お前なんでボス名乗ってんの? いや名乗った覚えなどないのは百も承知だが。
 そんなことよりパーティーがもうボロボロだ。主人公は首の皮一枚で繋がってるが、言い換えれば首が9割切断されてる状態だ。前衛も後衛も少なからず被弾した。さてどうする。って帰るしかないだろう、普通は
 ここで何をトチ狂ったか、私はそのまま前進する決断を下してしまった。判断の理由は今思い返してもよく分からない。長時間のプレイで疲れていたのか、死神の猛攻で脳が焼かれたか? 中途半端にまだ戦える状態だったのも判断ミスの原因かも知れない。なんだかんだ言ってヴィーナスさえ無事なら自爆以外は安泰だし、マーズの赤熱刃は必中だから中破も大破も関係ない。ジュピターやウラヌスら他の戦闘要員も主人公以外は中破止まりだ。こう書き出すと明らかにもう帰れと言いたくなる有様だが、その時の私は突き進んでしまった。これが戦場の狂気というやつか。

 無謀で無能な指揮官の下、パーティーはさらに進む。
 情報も集まっていく……のだが、あまり密度の濃い内容のものは見当たらない。後の教主らしき人物が寄生体に魅入られていく様子とか、上層部がどこかへ逃亡するとかしないとかというふわっとした噂とか。あと例の「息子」の、母亡き後の日々の生活の様子とか。彼は人類の復興には興味を持たず(そもそも「母」からは何も聞かされていなかった様子)、敵性機械と戦いながら自炊したり昔の映画を見たりして過ごしていたらしい。「当時の観客にっては周知されていた暗黙の何か(原文ママ)」は示唆を感じさせるセリフだが、さてこれを何に当てはめたものか……?
 そして80歩目で再登場した多脚戦車を撃破し、HP1のマーズを見てふとわたしはしょうきにもどった。ここからどうする気だ私? 今帰って補給カプセルにマーズを入れても、修理キットが機能するくらい回復するまでに3日はかかるぞ? 他にも中破が大勢いる。身動きが取れないではないかこれじゃ。
 ……誘惑が首をもたげる。リセットして対死神前からやり直すか? いや日数もまだ充分あると思われるのに、そんなヘタレな真似をするか。いやでも第六階層から先がないという保証もないし、パーティーを立て直すだけでリアル時間をだいぶ食いそうだし……アツマールが終わる前に遊びたいゲームは他にもある(「カリスは影差す迷宮で」もだ)し……いやでも……

 一旦クイックセーブしてその日のプレイを終え、寝ながら悶々と考える。そして決めた。
 リセットはせず、結果を受け止めこのまま続行する。大した理由はない。強いて言うとしたら、ここでリセットするのはなんかすごく負けな気がしたのだ。序盤の右も左も分からないうちならいざ知らず、ここまでゲームを理解して順調に進んできた上で大ポカをやらかしたんなら受け入れるべきではないか。巻き返しなら充分できる。この「人類滅亡後のPinocchia」はそのくらい人を本気にさせるほどのものだったのだ。

 そう決めたら後は清々しいもので、一切の迷いも憂いもなく翌日を迎える。一日のあれこれを終えゲームを起動……ん? あれ? オイ、何で……データが16日目起床時まで巻き戻ってる……
 
困惑する私。セーブデータの不具合などでないとしたら、昨日勢いで以前のデータで上書きしちゃったのをすっかり忘れていたのだろう。何というどっちらけ……Akasataはヘタレゲーマーです……。………。


 二度目の残り16日。
 まぁもう、戻してしまったものは仕方ない。心に十字架を背負ってこの状態から続行する。拠点を出発。
 情報も集め直しである。その中に前回も入手したカードキーと……待望の「万能型」アンドロイドの設計図を発見! 間違いなく最後の1機だ。どれど、れ……おいコア2個必要って何だ。他の素材も鉄200の銅200の……カーボン100の……? いやそれより、コアをどうやって2個も工面するんだ。昨日の行程でもジャンクコアは1個も出てこなかったのにどうしろと?
 そうこうしつつ死神と再対戦。相変わらず攻略法を用意できてないので、蛮族のようにひたすら襲って倒すほかない。あそうだ、守護ができないならヴィーナスは前衛に出す必要ないな。代わりに後衛で育ててたウラヌスを前に出しウワーッ! ウラヌスが連続被弾死! どうやら百花繚乱は完全なランダムターゲットではなく、普段通り前衛がより高頻度で狙われるらしい。はいリセット。もうプライドもへったくれもない。誉は浜で死にました。
 再戦の結果、マーズとヴィーナスを大破させられつつも勝利する。皆まで言うな。今度はちゃんと帰るぞ。

 拠点に帰還。まずマーズとヴィーナスを補給カプセルに入れ、他の面子も応急修理キットで回復。ジャンクの解体と物資の補充……の前に、開かずの間に進入してみる。カードキーで開くはずだ。開いた。
 何だこの部屋。黒焦げなのかゴミ捨て場なのか? 中央にある屍は……「息子」のものだ。例の自爆ニワトリの卵の爆発が致命傷になったらしい。TKG? トカゲ? 検索したら卵かけご飯のことらしい。そんなもんのために死んだのか……まぁ「息子」は人類復興みたいなヒロイックな人生目標とは縁のなかった人物であって、これは彼なりの淡々とした日常を送り続けていた中での言わば事故死。端から見ればしょぼい最期も、らしいと言えばらしいのかも知れない。

 奥には「母さん」役を務め続けてきたアンドロイド――万能型の残骸と、彼女の遺した記録があった。「母」は人類の再生を託され……って、これもしかして主人公の娘を看取ったアンドロイドか? 時系列的にもそんな感じではなかろうか(生き残りがほぼゼロ)。
 「母」は親を亡くした男児と女児をシェルター内で発見・保護し、自分が親代わりになって育てた。その二人が成長して産んだ子が「息子」だったのだが、直後に二人とも敵性機械に殺され人類は「息子」一人となる(あと主人公)。これにより「母」の人類再生計画は頓挫した訳だが、それでも一縷の望みを胸に「息子」を育ててきたらしい。
 いやはや、万能型ってそういう「万能」型なのか。家事もできる。育児もできる。お産の補助もできる。「交配」に関する教育も男女二人に行ったのだろう。人類の再繫栄という目的の下彼らに行為を促したのは「母」だそうだし、他に人間がいないとなればどうすればいいか分からん訳で。戦闘以外のことにも幅広く対応可能なアンドロイドは万能型だけ……いや汎用型もそうか。精通の度合いは全然違うだろうが。そりゃコアも2個使う訳だ。
 その万能型の残骸を回収する。女医の死体は安置で「母」は分解炉行きは不平等と罵られるかも知れないが、今は戦力が必要なのだ。甦り再び戦ってほしい。というかコア足りないので下さい。ゲーム攻略の都合を置いてまでRPはしてられないのだ。まだ1個足りないけど。


 残り15日。
 補給カプセルでマーズとヴィーナスを回復させるも、共にまだまだ万全には遠い。応急修理キットの無駄食いを避けるべく、ここは栄養剤を使うことにした。2機をカプセルに入れたまま一旦探索に向かい、即Uターンして帰還。これだけでもうちょっと2機が回復する。これで修理キットでもそこそこ回復するHPになるので満タンまで戻し、主人公は栄養剤を飲んで2回目の探索(本探索)に臨む。
 「いやこんな回りくどくやらなくても、普通に数日休めばよくない?」という意見もあろうかと思う。この手法を採った理由は簡単で、単に栄養剤を試しに使ってみたかったからだ。ほっとくと全く使わないままクリアしそうな気がしたので。

 という訳で本日二度目の(実質一度目の)探索。コア出てこーい、二脚戦車めんどくせー言いながら部屋を探し回る。情報は全て揃ったが、万能型の設計図以外は全部文書だけのようだ。
 そして部屋の中で見つけた残骸から、ジャンクコアが手に入った。ありがたい。終盤だけにタダで拾えたりもするようだ。これで2個だ! 待ちきれないのでとっとと帰って万能型を造る。

『万能型アンドロイド』
 製造コストを度外視し、コアを2個など贅沢な素材を投じて造られた最強のアンドロイド。太刀による斬撃の威力は攻撃型をも凌ぐ上、敵の隙を突いたスキル「二の太刀」による追撃を確率で繰り出す。耐久面も防衛型に並ぶほどだが、近接攻撃タイプゆえか手番は遅くなりがち。なお廃棄した場合、基本的にはコアは2個とも戻ってくる(機能停止した場合は1個のみ)。

 戦闘関連に留まらない非常に広範な情報と技能が搭載されている、まさに万能型と呼ぶに相応しい性能を持つのは先述の通り。容姿や口調は汎用型に似ているが、こちらは明確に大人の体形で言動も自信に満ちあふれている。それは主人公の娘の成長した姿か、あるいは妻の生き写しか。

 うむ、お礼画像で見たあのアンドロイドだ。確かにスペック的には完全無欠だが、攻撃型と違って赤熱刃は使えないし、防御型のように味方をかばうこともできない。結局は強いだけのプレーンな歩兵に過ぎず、他のアンドロの役割を食ったりすることはない。良バランスと言えよう。
 名前は太陽系最遠の惑星、海王星のネプチューンとする。丁度全部使い切った、ヨシ! え? 地球? ないよ。いや当初の予想ではアンドロは全7種類で、月と水金火木土で6種類、最後を地球に宛てるつもりだったのだ。それが8種類だったせいでこれだ。まぁいい、地球は滅亡してるから無いということにしようそうしよう。
 で、誰かをパーティーから外さねばならない。当然ムーンなのだが……ここまで来といて分解炉もあるまい、補給カプセルに安置しよう。全部終わったら回収しに来る体で。


 残り14日。
 今日は最終調整の日とする。まずネプチューンに即時育成キットを使い、さらに実戦でレベル10にする。……なった。二の太刀が+に進化し、抜刀術が全て隙を生じぬ二段構えになった(毎ターン必ず二回攻撃)。これはシンプルに素晴らしい。一撃目で倒し切った相手に追撃するのをやめてくれたらなおいいのだが……と思いつつ探索を続行。
 歩いて歩いて60歩くらいで、いきなり死神と再び出くわす。野良でも出ることは「息子」の日記で知ってはいた。だがふざけんな。こんな強いばっかりでドロップがその辺の雑魚にも満たないダイエット食みたいな奴と、誰が戦ってやるものか。迷わず煙幕手榴弾で逃げる、もとい戦闘を拒否する。
 その後多脚戦車と再遭遇、破壊したところでウラヌスもレベル10に。先手必勝に+が付き、命中率-25%に加え鈍足――つまり行動順を強制的に最後にするデバフも付与できるようになった。鈍足の方は確率発動で確実性に欠けるようだが、確率はそう悪くない様子。これで手番が回る前に倒し切れれば御の字という能力な訳だが……二脚戦車は1ターンかけても殴り切れないからなぁ。まぁあって損はなかろうが。

 で、80歩まで来てしまったらさらに先を見てみたくなる……第六階層はどんななんだろう。入ったらすぐラスボスか何かなのか、それとも最後のベースキャンプがあるのか。気になる。99歩でクイックセーブしていざ偵察。
 第六階層突入。一目で分かった、これラスボス前の地形だ。部屋の入口でもはっきり「覚悟」を聞かれた。了解。退却する……できる? できた。ここだけ例外で、第五階層まで徒歩で帰れるようだ。

 次回はいよいよ第六階層、最終決戦に臨む。結末やいかに!

~以下、反省会~

・当時は手も足も出なかった死神だが、ウラヌスの先手必勝+による鈍足が効けば付け入る隙が生まれる。手番が遅れれば閃光手榴弾が間に合い、百花繚乱を完封できるのだ。要はレベル10以上の速攻型を用意せよということだが……即時育成キットはウラヌスに使うのが正解だった? ムーンも潔く解体し、出てきた方の育成キットをネプチューンに与えるべきだったか……?


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