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料理が上達した夫

夫はあまり料理をしない人だった。

一緒に暮らし始めたときは、私の方が料理が得意というのもあって、基本的には私が料理をし、夫が手伝ってくれるという構図だ。
そんな関係に、何かしらの居心地の悪さがあったのか、はたまた手伝わないと私の機嫌が悪くなるのかはわからないが、少しずつ作ってくれるようになった。

最初は、ネットに転がっているレシピを見ながら作っても、失敗することが多かった気がする。失敗の理由は大抵決まっていて、野菜を均等な大きさに切らない、とか、事前にレシピを読んで頭に入れておかないので作業をすっ飛ばす、とか、大事な工程を自分の判断で省く、とか。誰もが経験したことのある失敗だと思う。

均等な大きさに切らないと、固い野菜と柔らかい野菜が出来上がってしまい食べたときに違和感を感じたり、肉は焼きすぎて固くなってしまったものと中が赤いものが混ざってしまうとか、味の染み込み具合がバラバラになってしまったりする。ただ均等に素材を切るだけで、料理の仕上がりは格段にアップする。
調味料も、『大さじ1』と書かれていても、料理ができる人はみんな目分量で入れたりしているから、いちいち計らなくてもいいだろうと思い目分量で入れてみる。大抵は入れすぎてしまって、しょっぱくなってもう後に戻れない。料理は足せるけど、足したものを後から引けない。塩味が足りなければ、食べるときに足せばいいのに、しょっぱかったらご飯と食べるしかないのだ。
そんなこと、料理を始めたばかりの人は知らないのだ。「料理ができる」人は、始めたばかりの頃に、きっと同じ失敗をたくさんしてきたと思う。


一緒に暮らし始めて、もうすぐ1年が経つ。今は二人とも家で仕事をするので、基本的には3食共にし、ほとんどが自炊だ。私が仕事であたふたしているときは、夫はサッとお昼ごはんを作ってくれたりする。それも、全部美味しい。

昨日は、YouTubeで美味しそうなレシピを見つけたからといって、揚げ物を作ってくれた。梅のほのかな酸味と大葉の香りがたまらない鶏むね肉の揚げ焼きで、ビールがどんどん進んでしまうほど美味しかった。

そんな夫に、どうして料理が上手になったのか尋ねてみた。そうすると夫は少し考えてこう言った。「うーん。たくさん作ったからからかな?」
上達に近道はないようです。

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