【赤の少女と白い虎】 13夜. 禁術の書
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わたしは生まれてすぐに、ある人の元に預けられてね。
そこでは多くの子どもたちが、その師のもとで
世界のありようを学んでは旅立っていった。
その中でね、わたしは落ちこぼれもいいところだったんだよ。
星とも、風とも、石とも、花とも。
鳥ともうまく話せずにいた。とても長くだ。
まわりの子がどんどん上達してゆく中で、
自分だけが取り残されていく惨めさをいつも味わっていたんだよ。
2歩も3歩も出遅れ、その差は開くばかりでね。
まだ幼かったわたしは、人にほめられたくて仕方のない、ただの子どもだったのさ。
なんとかして師に認められたかった。
仲間に「すごい」と言われたかった。
誰かに自分を見てほしかった。
とにかく、それだけを考えていたんだよ。
自分は愛されていない。
だから愛されたい。
そんな夢をみていたんだ。
いまとなっては笑うしかないが。
なんて幼く、なんてまっすぐだったんだろうね。
ある日、書庫の掃除を任されていたわたしは、
棚の裏側で埃まみれになっていた本を見つけたのさ。
〜つづく。
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