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真の名さえあればいい。

エレベーターの中で、それは唐突に落ちてきた。

だからわたしは誓うことにした。

「永遠に変わらない愛」をけっして誓わない、と。

わたしは、日々、変わっていく愛を誓う。

天気ひとつで変わる、弦楽器の音のように。

長い年月を経て完成する、見事な織物のように。

色を変えかたちを変え、

こころとからだに訪れる変化に

まるで、ゆっくりと、歩幅を合わせるように。

その人との間に生まれ、育つ何かがもし、あるというのなら
それは、とめどなく変容していけばいい。

一瞬で壊れて、一瞬で生まれて・・・

毎日、それの繰り返し。万華鏡のように、細胞のように。

それがたぶん、生きてる、ということで、
実際に起きていることなのだろう。

変わり移ろう、この世界の流れに逆らうなんて
わたしには到底、できそうにない。

そうして、さようならをいう時、
「いろいろあったけど、あー、面白かった」
と笑って、ついでにありがとうを
まで言えたら、もう、いうことなんて、ない。

いま思いつく極上の幸福とは、そういう感じのものだ。

その時にけっこんという契約があってもなくても
ここでいう「幸福度」には、さして影響はないんじゃないかとおもう。
完全に自己満足の世界のような気がするけれど、それでいい。

めくるめくように変わる、内なる万華鏡を、
ワクワクしながら、時には、がっかりしながら、
最後の一呼吸まで、しっかりのぞいていたい。
そうして十分感じてから、
自分に対して、相手に対して何ができるのか、
どうするのか、決められたなら、それで、いい。

誓うなら、そんな在り方がいい。

もしも、誰かが「それを永遠に変わらない愛とよぶのだよ」とかなんとか、なまえをつけても、もちろんかまわない。

仮の名前は、なんだっていいんだ。

自分だけが知る「真の名」さえあれば。

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