【赤の少女と白い虎】 15夜. 最後の砦
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日々の学びのなかでも
わたしは草木や花と話すことが特別に好きだった。
すると、師が「薬をつくってごらん」と言ってくれたんだよ。
お前は作り方を聞いたことがあるかい?
ある言の葉に祈りをのせる、あれだ。
決められた月の形の夜に、それを行う。
わたしのつくる薬はとても評判がよくてね。
師にもまわりにも褒められるようになった。
そりゃあ、嬉しかったさ。
おお、わたしも認められるようになったのだ、とね。
でも。
それでもだ。
自分で思っているよりもはるかに深く、暗く。
そう、まるで暗闇に炭が赤々とくすぶるかように
わたしの心は欲望に向かって、燃えたぎっていたのさ。
わたしはこんなもんじゃない。
もっと認めさせてやる。
見返してやる。
みんなが、わたしにひれ伏すまで。
褒められるほどにそんな気持ちが
消えるどころか、強くなる一方だった。
それがいつしかわたしの心を支配していくようになったのさ。
ある日、ようやく儀式の材料が揃ってね。
次の新月の夜の決行を、密かに決めたんだ。
もちろん、誰にもいわなかった。
それどころか、人といる時には必ず、
その記憶すべてを自分で消し去るようにしていたんだよ。
研ぎ澄まされた仲間たちに
決して悟られないように。
それはそれは注意深く、
つねに結界を張っていたのさ。
いよいよ明日、という日の夜のことだった。
「部屋にくるように」と師に呼ばれたんだよ。
〜つづく
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