【赤の少女と白い虎】 16夜. 魂の泣き声
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。・。・。・
なんてことだ。
目の前の道がぷっつりと途切れ、
いきなり谷底に投げ落とされたように感じたよ。
もうおしまいだ。きっとバレたんだ。
わたしの夢はここで終わるのか。
絶望の中で、それでも大きく呼吸をした。
そのまま、呼吸をつかい、自分の中心意識を真ん中に戻す。
いつもと同じように、自分の記憶と感覚を消し去り、
師の部屋に向かった。
師はいつものように長椅子に座っていた。
わたしにもその隣に座るように促した。
師は、次の満月の夜に、私を薬師として
正式に任命すると告げた。
それは一人前として認められただけでなく、
ここでの暮らしの終わりを意味するものだった。
「お前は本当によくがんばった」
こうも言われた。
「木や森、草花だけではない。空と大地だけでもない。いまやこの世界のあらゆるものがお前の母として、父として、兄弟姉妹としてそのかたわらに存在しているのがわかるだろう。
わたしはお前を心から誇りに思う。
ただひとつ、あることを除いては」
わたしは、師に言った。
「それはなんですか?」
「お前のありかだ」
たくさんのゆらめくロウソクの炎の下で、
師はわたしの顔を見据えた。
「お前のある1点が、
霧のようなものに包まれてよく見えぬ。
それは自分の行いか? それに気づいているのか?」
「・・・自分ではよくわかりません」
わたしは師の目を正面から見つめ、そう答えた。
ガンガンと音をたてて、大きな痛みが胸で波打っていた。
「なぜ、そんな風に自分を痛める?
その痛みのまま、話してごらん。
大丈夫、ここは安全だ。
何を話しても大丈夫なのだ、大丈夫なのだよ」
その言葉を聞いた瞬間、
とめどなく涙があふれ
止まらなくなってしまった。
〜つづく。
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