チューニングをしよう
前回の予告を変更して今回はチューニングのお話です。本当は予告通りギター&ベースのポジションのお話を書こうと思ったのですが、その前に正しいチューニングが出来てないと意味がないということに気がついたので(笑)。チューニングにも正しいチューニングと正しくないチューニングがあります。弦が正しく張られていて、楽器の調整も問題ない前提で書きますので、楽器の状態が不安な方は信頼のおけるプロにメンテナンスしてもらいましょう。
・ チューニングをするということ
まずはチューニングについて周りクドイ説明を(笑)。ギター&ベースは弦楽器の一種ですが、各弦の音の高さ(ピッチ)は弦の長さ、張力、重さの3つの要素で決まることを御存知ですか?弦の太さはピッチには直接関係なく、弦の重さを変えるために太さを変えているんですね。やろうと思えばギターに全て同じ重さの弦を張ってもチューニングはできますが、各弦の張力(テンション)に大きな差が出てとても弾きづらい楽器になってしまいます。そこで、弦自体の質量を変えて全弦の張力が近くなるように弦の太さを変えているのです。エレキ・ギターの低音弦、エレキ・ベースのすべての弦は巻弦ですが、これは単芯のプレーン弦を太くするだけでは演奏に不可欠な弦のしなやかさが保てないからです。
さて、そんな弦楽器は、弦が振動したときに弦の質量が軽いほど、長さが短いほど、張力が強いほどピッチが高くなります。弦の重さは弦を選んだ時点で決定していますね。弦の長さは指板上で弦を押さえることで変わります。そして弦の張力を調整するのがチューニングです。具体的には、(弦の長さが一番長い)開放弦のピッチを決める作業といえますね。
・ チューニングをしよう
開放弦のピッチは、6弦ギターは低いほうからEADGBE、4弦ベースはEADGとするのが一般的で、これをレギュラー・チューニングと言います。ギターの1弦と6弦の音名は同じEですが、音程(インターバル)は2オクターヴ離れています。また、ベースの4弦開放Eは、ギターの6弦開放Eの1オクターヴ下になります。4弦ベースのレギュラー・チューニングは、各弦半音5つ分のインターバルになっています(完全4度チューニングと言います)。つまり、ある開放弦に対して隣り合う低い方の弦の5フレットが同じ音程です。弦が4本以上ある多弦ベースの場合も原則的には完全4度チューニングとするのが一般的です。対してギターの場合は2弦と3弦のインターバルだけが半音4つ分の音程になっています。これがギターのポジションを覚えにくくする要因でもあると思うのですが、慣例的にそのようにチューニングしたほうがメリットが多いということでしょう。
・ チューナーがない場合
チューナーがない場合は、他の楽器に合わせることになるかと思います。例えばピアノと合わせる場合は、ピアノのAを弾き、その音が鳴っている間に自分の楽器のAの開放弦(ギターは5弦、ベースは3弦)を弾きます。
”音”には「ふたつの音の音程が離れているとまったく別の音に聴こえるが、音程が近づくと揺らいでいるように聴こえる」、”うなり”という特性があります。近づけば近づくほど揺らぎが遅くなり、音程が完全に一致すると揺らぎが止まります。この音の特性を使ってチューニングするわけです。
ピアノのAと自分の開放弦のAが一致したら、同様の方法(各開放弦の音程を他の楽器に弾いてもらう)で他の弦を合わせるか、開放弦と同じ音程を同時に弾き、(ベースなら3弦開放と4弦5フレット、2弦開放と3弦5フレット、1弦開放と2弦5フレットの順に)揺らぎの有無でチューニングします。すべての弦がチューニングできたら、念のためもう一度、他の楽器の音程と最初にチューニングした弦の音程を確認します。他の弦をチューニングしたことで最初の弦の音程が上下する可能性があるからです。
・ チューニングする際に注意すること
弦の張力はペグを回すことで上下させますが、チューニングの際は必ず巻き上げる方向でペグを回し、緩める方向でピッチを合わせるのはNGです。正しいピッチに対して低い方から探り、正しいピッチを通り過ぎてしまったらペグを緩めてチューニングするのではなく、一旦ペグを大きく緩めて再度低い方から正確なピッチを探る、ということですね。ペグを緩める方向でチューニングすると演奏中に音程が狂いやすくなります。ペグのネジの遊びやペグ近辺に溜まった弦の張力が影響するためです。新品の弦は軽く引っ張っておくとチューニングが安定します。無闇に弦を引っ張ると弦が切れたりネックに負担が掛かったりするのでやめましょう。筆者のベースの場合は7フレット近辺を押さえつつ、フロント・ピックアップ近辺で3cmほど弦をリフトアップさせる程度です。
数本の弦を同時にピッチ検出できるポリフォニック・チューナーを除いて、チューニングの際は目的の弦以外が鳴らないようにミュートすることもとても重要です。基本的に、チューニングは弦のピッチが安定する持続音(サスティン部分)で行います。何度もピッキングして弾き始めのアタック部分でチューニングするのはあまり得策ではありません。表現が難しいのですが、ペグを回す際に力がネックに伝わらないようにすることも重要です。同じ理由で目的の弦以外のミュートはネック側ではなくピッキング側の手で行うのがベターかと思います。ペグを回す手を離したときにチューニングが合っていればOKですね。
・ 電子チューナーの場合の注意点
最近のチューナーは音名だけでなく何弦かを表示してくれる機種もありますが、チューナーの画面だけでなく実際の弦のピッチや張力にも気を配るようにしましょう。自分の楽器の弦のテンション感(弦の張り具合)を体で覚えるという意味合いと、画面に表示された音名だけで判断するとオクターヴを間違えて弦を切ってしまう可能性もあるからです。チューナーがうまく反応してくれないことが多いという人は目的の弦以外が鳴っていないか、雑なピッキングをしていないか、確認してください。複数のピックアップを搭載している楽器はネック側のピックアップのみで、パッシヴの楽器の場合はボリュームを全開、トーンを全閉にするとチューニングしやすいと思います。詳しい説明は避けますが、余計な倍音を減らした方がチューナーが反応しやすいためです。
・ チューナー色々
筆者はKORGのDT-7というチューナーを気に入って愛用していたのですが、赤のLEDのみでチューニングを表示する機種のため、炎天下の野外ステージでは何も見えませんでした。今もチューナーはKORG派ですが、赤のLEDは要注意です(笑)。青のLEDなら大丈夫だと思います。針式も天候に左右されなくて良いですね。あと、超個人的な見解ですが、クリップ・チューナーが嫌いです(笑)。ヘッドに挟むアレですね。最近のはかなり性能も上がっているようですが、見た目もスマートじゃないし、自分の使い方が悪いのかまともにチューニングできたためしがなくて……。これからチューナーを買うという方にはギター専用、またはベース専用ではない、シールドを接続するタイプのクロマチック・チューナーをオススメしたいです。ということで、1ユーザーの超偏った見解を書いたところで今日はこの辺で(笑)。