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YOU CAN  FLY

飛行機は好きだ。夜の飛行機は特に好きだ。大きな大きな白い翼。それにそっと乗る小さな僕。

ふわり、と夜飛ぶ飛行機。夜間飛行。ぐんぐん陸が離れる。それにつれ冷える、アクリル板の分厚い窓に手をついて、下を見る。なんとなく勿体なくて、息を止めた。

砂金の撒かれた海底のように、黒い夜に街の光の砂が浮かぶ。この時間だけは、本当に、夢のように綺麗だ。ここで、死ねたら。素直にそう思った。

目をこらすと、小さな光の粒が行ったり来たりしているのも見える。いつか顕微鏡で見た赤血球のよう。街はぐんぐん遠ざかり、やがて飛行機は雲に入り、消えた。

まるで真夜中のピーターパン。息をする街の上を飛ぶ。

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