夏秋イチゴのマルチについて
夏秋イチゴでも多くの場合マルチをかけますが、冬イチゴとはちょっと違った目的というか考え方が必要になります。
マルチングの主な目的は
保温
雑草抑え
水分遮断
夏秋イチゴの場合、表面が白く裏面が黒い、いわゆる白黒マルチを使うことが多いです。よく勘違いされるのが、白黒マルチの地温抑制効果ですが、これは黒や透明マルチに比べれば抑制されるというだけで、基本的には保温されます。マルチなしよりは温度は上昇します。
それでも夏秋イチゴには白黒マルチ一択か、というとそうとも言い切れません。
白黒マルチの適正を季節ごとに考えてみます。
夏秋イチゴの場合、気温の低い定植時期の春先と晩秋は、できるだけ培地を保温したくなります。逆に夏季は少しでも培地の温度は下げたい。では春先にマルチをかけ夏には取ってしまうのがよいのか、というとこの考え方も問題があり、マルチがないと培土表面にコケと雑草が生えてしまいます。だいたい気温の下がる秋にはまた欲しくなるのでやはり現実的ではありません。
次に湿度の問題があります。高設栽培の場合、空中にイチゴが植わっているわけで、通常の白黒マルチをかけて培土表面を覆ってしまうと、培土表面からの湿度の供給がなくなり、ハウス内の湿度が低いとイチゴは乾燥状態になります。
イチゴに限らず、植物の健全な生育には適度な湿度が必要です。湿度が無ければ葉裏の気孔は閉じてしまい、炭酸ガスを取り入れることができず、十分な光合成ができません。
4~5月に晴天の多い地方では、外気の湿度は真冬並みに乾燥し、晴天時にハウスを開けると、ハウス内の湿度は30%を切ってしまうことがめずらしくありません。
一方で梅雨から夏にかけては湿度が上がってきます。今度はできるだけ湿度を低くし、病害を防ぎたくなります。
では結論としてどうなのだというと、現状これが最高という方法はないです。ですが実際に生産現場で白黒マルチを使っていて改善したいと感じるのは、高温の夏場に培地温の上昇を招くことです。
では培地温が上昇しにくいマルチはないのかということになりますが、二種ほどあります。
ひとつは「全面有孔マルチ」。白黒マルチの表面に小さな”穴”があいており、通常のマルチより地温を抑制します。さらにこの「全面有孔マルチ」は前述の4~5月の低湿度の時期に威力を発揮します。マルチ表面の多数の穴から出る水分が、結果としてイチゴの株付近の湿度を上昇させます。この効果は乾燥気味のハウスでは、ハッキリと違いがわかります。小さな穴は開いていますが、雑草抑制効果もほぼ問題ありません。少々価格は高いですが、自分で電動ドリル等で穴を開ければ安く済みます。
小さな問題としては、マルチ下の点滴チューブの点滴孔が、マルチの穴の位置と合ってしまう場合、外に養液が漏れます。
もうひとつ地温を抑制するマルチとしては、「紙マルチ」なるものがあるようです。当園でもまだ未検証ですが、その名の通り紙でできているようで、マルチ全面から水分が出るので、結果として地温抑制効果が非常に高いようです。紙なので廃棄も楽でいいですね。ただ点滴チューブの点滴孔からの養液はそのままマルチにしみ込んでしまうとなると大問題なので、そのへんは工夫が必要かもしれません。
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