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夏秋イチゴに土壌殺菌は必要か

 高設栽培でも土壌病害は発生します。
 土壌殺菌については、有用な細菌も殺してしまうなど反対意見もありますが、一度酷い被害にあうと、やはり確実な効果をみこんで、土壌くん蒸剤を使用することになります。

  • 萎黄病
     夏秋イチゴでは、すずあかね でよく発生します。特定のフザリウム菌が原因で、土壌内の菌の密度が濃くなると発病しやすくなります。
     発病後はランナーを通して苗にも感染するので、基本的には発病した株はすぐ除去します。
     発病株が出始めてから効果のある農薬はありません。

  • センチュウ類
     根から侵入し根を腐敗させるため、イチゴの生育が極端に悪くなります。
    (イチゴセンチュウは土壌殺菌では効果ありません)

  •  ナメクジ
     ナメクジは、実を食害します。たいていは赤く熟れた先端部付近から食べ進めていくので、その後には丸い小さな穴があいています。
     選果の際に見逃すと、あきらかにナメクジだとわかるので、神経を使います。
     ナメクジには「スラゴ」という登録農薬がありますが、一定の効果はあるものの、全滅させることは困難です。

  • コガネムシ類
     あまり聞きませんが、コガネムシの活動する季節である夏秋イチゴでは被害にあうこともあります。
     症状としては、ベンチのイチゴの株が数株~数十株まとめて、日中高温時に萎れるようになります。最初は朝には回復しますが、そのうち枯れてしまいます。
     原因はコガネムシの幼虫で、土壌中に産卵され、その年に孵りイチゴの根を食害します。その食欲はすさまじく、数十匹のコガネムシの幼虫でベンチ一本ダメになることもあります。
     対策としては、親に産卵されないようにするしかないので、一般的な農業用マルチをすることです。

土壌くん蒸剤について

 上記をはじめとする土壌病害には、土壌くん蒸剤の使用が有効ですが、夏秋イチゴでの使用には少し問題点があって、それは多くの土壌くん蒸剤は、高温の方が効果が高いことです。
 高設ベンチの上を透明のマルチなどでしっかり被覆して、栽培期間にしようした点滴チューブをそのまま使って薬液を流すことができます。
 冬イチゴの場合は、栽培期間からはずれる夏に行えばいいのですが、夏秋イチゴの場合は、寒い冬に行うことになります。
 日数を長くかけることで効果はあるようですが、一ヶ月近く被覆期間が必要となると、栽培スケジュールを圧迫します。

 ちなみに当園ではサンケイ化学さんの「キルパー」を使用しています。栽培終了後、クラウン上部の葉などを鎌で除去し、透明マルチにて被覆。殺菌と同時に株を壊死させ、被覆終了後に楽に株抜きしています。

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