ピタゴラスに学ぶ作曲:純正律の美しい和音を奏でよう♪
こんにちは、あかねです♪
今回は、音楽家の皆さんのために、綺麗なハーモニーの作り方を論理的に徹底解説します!
譜例もたくさん用意したので、ピアノなどをお持ちの方は、奏でるだけでも宝石箱を覗いたような気分を楽しめると思います(^^;
ピタゴラスという数学者は、音楽史の上でも重要な人物であることをご存知ですか?
彼はなんと今から2500年も前に、弦と重りを用いた実験をして、"単純な振動比の音はよく調和する"という美の法則を見出したのです。
彼のアイデアから蜂蜜の抽出を試みて、美しい和音や音階を奏でてみましょう!
1オクターブ、即ち1:2の振動比を幾何平均でn等分した音律はn平均律と呼ばれています。
n平均律にはn個の音が含まれ、その振動比は基準音に対して1:2^(1/n):2^(2/n):2^(3/n)…:2^{(n-1)/n}です。
これに対し、1オクターブの音を算術平均でn等分した音律をn純正律(Δn)とします。
Δnにはn個の音が含まれ…①、その振動比は基準音に対して1:1+1/n:1+2/n:1+3/n…:1+(n-1)/nです。
Δ4の中には純正な長三和音が、Δ10の中には純正な短三和音が現れます。
また、調和平均でn等分した音律を∇nとします。Δnの振動比率は∇nの逆比となっているため、Δnは∇nの鏡像となります。
メモ
・ある基準音に対して何かしらの音列(振動比1:α:β:γ…)が与えられたとき、その鏡像となる音列(振動比1:1/α:1/β:1/γ…)が得られます。
参照→作曲って奥深い…万華鏡のような音階の話
・その他にも平均には一般化平均、n乗平均、対数平均、荷重平均など様々な定義があり、それぞれに対応する音列が算出できます。
mがnの整数倍の時、m純正律はn純正律の全ての音を含みます。(Δm⊃Δn)…②
また、mとnが互いに素の時、ΔmとΔnに共通する音はただ基準音のみとなります。(Δm∩Δn={1})
よって、mとnの最大公約数をpとするとき、ΔnとΔmのどちらにも含まれる音の列は、Δpと等しいです。(Δn∩Δm=Δp)…③
②より、自然数x(∈ℕ)の巾乗の純正律Δx^n(x,n∈ℕ)に関して次のような包含関係が導けます。
Δ1⊂Δx⊂Δx^2⊂Δx^3…Δx^n⊂Δx^(n+1)(x,n∈ℕ)…④
その細部に目を向けると、フラクタルの形状が見出だせます。
Δx^(n+1)は、Δx^nの各音の間に、振動数が2音の算術平均となる(x-1)個の音を付加したものとなっています。
メモ
マンデルブロ集合、カントール集合などが持つ自己の一部が自己と相似になる性質をフラクタルと言います。
参照→黄金比で拡大するフラクタルのリズム構造
特に2の巾乗となる純正律に関して
Δ1の1オクターブ上方にΔ2を付加
Δ2の1オクターブ上方にΔ4を付加
Δ4の1オクターブ上方にΔ8を付加
…
Δ2^nの1オクターブ上方にΔ2^(n+1)を付加
…
この操作を∞回繰り返すと、Δ1の上方に自然倍音列が得られます。
自然倍音列のn番目から2n-1番目までの音列を、移高して基準音の高さに揃えるとn純正律が得られます。
また、次のような操作も考えられます。
Δ1の1オクターブ上方にΔ2に対するΔ1の補集合Δ2∩Δ1¯を付加
Δ2の1オクターブ上方にΔ4に対するΔ2の補集合Δ4∩Δ2¯を付加
Δ4の1オクターブ上方にΔ8に対するΔ4の補集合Δ3∩Δ2¯を付加
…
Δ2^xの1オクターブ上方にΔ2^(x+1)∩Δ2^x¯を付加
①②より、要素の個数に関して次の式が成り立ちます。
n(Δ2^(x+1)∩Δ2^x¯)=2^x…⑤
かくして得られる倍音列は、基音に対する奇数次の自然倍音列(振動比1:3:5:7…2n-1…)と等しいです。
メモ
クラリネットの奏でる音は奇数次の倍音のみを含みます。この倍音列は、自然倍音列をリング変調することによって得られます。(この話は詳しく別のnoteで書きたい)
∇nに関しても同様の議論が成り立ちます。
∇1の1オクターブ下方に∇2を付加
∇2の1オクターブ下方に∇4を付加
∇4の1オクターブ下方に∇8を付加
…
∇2^nの1オクターブ下方に∇^8を付加
…
この操作を∞回繰り返すと、∇1の下方に下方倍音列が得られます。
自然倍音列のn番目から2n-1番目までの音列を、移高して基準音の高さに揃えると∇nが得られます。…
より一般化して、任意の自然数x(∈ℕ)の巾乗となる純正律に対して、次のような倍音列が得られます。
Δ1の1オクターブ上方にΔxを付加
Δxの1オクターブ上方にΔx^2を付加
Δx^2の1オクターブ上方にΔx^3を付加
…
Δx^nの1オクターブ上方にΔx^(n+1)を付加
…
∞回繰り返す
これをx乗倍音列(Sx)と名付けます。
③と同様の議論により、mとnの最大公約数をpとするとき、SnとSmのどちらにも含まれる音の列は、Spと等しいことが分かります。(Sn∩Sm=Sp)
④よりSxを1オクターブ上方に移高した音列S'xは、元の音列Sxに含まれる事が分かります。S'x⊂Sx
x乗倍音列Sxのn番目の音から、1オクターブ上方の音の間に含まれる音の列を、基準音に対するx乗純正律S(x,n)と名付けます。
定義より、基準音のa(∈0,ℕ)オクターブ上のx乗純正律はx^a純正律と等しいです。S(x,a^x-a+1)=Δ(x^a)
x乗純正律の音数は、nが増加すると等差数列的に増加する性質を持ち、次の式で求められます。n(S(x,n))=(x-1)(n-1)+1
メモ
1オクターブに含まれる音数の数列a(n)を利用して、元となる倍音列のスペクトルの特性を分析する手法があります。また別のnoteで紹介したいと思ってますー。
Δxのヴォイシングについて考えましょう。
①よりn(Δx)=xなので、x平均律にはx種類の転回形が存在します。
Δxの転回形をΔx'とし、特に第q転回形をΔx'qと表記します。
0<q0<xの時、Δ(x+q0)の中にΔxのq0展開形が見出だせます。Δ(x+q0)⊃Δx'q0
q0=xの時は②よりΔ(x+q0)=Δ2x⊃Δxです。…⑥
Δx'q0の1オクターブ上方に、Δ(x+q0)'に対するΔx'q0の補集合Δ(x+q0)'∩Δx'q0¯を付加すると、基音の近くにより協和的な音程が配置された、調和のとれた和音が得られます。
更にその1オクターブ上方にΔ(x+q0+q1)'(⊃Δ(x+q0))に対するΔ(x+q0)'の補集合を付加します。
更にその1オクターブ上方にΔ(x+q0+q1+q2'(⊃Δ(x+q0+q1))に対するΔ(x+q0+q1)'の補集合を付加します。
…
更にその1オクターブ上方に
Δ{x+Σk=0~n+1 qn}'(⊃Δ{x+Σk=0~n qn}')∩Δ{x+Σk=0~n qn}'¯を付加します。
…
同様の操作を繰り返すと、Δzの自然倍音列に基づいたヴォイシングが完成します。
特にx=1,qn=2^nの時、この操作を∞回繰り返すと⑤⑥より奇数次の自然倍音列が得られることが分かります。
純正律を利用した、美しい和音の話でした。
かわいあかね