【連載】 魔法使いの街2(魔法仕掛けのルーナ14)
アレクは戸惑っていた。
黒髪を短く切り揃えた中肉中背の若者である。彼の深い緑色の瞳が、不安そうに揺れている。
いくつもの馬車を乗り継いでやっとたどり着いた都《みやこ》は見知らぬものに溢れていて、とても故郷と地続きとは思えなかった。
まず、街路を行く人の量が違う。実家で飼っている羊よりも多そうだ。加えて彼らの服装の華やかなこと! 結婚式でもあるのだろうか? だとすればこの人通りもある程度は納得がいく。
アレクは慣れない人混みに揉まれている間、そんなことを考えていた。