三題噺:「メイク」「ゲーム」「空」

4月に公募勢サークルのオフ会で書いた三題噺です。
くじ引きでお題を三つ引いて、自分が引いたキーワードを入れてショートショートを二十分以内で書くというものでした。

私が引いたお題は「メイク」「ゲーム」「空」でした。

楽しかった記念に、文字に起こしておきます。

——————— 550字 —————————————————————————————
「あゆ、あたし高坂くん狙うから邪魔しないでね」
 萌が鏡に向かってメイクを直しながら言った。胸がズキズキと痛む。
「高坂くんと喋り過ぎ。もっとあたしと話すように気ぃ遣ってよね」
「うん、ごめん」
 私も高坂くんの事、すごく好きだたって思ったのに、なんで謝っちゃうんだろ。合コンの数合わせで呼ばれて、嫌々来たというのに、私は運命の出会いを感じていた。

 萌は小学校からの親友で、ずっと仲良しだった。でも男のことになると、まるでゲームをするかのように、相手を落とすことだけに興じて、一度手にすると直ぐに飽きて別れてばかりだった。

 今回も彼氏が途切れて、新しい彼氏を作りたいという萌の希望でアレンジされた合コンだった。
 下がってきたまつ毛にマスカラを塗り直す。目の下が少し黒くなっていて、パンダになりかけている。
「よし! じゃあ行くか!」
 萌が言って二人で化粧室を出る。
 萌の事は好きだ。友達でいたい。でも。高坂くんを萌に譲る気なんて、どうしても考えられない。萌の背中を追う。

 高層ビルの窓から夜景が見えた。空に月が丸く写っていた。私は元いたテーブルの席に戻る。
「あゆさん! 連絡先聞いても良いですか?」
 高坂くんが寄ってきて、私にそう言った。
 萌からの視線が焼けるように熱い。私は声を出せず、その場で立ち尽くした」

 <了>


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