気の毒な障害者
私は少し前
ある女性と知り合った。
私は毎日犬の散歩で近所を歩くのだが
うちの犬は小さくて歩くのが遅いので
たびたび出会う彼女と歩幅を合わせて歩くことが
くなった。
彼女は杖をついていた。
何年か前の台風の大雨で
川が氾濫し
家が床上浸水になり
そこにはまってしまって骨盤を損傷したのだという。
彼女に会うことが多くなり
自然に会話を交わすようになった。
彼女は、足が不自由な他に
てんかんの持病もあるという。
彼女の足は、
動かさないと歩けなくなるのだと言う。
だから彼女は
歩いていた。
「リハビリに付き合ってもらえませんか?」
ある日このように言われた。
私は犬の散歩をするし
彼女はリハビリをする。
だから一緒に歩きましょうと。
「いいですよ。お付き合いします。」
私も誰かとお喋りしながら歩きたかったし
このような方の手助けが出来るのは
誇らしかった。
彼女のお母様は
車の交通事故でなくなったこと
娘さんが介護施設で働いていること
娘さんが彼氏ともうすぐ結婚すること
そして彼女自身の彼氏のこと
彼女の話はいつもとても不幸で
とても気の毒だった。
結婚されてたけれど、
とても怖い旦那さんで離婚されたらしい
彼女がやることすべてに文句を言われて
すごく嫌だった…と。
私は、こんな不幸な彼女のできる限りの
力になりたかった。
しかし…
彼女と私はとても親しくなったが
とにかく彼女を知れば知るほど
彼女は暗かったし、
とにかく身勝手だった。
例えばこの間警察に電話したんです。
と言うのでなにかと思ったら、
「横断歩道を杖で渡っていたら、
左折してきた車が早く歩けと煽ってきたんです。
警察の人が、それは酷いですね〜といってま
した。」
「この間、ディスカウントスーパーで、店員さんに
この商品の賞味期限の新しいのを持ってきてくれと
頼んだら、2時間待たされました。」
「この間宅配便の方が安全運転されていたので、
宅配会社に連絡して『あなたの会社の○○さ
んは法廷速度を守っていて素晴らしいと誉めてあげ
て下さい! 』と言いました。」
「買った牛乳に異物が混入していたので、
製造会社に電話したら、お詫びに300円のクオカー
ドくださいました。」
こんな話ばかりでした。
彼女は
自身が障害者だからなんでも許されると思っている
モンスター障害者だったのです。
私は最初は我慢していましたが
彼女の言動が許せなくなりました。
毎日こんな話を聞かされるのは
うんざりだ。
付き添いでリハビリになど
行きたくない。
しかし、彼女は障害者です。
それが引っ掛かり
なかなか縁が切れませんでした。
障害者には親切にしなくてはならない。
そんな気持ちがいつも付きまといました。
その頃、なにかの出来事がワイドショーで
賑わっていました。
その内容は失念してしまいましたが
その時にカンニング竹山さんが
こう言ったのです。
「障害者だって嫌なヤツはいるんだから嫌ったって
いい」
この言葉に私は救われました。
そしてやっと彼女と縁を切ることができました。
彼女は障害者であるがために
たくさんの人から気の毒に思われ
親切にされてきたのでしょう。
そしてそのことが
彼女を、何をしてもよいという
我が儘な化け物と化してしまったのだと思います。
この話はこれで終わりなのですが
このことが後々に教訓となって我が身にふりかかる
出来事が起こりました。
また次回。