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PBRの基礎知識

3DCGに携わる方なら、誰でも必ずどこかのタイミングで「PBR(ピービーアール)」という言葉を耳にすると思います。
CGのクオリティを支える上で欠かせない技術であり概念だ!と認識してはいるものの、この言葉が何を指し、具体的にどのような意味を持つのかを理解する機会は意外と少ないのではないかと思います。

今回は「PBRって聞いたことあるけど、よく分からない…」という人や、CGのことを何も知らない今までの自分に向けて説明するつもりでまとめていきます。


PBRとは?

まず、PBRという言葉の意味を説明します。
PBRとは、「Physical Based Rendering(フィジカルベースドレンダリング)」の略。日本語に訳すと「物理ベースレンダリング」という意味になります。

ここで言う「物理ベース」というのは、「物理的な光の振る舞いを再現している」ことを指します。
PBRの原則に則ったマテリアルを使用することで、もののリアルな質感をシミュレートし、より正確かつ自然な見た目を実現することができるようになりました。

PBR以前のレンダリング手法

PBRが登場する前のレンダリングでは、物理法則に基づかない光のシミュレートが採用されていました。Lambert(ランバート)、Blinn(ブリン)、Phong(フォン)等といった、Add型シェイダーを用いた手法がそれにあたります。

※シェイダー:ごく簡単にいうと、レンダリングエンジンに搭載されているマテリアルの計算機のこと。

Add型シェイダーとMix型シェイダー

Add型シェイダーというのは、物理法則を無視して、様々な光の振る舞いをどんどん足していくことができるマテリアルの計算方法のことです。このシェイダーを使って現実に近しい表現を作ることも可能ではありますが、あくまで「見た目」を基準に質感を作っていくことになるため、作業者の技量と経験が大きく影響する手法です。
誤解を恐れずに言うと、「いかにもCGっぽいぞ」という仕上がりになりかねないシェイダーといえます。

対して、PBRではMix型シェイダーが使われています。
Blenderに搭載されているPrincipled BSDFなどがそれにあたります。
Mix型シェイダーでは、物理法則に則って、光の総量を一定に保つように計算してくれます。
Add型シェイダーのように、どんどん光の振る舞いを重ねていくことがないため、マテリアルの質感を現実的な見え方に抑えてくれます。質感の嘘をつきづらいようにしてくれるのです。

PBRの概念

先程から「物理法則」「物理的な光の振る舞い」という言葉が頻出しています。
そもそも、私たちが生きるのに欠かせない「光」とはどのような法則の上に成り立っているのでしょう。
PBRの成り立ちの上で欠かせない光の法則について、改めておさらいしていきます。

エネルギー保存の法則

エネルギー保存の法則における光の振る舞い方

この地球上には「エネルギー保存の法則」という概念があります。これは、「エネルギーがある形態から他の形態へ変換する前後で、エネルギーの総量は常に一定不変である」という物理法則です。
これを光の振る舞いに当てはめると、「物体表面は、それが受けた以上の光を反射することはできない(※発光物を除く)」ということになります。上の図をもとに説明すると、物体から反射する光の総量は入射光の量を決して超えない、ということです。PBRにおける光の計算方式は、この原則をもとに成り立っています。

拡散反射光(Diffuse)と鏡面反射光(Specular)

物理的な光の振る舞い方について、もう少し説明していきます。
先程、物体表面に光が当たると、その光は反射すると説明しました。このとき、2種類の反射光が発生します。拡散反射光/Diffuse(ディフューズ)と鏡面反射光/Specular(スペキュラー)です。

拡散反射光とは、入射光が物体内部に侵入した際に散乱と吸収を繰り返し、吸収されずに残った光が再び物体表面から様々な方向に乱反射することを指します。この反射により、人の目には物体の色が映ります。

対して鏡面反射光は、入射光が物体内部に侵入せずに跳ね返り、入射光と同じ角度で反射することを指します。これにより、人の目には物体の光沢が認識できます。

ごく簡単にいうと、拡散反射光は物体の色を、鏡面反射光は物体の光沢を見た人に認識させるものになります。

物質によって拡散反射光と鏡面反射光の割合は異なります。
表面が粗くざらざらした物ほど拡散反射の割合が多くなり、逆に滑らかでつるつるした物ほど鏡面反射の割合が多くなります。
例えば、果物のリンゴだと、拡散反射により赤い色に見え、どれだけ綺麗に磨いてあったとしても、光沢感はそれほど強く見えないと思います。鏡面反射の割合が低くなっているからです。
対して、鉄やステンレスなど金属質の場合は、鏡面反射の割合が大きくなるため光沢感が強く、逆に拡散反射色は弱くなります。
これが完全な鏡面になった場合、全ての入射光が鏡面反射として跳ね返るため、私たちの目には鏡に映った自分自身が見える、というわけです。

このディフューズとスペキュラーの概念は、これからPBRマテリアルを制作していくうえで欠かせないものになります。
私自身もまだまだ理解が浅いところがあるので、是非とも勉強を続けていきたいところです。

PBRの基礎知識~ここまでのまとめ~

ここまで、PBRとはそもそも何なのか/どのような概念のもとに成り立っているのかをご説明してきました。
簡潔にまとめると下記3点になります。

  • PBRとは、物理的な光の振る舞いをシミュレートするレンダリング方法のこと

  • PBRはエネルギー保存の法則を基に成り立っており、物体表面の反射光の総量が入射光を超えない計算式となっている

  • 物体表面からの光の反射には、拡散反射光(ディフューズ)と鏡面反射光(スペキュラー)がある

まだPBRについてほんの触りの部分だけですが、少しでも理解が深まりましたら幸いです。
そして、もし「ここは間違っている/少し足りない」と思われる箇所がありましたらご指摘いただけますと大変助かります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!



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