
ネコふんじゃった
幼稚園の頃だったと思います。
そのころ猫を飼っていました。
『ミー』という名前の猫でした。
その頃は8畳の部屋で
家族5人が並んで寝ていました。
8畳の部屋いっぱいに5人分の布団を敷き詰めていました。
ミーはいつも5人の布団のどこかに潜り込んで寝ていました。
ある朝,目覚めるとすぐ
いつものように兄弟3人で元気よく布団の上を飛び回りました。
幼稚園の子どもって朝から元気いっぱいです。
ところがその日は運悪く
ぼくはミーの上に飛び降りてしまいました。
ミーは叫んだのかもしれません,
泣いたのかもしれません。
でもその記憶はありません。
ぼくが覚えているのは
ミーがまるでウサギの様にピョンピョン飛び回っている姿です。
ほんとに8畳の部屋の隅をグルグルグルグル飛び回っていたのです。
ミーはものすごく痛かったのでしょう。
でも,事情がよく分からなかったぼくは
「わ~,うさぎみたい!」
と,結構喜んで見ていました。
そしたら,
バサッと,ミーは倒れました。
一瞬何のことか分からなかったけど
自分で分かったのか,誰かに言われたのか忘れましたが
ようやく,ぼくがふんずけたせいだと分かりました。
ミーは激しい息をして寝そべっていました。
おばさんが綿に水を含ませてミーの口に持っていくけど
ミーはなめもしなかったです。
そんなミーを見ていると
ぼくは悪くて悪くて
どうしようどうしようと思っていました。
ミーに悪くて悪くて
なんとか治って欲しいと思っていました。
でもそれは本当は
治ってくれれば
前のように元気になってくれれば
ぼくの犯した罪は消えてくれるなんて
自分中心に思っていました。
自分の事しか考えていませんでした。
そこから
どうなったか記憶がありません。
どうなったか忘れましたが
ミーは持ち直し,元気になりました。
でもそれから
そこらへんでウンチをもらしたり
奇妙な行動をしたりするようになりました。
「お前が踏んだせいで,ミーはおかしくなったんだぞ。」
とよく兄に言われました。
そうかもしれません。
その度にぼくは罪の意識にさいなまれたのでした。
ごめんねミー。