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初恋

ぼくの初恋はユウコちゃんでした。
小学校の中・高学年で一緒のクラスでした。
七三分けのセミロングで,眼がキラキラしていて
少女マンガに出てくるようなきれいな子でした。
魔法使いサリーに似ているミキちゃんという子がいましたが
ユウコちゃんはどちらかというとスミレちゃんタイプでした。

ある時男子たちが集まって
《好きな子を言う》
事になりました。
「誰にも秘密だぞ!
「ここで言ったこと誰にも言ってだめだぞ!」
と強い約束の元,みんなで好きな子の言いっこをしました。

みんな順番に言っていきました。
ぼくの番が回ってきて
「ユウコちゃん」
と言いました。
みんなニヤニヤしながら聞いていました。
ぼくにだけニヤニヤしたわけじゃありません。
ぼくも他のやつらがしゃべっている時にはにやにやしていたと思います。

よくあるマンガの様に
その次の日にはぼくの好きな人がみんなに広まっている,なんてことにはなりませんでした。
なりませんでしたが,ケンイチのやつがなにかにつけて
「ユウコちゃん,ユウコちゃん」
とぼくに近づいてきては連呼するのでした。
確かケンイチのやつは
《好きな子を言う》会の時
「おれ,いないよ。」
なんて逃げたやつでした。
あ~,あの場でしゃべって失敗した。

そんなもんですんでいるうちはまだ良かったのです。
お正月。
年賀状が来ます。ぼくにも数枚来ました。
兄が
「これなんだ?」
とニヤニヤしながらぼくに言うのでした。
「?」
と思ってみてみると,宛名のところに
「ゆうびん屋さん,ユウコがすきな○○にとどけてね!」
と書いてあったのでした。
ケンイチのやつからでした。
お陰でぼくの好きな人が家族中にばれてしまいました。
顔から火が出るほど恥ずかしかったです。
あんな恥ずかしかったこと,人生でいくらもありません。
しばらく家族からも
「ユウコちゃん,ユウコちゃん!」
とからかわれました。
それ以来ぼくは,
《これから好きな人ができても絶対誰にも言わないぞ!》
と固く誓ったのでした。

それにしてはその後も結構言ってますけど。

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