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デートのダシ

ぼくが4才の時の話です。

ぼくの家は下宿屋さんもしていました。
下宿屋と言ってもMAX4人の小さな下宿屋でした。
主に大学生さん達が下宿していました。
学生さんたちの部屋は離れにありましたが
食事はみんな一緒にするので
ぼく達3兄弟は大学生のお兄さん,お姉さんと仲良くなり
よく遊んでくれました。

その中に,女子大生でナカガワさんという人がいました。

ナカガワさんはうちの3兄弟の中でも
特にぼくをかわいがってくれたと思います。

そんな中で
ナカガワさんに動物園に連れて行ってもらった記憶があります。

どちらかというと写真の記憶です。
小学校卒業時,学校からに何も貼ってない写真用のアルバムをもらったので
父親に昔の写真を引っ張り出してもらってアルバムにたくさん貼りまくったのですが,
その中にあった写真の記憶なのです。
そのアルバムは今は見つかりませんが,どこかにあるはずです。

さて,ナカガワさんに動物園には連れてもらったんだけど,
当時でさえどこで何をしたのか,ほとんど,いやまったく覚えていませんでした。
写真は,ぼくがナカガワさんにゾウの檻の前で
ビタ~っとよっかかっている写真でした。
恥ずかしそうな,幸せそうな顔して写っていました。
一体動物園でどれだけ楽しかったんだろうなあ
と,その時の記憶がないことが子ども心に残念でした。

ナカガワさんとお別れした記憶はありません。
きっと大学を卒業して,ぼくたちが幼稚園に言ってる間に引っ越したんでしょう。

中学の時
ナカガワさんがいた当時,ぼく達と一緒に住んでいたおばさんが
何かの話の流れでぼくに言いました。
「あんた,昔ナカガワさんっていたでしょう?」
「うん! いた!」
「あんた,ナカガワさんに1回デートのだしに使われたの覚えてる?」
「…え?」
「ナカガワさんがデートに誘われたんだけど,ナカガワさん恥ずかしがりやだったから,最初断ったのよ。でも,また誘われてさ,
『この子も一緒ならいいです。』
って言ってさ,あんたのお母さんの許可をもらってあんたを連れて行ったのよ。で,3人で動物園に行ってデートしてきたわけ。」
「え~!」
「あんた,アルバムに写真あるんじゃない? あれ,彼が撮った写真よ。」
「え~‼」

その時は
「ナカガワさんに利用された~。」
と落ち込みましたが,
今考えてみるとそれはそれでいい思い出です。
ナカガワさんがぼくを選んでくれてうれしかったし
ぼくはナカガワさんが好きだったから
それはそれで楽しかったんでしょう。
覚えてないけど。

それにしてもウチの親,よくもまあ,許可したもんだ。


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