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告解

ウチの親はカトリック信者なので
ぼくら兄弟は毎週日曜日教会に行かされました。
そしてふた月に一回くらい
「あんたたち,今日,告解してきなさいね!」
と,母に言われていました。

告解というのは,自分の罪を神父様に言って
神父様からその罪を許してもらう儀式です。

お年を召した方ならご存じかもしれませんが
昔,『オレたちひょうきん族』でやってた
《ざんげしつ》みたいなものです。
水は降ってきませんが。

『告解してきなさい』
と言われたって
自分で特に罪を犯した覚えはありません。
そう母に言うと

「何かしたでしょ,
『嘘つきました』とか
『怠けました』とか
『人の悪口言いました』とか
言ってきなさい!」

と言われました。
ああ,そうなのかもね。

ミサが終わると
昔の木製の電話ボックスみたいな告解室に入ってひざまずきます。
木の壁の向こうには神父様がいて
「あなたの罪を言いなさい。」
みたいなことを言われます。

ぼくは
『嘘つきました』とか
『怠けました』とか
『人の悪口言いました』とか
言います。

最後に
「私の覚えている罪はこれだけですが
覚えていない罪も併せてお許しください。」
みたいなことを言います。

そうすると隣の神父様が木製の小窓越しに
「あなたの罪は許されました,もう罪を起こさないように。」
みたいなことを言われておしまいです。

というのをふた月に一回くらい

『嘘つきました』とか
『怠けました』とか
『人の悪口言いました』とか
言ってました。

言っただけで何の反省もありません。

こんなんで許してくれるのかなあ?

だったら
嘘ついてもダイジョブだよな
怠けてもダイジョブだよな
悪口言ってもダイジョブだよな
とか

どっちにしろ告解しろって言われるんだから
嘘つかなきゃ損だよな
怠けなきゃ損だよな
悪口言わなきゃ損だよな

告解がいやでいやでしょうがなかったぼくは
ねじくれてそんな風に思った記憶があります。

なんだって強制されるのは嫌でした。
ホントじゃない気持ちを言わされるのが嫌でした。

そのくせ
「もう,オレは告解なんてやんないよ」
と言い放ち,告解をさぼる弟に腹が立ちました。
ぼくもそんな風に言いたかったんです。
でも言えませんでした。
言えない自分が嫌でした。

そのうち兄がボーイスカウトで時間が取れなくなり
ぼくもボーイスカウトに入れられて時間が取れなくなって
自然に告解をしなくなりました。



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