
知らんぷり
ぼくは完璧主義者で
「これはこうであらねばならない」
「これはこうであるべきだ」
と意識的にしろ無意識的にしろ
沁みついているところがあるので
「まあいいさ」
「どうでもいいんじゃない」
の方に移行したいなあと常々思ってるんです。
では,
『すべて完璧であらねばならない』
と思い込んでいたぼくは,過去
失敗してしまったときどうしていたか?
その失敗を
「隠ぺい」
してきたのでありました。
幼稚園の図工の時間のことです。
フィンガーペインティングっていうのかな?
両手を絵具がたっぷり入ったバケツにつけて
その手で紙の上に絵を描く,という事をやりました。
「はい,おしまいです。皆さん上手にできましたね!
では,手を洗いましょうね」
と言われ,みんなで手洗い場の前に並びます。
その時ぼくは,並んでいる前の子の背中に
まちがって
両手をつけてしまったのです。
その子の背中には,いくつかの太い絵の具の線がついていました。
『やっちゃった!』
と,思いましたが,ぼくは謝りもせず
そのまま知らんぷりをしてしまいました。
その後,ぼくがやったとバレて怒られることはありませんでしたが,
今でも思い出す度,
『謝ればよかったなあ』
と思います。
小さい頃,うちの前はちょっとした広場になっていて
近所のサイトウさんが
よくオート三輪を停めていました。
「この車,乗っていいんだよ。」
と,サイトウさんの息子が言うので
時々運転席に乗って遊んでいました。
ある時,運転席の横のサイドブレーキが手に触れました。
おじさんが操縦するのを何度も見てるので
それがブレーキということは当時でも分かっていました。
ふと,思い付きで大人が操縦する真似をして
サイドブレーキレバーを引っ張ってみました。
サイドブレーキレバーは引きあがりました。
『なるほど,こうやって使うんだ。』
自分でできて悦に入っていましたが
いざサイドブレーキレバーを戻そうとしても戻し方が分かりません。
今ならレバーの先のボタンを押せばいいと分かりますが
当時はそんなこと,わからなかったのです。
レバーを押しても引いてもびくとも動きません。
あせりました。どうしよう?
このままならこの車,走れないぞ。
こわしてしまったかなあ,まずいなあ
(当時はヤバイ,と言う言葉は,ぼくの周りにはありませんでした。)
罪悪感にかられながらも,
《知らんぷり》
して,何事もなかったようにそのオート三輪を降り,黙って家に帰りました。
『どうしよう,どうしよう』
一晩中,心配してあまりろくに眠れなかったような気がします。
次の朝,起きて空き地を見たら
そのオート三輪はなくなっていました。
『動いたんだ! あーよかった!』
安心して胸をなでおろしました。
これもすぐサイトウさんのおじちゃんに言えばよかったなあ,と反省しています。
こうやって自分のミスを《知らんぷり》しても大丈夫だ,と幼いときに【学習】しちゃったから,隠ぺい体質になり,あとあと猛烈に痛い目にあって反省させられることが幾度も起こるのでした。
因果応報です。
素直に謝るのがあとあと一番気楽だといつでも思うんですけど,
幾度起こってもまたやっちゃうんです。
困ったもんです。
だから
【今日を境に,もう知らんぷり=隠ぺいはしないぞ!】
と誓います。はい。