絵本の国の少女鏡像 どいかや『チリとチリリ』

物語のなかの女の子がふたりでひとりでいるには、なにかしらの理由がなければならない。

たとえば、そもそも双生児であるとか、恋愛感情として好きであるとか、恋愛感情ではないにしろ好きであるとか、むしろ大嫌いであるとか。変わったところだと、主従関係にあったり、制度の中で決められたスールのようなペアであったり。

でもそれは物語のなかのお話。

今日お話したいのは、物語なのに「物語以前」でもある、絵本のなかのお話です。

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どいかや『チリとチリリ』

すでにとても有名で定番ともいえるべき絵本『チリとチリリ』。シリーズ化もされており、7作目となる『チリとチリリ あめのひのおはなし』が最新作となります。

チリとチリリ、おかっぱあたまの二人の女の子。チリチリリ、チリチリリ…ふたりは自転車に乗って動物さんたちが暮らす森へお出かけします。そこにはかわいらしいメニューがならぶ森の喫茶店や、ほんとうにおいしそうに描かれる森のサンドイッチ屋さんが。そして最後にたどり着くのは不思議な森のホテル!(『チリとチリリ』あらすじ)

そこに広がるのは大人だって心がときめくような、わくわくする世界。『チリとチリリ うみのおはなし』に登場するという「なみのあわパフェ まきがいふう」「うみのソーダゼリー しんじゅクリームのせ」なんて、ロマンチックにもほどがあります。わーすてき、食べてみたい。そしてインスタにあげたい。ねえ、一緒に行かない?

そう、おんなのこのおでかけは、いつだってひとりよりふたりのほうがたのしくってかわいいのです。

チリ、チリ、とだけなる自転車より、チリチリリ、チリチリリ、となる自転車のほうがにぎやかだし、かわいいものをかわいいねって言い合えるし、たくさんのメニューで悩んでもふたりだからふたつ選ぶことができるのです。

そんな当たり前で理由なんていらない「おんなのこふたり」のかわいさと楽しさ、そしてふたりならなんだってできちゃう!ってことを、自転車に乗ってかろやかに振りまいてゆく、チリとチリリ。白いワンピースに赤いボタンと青いボタンの彼女たちも藍色茜色の少女鏡像です。さあ、きょうはどこへゆこうかな?

※まあ、もちろんこれはわたしの宿命的過大解釈であるので、きみたちはきっと、物語に耽溺することなく、リズミカルに絵本の世界にたゆたってお読みくださいね。

※絵本ナビでのどいかやさんのインタビューを参考にしました。

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=448






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