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陣痛の切れ間、熱量の中にある幸せ

2024年5月5日、子どもを生んだ。

4月から産休に入って、どんなふうにお産が始まるだろうかとワクワクして、youtubeやネット記事でお産レポを漁った日々が懐かしい。陣痛から何十時間も経っても出産に繋がらず帝王切開した人や、初産なのに病院に着いたら分娩台に乗った途端生まれたとか、割といろんな出産を知って、自分もそうなるかもしれないと物理的にも心理的にも割とありとあらゆるパターンに備えて準備していたつもりだった。が、似たり寄ったりはあれど、全ての出産経験は一つ一つがユニークなもの。私の場合は、高位破水という子宮口から離れている部分が破けるタイプの破水から始まったが、陣痛が来ずに促進剤を使って、それでも生まれなくて、体にほぼ全く何も起こらないままなんと2日入院。ある時急に完全破水( 子宮口付近の卵膜が破れて羊水がドバドバ出るタイプの破水)をして、そこからは猛スピードで進み、1時間半ほどで出産…と妊娠中は予想もしていなかったお産になった。

こんな私が出産!?と妊娠中は思っていたが、なんとかやり遂げたようだ。出産からもうすぐ1ヶ月経とうとしているが、正直言って、出産の記憶は夢だったと言われる方が信じるかもしれないというくらい自分の中で霞がかったものになりつつある。人生で一番壮絶な体験だったからだと思うが、それくらい、神秘的な体験をしたのだとも思う。

分娩中、不思議だったのが、陣痛を乗り越えれば乗り越えるほど、自分の体から出てくるエネルギーを信じられるようになったこと。陣痛は、痛いというより、苦しい。自分の内側から出てくるエネルギーというか、圧力というか、とにかく自分ではコントロールできないほどに大きな力が全身を巡ってくるような感じ。最初は、その苦しさに呼吸が乱れたり、パニックになりそうになったりした。「やばい!(赤ちゃんが苦しかったらヤダ、そして私の子宮とおまたを悲惨な目に合わせたくない!)」と助産師さんに何度も目で訴えた。毎回「うまくいかなくても、すぐに呼吸戻せばいいのよ〜大丈夫〜また一つ乗り越えましたよ!」という声かけに大変救われた。

“そうだ、妊娠中にどんなに辛いことがあっても、この子を守ったんだ”
”誰かと比較するんじゃなく、過去の自分よりどれだけ成長してるか、でいいんだ。”
“とすれば、今私は何分か前の自分より絶対にうまく陣痛に対処できる”

美味しい食べ物が一つも無くなったつわり、思うようにならない思考と体で不安定になった情緒、大きくなり過ぎてスイカみたいに皮膚が割れてしまったお腹。自分の変化だけでなく、妊娠したことによって変わった周囲との関係性に悩んだ時もあった。それでも、毎日、日々ダイナミックになる胎動に感動し、「どんな子が生まれてくるだろうね」と夫と共に子の誕生を待ちわびていたんだ。陣痛の切れ間に、ものすごいエネルギーの波間で、これから生まれてくるいのちへの愛おしさに溢れていた。大きな熱量の中にも、激しく溢れ出てくる幸せを見つけた。

何度目かの陣痛に耐えているとき、右の下腹部あたりで子どもの足がバタバタしているのがわかった。「陣痛中も胎動あるんだ…へへ」とか思っていたら、あれよあれよという間に子ども誕生。あのバタバタが最後の胎動だったのか〜と思うと感慨深い。きっと、赤ちゃんが子宮を出て、産道に入ってくる時にキックしんたんだと思う。
下腹部の鈍痛が消え、会陰の鋭い痛みだけになった。横を見ると、入院中からずっと付き添ってくれた助産師さんが「大きな赤ちゃん!」と拍手しているのが見えた。3422g、52cm、生まれた瞬間からおしっこうんちもりもり。元気な子がやってきた。

40週と3日、お腹の中で育って飛び出してきた我が子。今は隣で健やかな寝息を立てている。起きていて機嫌がいい時はキョロキョロと世界を観察して、ほにゃ~ほにゃ〜と猫みたいに声を出す。お腹が空いたり不安になったら小鬼になって泣く。たまに自分の髪の毛を引っ張ってしまってそれが痛くて泣いたりもする。なかなか泣き止まないと、疲れたりもするが、全ての動作が愛おしくて、子どもの存在を認識するだけで疲れや眠気は吹っ飛んでしまう。ああ〜もう自分は親なんだな、とかなんとか。
どうやって1ヶ月前はお腹にいたのか…今では想像もつかない。だけど、君がお腹にいたんだね。生まれてきてくれてありがとう。君がいてくれたから、私は少し強くなれた気がする。のんびり、自分たちらしく、成長していこうね。

あとがき①
完全に破水する直前、お腹の中で”プツン…プツン…プツン…”と音がしたような気がした。内診中だったので助産師さんが破水させていたのか?と不思議で、産後、助産師さんに聞いてみた。すると、「破水させていたわけではなく、本当にたまたま内診中に破水してしまった。それから、お腹の中でした音は、卵膜が破ける音だと思う。卵膜は実は3層になっているから、それが1層1層と破けるのを自覚されていたのでは。」と何とも驚きの答え合わせが待っていた。人間の体っておもろ〜〜〜〜〜〜!!!

あとがき②
我が子は、産前にエコーで診察していた時に想定していたよりもビッグサイズだったらしく、母体に大きな怪我なく生まれてきてよかったね〜と助産師さんと医師は思っていたらしい。(出血も少量で、会陰も傷はできたものの切開なし。)とはいえ産後の会陰は1ヶ月弱経ったいまでも若干の違和感…。妊娠中よりも出産よりも産後が辛い!( ; ; )我が子は可愛いから、まあいいか~!

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